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第一話ザック島

 大陸から遠く離れており、海に囲まれている小さな島がある。


その島の名はザック島と言い、人口100人程の村があり、主に農業や漁業で生計をたてて暮らしている。


そんな小規模な島だが、今日は年に一度の大陸からの貿易船が来ているので砂浜は賑わっていた。


砂浜にはほとんどの島民が来ており、続々と降ろされている品物と交換を行っていた。


そこにはこの島の村長であるサイトとその息子ノックの親子連れも来ていた。




 サイトは見た目は二十代だが、今年で四十歳になる。人望があり島民にはかなり慕われている。ノックは今年で十二歳になる。ザック島では十二歳で成人、というのがしきたりなのでもうすぐ成人式をする予定だ。




 「おっ、今年も賑わってるな〜」


ノックは興奮を押さえられないようだった。


「ふふふ、お前はいくつになっても子供みたいなはしゃぎかたをするんだな。」


サイトはやれやれと首をふった。


ノックはサイトの言うことを聞いておらず砂浜をキョロキョロと見渡していた。


「おっ! あそこにギークさんがいる。お〜〜〜い! ギーーークさ〜〜〜ん!」


ノックはギークの所へと走り出した。


(ったく、相変わらず人の話を聞かん奴だ。誰に似たんだか)


サイトはそう思いながら、ノックが声を掛けた方を向いた。


そこには懐かしい顔があった。


「相変わらず、うるせぇクソガキだぜ」


ギークは自分の名前を呼んだ声を聞いてため息をついた。


しかし、そこまで不快感はないようだった。




 ギークは女性でありながら年に一度大陸から来る貿易船の船長をしている。見た目は若く美しいが誰も彼女の実年齢を知らない。ただ口と性格はものすごく悪い。(サイト談)




 「ギークさん。久しぶりっ!」


「おう久しぶりだなクソガキ。調子はどうだ?」


「絶好調!!」


「だろうな」(ったく耳がキンキンするぜ)


「ポチに会ってきていい?」


「おぅ、い……」


ノックはすでに船の方へと向かっていた。


「ったく、人の話聞けよ。親はどういう育て方してんだ。なぁ、サイトよ」


サイトはギークのすぐ近くの所にまできていた。


「俺のせいではないよ。勝手にああ育ったんだ」


そう言いながらサイトはギークと横にならんだ。


「1年であいつ結構でかくなったな」


「あぁ成長期だからな。お前の方は何も変わってないな」


サイトはギークの顔を覗き込んだ。


「そう言うお前は老いたな」


「相変わらず口の悪い女だ」


サイトとギークは顔を見て笑いあった。


「で、どうだ。なんか変わりあるか」


「まぁ、良好だ。ただ今年は日照りに見舞われてな。村の食糧が足りなくなりそうなんだ」




 ここ最近、ザック島では雨が降らずに農作物が枯れてほとんど駄目になってしまっていた。なんとか蓄えを分けあって今はなんとかしているが、蓄えが無くなるのも時間の問題となっていた。




「ふーん。そりゃ災難だな」


ギークは特に顔色を変えずに言った。


「そこで、お前にお願いがあってな」


「見返り」


ギークは指で丸をつくってサイトの頬にぐりぐりした。


「……まだ内容言ってないのにそれかよ」


「どうせ、カイテルに手紙を出すから渡して欲しいってんだろ」


「お前、俺の心読めるのか……」


「分かりやすいんだよお前は。で、見返りは?」


「お前さっきの話聞いてたか?うちは今食糧不足で……」


「だせ」


「長年のよしみで……」


「だせ」


「頼む!」


「だs」


「……わかった」


「話がわかるね♪ で、何をくれんの」


サイトはギークに耳打ちをした。


「えっ、まじで? 『あれ』くれんの? 『あれ』を? 長年いくら言ってもくれなかった『あれ』を? ラッキー」


「背に腹は変えられん。その代わり頼むぞ」(くそっ! 俺の『あれ』を!)


