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第十話素質

次話から戦いに突入します。

 「今日はここまでにしますか」


カイテルとモエはギークの船の上にいた。


「すっかり夜になっちまったな。さっさと引き上げて寝よーぜ」


ギークは空を見上げた。そこにはすでに月が姿を現していた。


「モエ君、色々とありがとうございました」


「いえいえ、これもご主人様のためですから」


モエは余事限袋を閉じた。




 一方その頃ノックはサイトに修行の成果を見せていた。


ノックはベッドに寝たままで内気功をした。


「……っふぅ。これで限界だよ」


「今日1日修行し続けて4分30秒か。上々だな」


「いや、今日ずっと気を使ってたから今は疲れてるけど、体力回復したら5分はいけるよ」


ノックはニカッと笑った。


「そうか」(成る程、確かにすごいな)


サイトは内心びっくりしていた。


「そうだ。内気功を使ってたんだろ。ちょっと立ってみろ」


「えっ? まだ体が……」


「大丈夫。もう治ってるはずだ」


ノックはしぶしぶとベッドから体を起こし、ゆっくりと床に立ち上がった。


「あれ? 全然痛くない……」


ノックは不思議そうに体のあちこちを触った。


「内気功のおかげだ。内気功は身体の治癒能力も高めるんだ」


そこにカイテル達三人が帰ってきた。


「えっ、ノックもう平気なの?」


モエは心配そうな顔をした。


「うん、なんか治っちゃったみたい」


ノックはジャンプして空中で一回転して見せた。


「ふっかーーーーつ!」


「その様子ですと特訓は順調みたいですね」


カイテルは笑っていた。


「俺も前々からすごいと思ってはいたが……想像以上だ」


「いつかはお父さんにも、カイテルさんにも負けないぐらい強くなってみせるよ!」


「そうですか、それは楽しみですね。いつでも挑戦してきていいですよ。今度は本気でお相手してあげますよ」


「俺もその内相手してやるよ」


その時ノックはふと思った。


「そういえばカイテルさんとお父さんってどっちが強いの?」


二人は同時に答えた。


「それは」「そりゃあ」


「私でしょう」「俺だろ」


「何ですと?」「何だと?」


二人はにらみあった。


そこにギークが割り込んできた。


「確かお前ら若いとき戦ったことあるよな? あの時はどっちが勝ったんだっけ?」


「「あのときはギーク(さん)の一人勝ちだろ(ですよ)!」」


「あれっ? そうだったっけ? 覚えてねーや」


ギークは目を閉じて腕を組んだ。


「そんなことはもういいでしょう。とりあえず、今日はもう遅いですしご飯を食べて眠りましょう」


「そういえば朝から何も食べてないや」


ノックのお腹がグーグー鳴った。


「ノック、今日はたくさん食べていいぞ。カイテル達が食糧を持ってきてくれていたんだ」


「えっ? そうなの?」 


ノックはカイテルを見た。


「えぇ、急いでいたのであまり持ってはこれませんでしたが、この島の村程度なら一年は持つぐらいの食糧です」


「お前が修行してる間、俺は村の皆に食糧を分けてたんだ」


「よ〜し、食べるぞ〜」


部屋にいる皆は集会場へ移動した。


集会場の真ん中にはテーブルがあり、その上にはうまそうな料理がたくさん並んでいた。


「す、すんごいおいしそう!」


「これはすごいな」


サイトとノックはびっくりした。


「これらはモエ君が全て作ってくれました」


「あと、私も作ったんだが……」」


「この中にギークさんの料理は一つとしてありません。ギークさんが作った料理はなぜか皿が耐えれなかったので……」


カイテルとモエはひきつった顔をした。


先程三人で料理を作っていたのだがギークの調理のせいで、人生のワースト3に確実に入る事が起こっていた。


「と、とにかく食べましょう……」


テーブルに皆がつくと早速食べ始めた。


「これおいしい! こんなおいしいの初めて食べたよ!」


「ありがとうノック」


モエはノックのすごい食べっぷりを見て笑顔になった。


「……」


ギークは一言も喋らず、黙々と食べていた。




 「ふ〜、もう食べられないや」


テーブルの上の皿は全て空になっていた。


「すごく食べたね」


モエは若干引いていた。


「最近食べ物が少なくてさぁ〜。こんだけお腹一杯食べたの久しぶりだよ」


「ノックは育ち盛りだからな。俺も父親として少し心苦しい思いをしてたんだ」


「じゃあそろそろ片付けますか……おっとギークさん逃げちゃダメですよ」


(ギクリ)


「忘れてはいませんか?ザック島民のモットーは働かざる者……」


「食うべからず!」


「ノック君正解です。というわけで……」


その時カイテルの頭の中に調理場の事件がフラッシュバックした。


「……と言いたい所ですが、私達だけで十分ですね」(今のがフラッシュバック現象ですか……四十才にして初めての経験ですよ……)


「じゃあ僕が皿を洗ってくるよ!」


ノックは皿を重ね始めた。


「それなら私も手伝う。あっ! でもそういえば調理場使えなくなってた……」(これがあのフラッシュバック現象? 十二才にして初めての経験だわ……)


モエの頭の中にもフラッシュバック現象が起きた。


「えっ、なんで調理場が使えないの?」


カイテルとモエの顔はただただひきつっていた。


この日、ノックは空気を読む事を覚えた。




 真夜中、ザック島のほとんどが寝静まって静かな頃、集会場にカイテル、ギーク、サイトがいた。


「懐かしいですね。こうやって三人で集まるってのも」


「そうだな。何年振りかな」


「おいおい、そんなことはどうでもいいから『あれ』を早く出せよ」


「そう焦るなよ。今出してやるから」


サイトは家にある秘密の倉庫から何かを持ってきた。


「おぉ、これだよ、これ!」


サイトの手に握られていたのは酒瓶だった。




 ザック島で作られている酒はギークが不法にゾーア大陸に持ち込まれ、裏ルートに出される。その酒は絶品でとにかくおいしく、滅多に手に入らずマニアからは幻の酒とまで言われている。


「これですか。ザック島の酒の噂は私の耳にも入っていましたが実物を見るのは初めてです」


「これがな、飛びっきりうまいんだ」


サイトは三つのコップにそれぞれ酌んだ。


「それじゃあ」


「「「乾杯!」」」


三人は一気に飲み干した。


「かぁ〜、うまい!」


「美味しいですね!」


「だろ?」


こうして三人の宴は朝まで続いた。


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