「おぅ、快く引き受けたぜ」(今日は『あれ』祭りだな!)


そういうわけで交渉は成立した。




 サイトの『あれ』が無くなってた一方でノックはギークの船の上にいた。


「お〜い、ポチ出ておいで〜」


ノックは海に向かって呼び掛けた。


しばらくすると海の水面がだんだん揺れ始め、水中に巨大な陰が現れると一気に巨大な水柱がたった。


「ポチ! 久しぶり!」


「ギョアーーーーー!!」


そこにはノックのなん十倍もでかい巨大な生き物がいた。




 その生き物はドラゴンのような顔をしているが胴体は魚の様にヒレがついておりそれで海を泳いでいる。その皮膚は青く、赤い目をしている。ノックにポチと呼ばれているこの生き物は、ギークの船を引っ張り動かしているエンジン役になっている。なぜギークの言う通りになっているのかは誰も知らないが、ギークの声を聞くとなぜか異常に怯えるという性質を持つ。




 見た目は怖く、ほとんどの人は近づくこともできないが、ノックは慣れた様子で怖がるような事はなく、ポチの頭を撫でていた。


「そうかそうか。元気にやってんのか」


「ギョアギョア」


「えっ、あれしてくれんの?」


「ギョア!」


ポチは首を曲げノックの目の前に頭を差し出した。


その頭の上にノックが乗ると、ポチは頭を上げると船を離れ沖の方へと泳いでいった。


「う〜ん、風が気持ちいいね〜」


「ギョア〜」


「あっ、ポチ。鳥がいるよ」


ポチが泳いでいる横に1羽が並ぶように飛んでいた。


「ギョア!」


「あっ!」


「ぴーーー!」


鳥はいなくなってしまった。


「ポチ……お腹空いてたんだね……」


「ギョア♪」


ポチは満足そうに口をモゴモゴしていた。




 ギークとサイトは船の前にいた。


ギークはサイトから手紙と『あれ』を受けとった。


そしてしばらく話し込んでいたらいつの間にか夕方になっていた。


「おっ、もうこんな時間か。じゃあ、商売も終わったしそろそろ帰らせてもらうぞ」


ほとんどの島民はすでに村に戻っており、砂浜にはもう数える程しかいなかった。


「そうか、まぁまた近く会うことになるがな」


「ふっ、そうだな。あぁめんどくせぇ」


「悪かったな」


ギークは船に乗った。


「おい!ポチ!」


ギークが沖のへと呼ぶと、ポチは全速力で船の方へと戻ってきた。


ポチの頭の上にはノックもいた。


「ギョ、ギョア」


「あ〜、楽しかった」


ノックはポチに砂浜に下ろしてもらった。


「お前、よくこいつを怖がらないな」


「かわいいじゃん」


「そ、そうか」


サイトは完全に腰が引けていた。


「しかし確かにこいつにこんなになつかれるのは珍しいな。言葉も分かるみたいだしな」


ギークは不思議そうな顔をしていた。


「そうそう、ノック。ギークはもう帰るぞ」


「えっ、もうそんな時間なの? そうなんだ……」


「大丈夫、また近いうちに会えることになった」


「へっ、そうなの!? やった〜!」


「こちとら願い下げしたいくらいなんだがな」


「じゃ、またね〜!」


ノックはブンブンと手を振った。


「おう、じゃあなクソガキ」(声でけぇ!)


船は動きだし沖へと向かっていった。


しばらくサイトとノックは船を見送っていた。


その時ノックはふと思い出した。


「あっ、そうだ! ギークさ〜〜〜ん! ポチにちゃんとエサをやっといてね〜〜〜!」


その声は距離がかなり離れているギークの船に十二分に伝わった。


(ったく、最後までうるさい奴だな)


ギークはため息をついた。


(んっ、そういえば今日エサやったっけ? んー、まぁいっか)




 サイトとノックは結局船が見えなくなるまで砂浜にいた。


その頃にはすっかり暗くなっていた。


「じゃ、帰るか」


「うん!」


二人は村へと帰っていった。


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