アイエンド
アイエンド
上
「僕には好きな人がいる。
だけど、もう会うことはないだろう。
なぜなら僕が恋をしたのは戦争中の隣国の子だからだ、だけど」
「私には会いたい人がいる。
みんなからは諦めなさいと何度も言われた。
だって隣国の子だから、だけど」
「「僕(私)は諦められない、君に会うまでは」」
時は遡り戦争前・男の子視点
僕はエドワード=フィンベル、友達からはエドって呼ばれてる。
名門貴族であるフェイル伯爵家の給仕として働かせてもらっていた。
だけど僕が御息女のナタリー様から毛嫌いされてしまい、それを理由に解雇された。
フェイル伯爵はナタリー様を溺愛していたから、仕方ない。
そう割り切るほかなかった。
だがフェイル伯爵家を解雇される本当の恐ろしさを僕は知らなかった。
優しかった街のみんなは僕に石を投げるなど暴行をされて宿にも泊まれなかった。
そんな途方に暮れていた僕を傭兵団が拾ってくれた。
どうやらフェイル伯爵からの依頼で滞在中だったようで、僕は運が良かった。
別に街のみんなを恨んでるわけでもないし、今でも友達だと思ってる。
お人好しと言われたら否定は出来ないかも。
僕は傭兵団で訓練を受けながら給仕として働かせてもらった。
どうやら僕には魔法の才がある……と言われたけどあんまり実感がない。
「なあエドワード、お前にはなにか夢はないのか?」
「突然そんなこと聞いてきてどうしたの?」
「いやあんまエドワード自身が話してくれないからよ、気になっちまって」
「僕の夢……か。恥ずかしいんだけど、会って気持ちを伝えたい子がいるんだ」
「恋か!? いいなぁ青春だな、んで誰なんだよその子!」
「分かんない。名前聞きそびれちゃって出会った場所は覚えてるんだけど」
「あちゃあ、聞き忘れたのか。んで場所はどこなんだよ。次の依頼にその場所に向かえないか団長に話しとくぜ」
「出会った場所は隣国のサウェル王国のテトラ村なんだ」
「サウェル王国か……今は難しいな。うちんとこと戦争間近なんて噂もあるからなぁ。それにもし開戦となったら俺たちゃサウェルとは敵同士……傭兵団とはいえ、むやみやたらには国境は越えられない」
「そうだよね。戦争にならなければいいのになぁ」
「だよなぁ、争いを生業にしてる俺たちが言うのもなんだけどよやっぱ平和が一番だよな」
「分かる、今みたいに楽しく話してたいもんね」
今後の傭兵団の仕事内容を聞き僕たちは戦争が始まったことを理解せざるを得なかった。
「エド、お前には魔法を使って前線のサポートを任せたい」
「了解致しました。と言いますとアルヴェル隊長の部隊ですか?」
「ああ、そうだ。それとエド、団長の俺がこんなことを言ったら国王から怒られるだろうが生きるためなら逃げろ、全力で逃げろ。伝えたい子がいるんだろ」
「……聞いてたんですか団長」
「偶然な」
「ありがとうございます、しかし仲間を置いて逃げることなど僕には出来ません!!」
「お前ならそういうと思った。だが頭の片隅にでも置いておいてくれ。分かったな」
「了解しました団長」
その後僕たち傭兵団は各地の戦場を巡った。
五箇所目の段階で一万いた団員の四分の一は死んでいた。
その中には僕に夢を聞いてきたアイツも……含まれている。
僕には夢を聞いておいて、自分の夢を僕に語らずにアイツは死んでしまった。
「…………」
「エド、そろそろ次の戦場に向かうぞ。泣いてばかりでもアイツら喜ばないだろ」
「……はい、分かってはいるんです。団長だって泣いてるじゃないですか説得力ないですよ」
「仕方ないだろ、大切な団員たちなんだから」
「そういえばアイツから団長宛てに手紙を渡されました」
団長は手紙を見るなり泣き崩れた。
どうすれば助けられたのだろうか……どれだけ考えても分からないままだった。
そして次の戦場は僕にとって懐かしい場所だった。
中
時は遡り戦争前・女の子視点
私はアンジェ=リーウェン
幼い頃に出会ったある男の子が十年経った今でも夢に出てくる。
やっぱり遊んで楽しかったからまた会いたいって考えすぎちゃってるのが夢に出てくるようになったんだろうな
「次の方どうぞ」
「最近肩が痛くてなぁどうにかしてくれんか?」
「任せてください!!」
キラキラ
「うおぉぉぉぉ痛みがなくなった、アンジェちゃんは女神様じゃ!!」
私は得意な回復魔法を使って実家の診療所のお手伝いをしている。
「今日はここまでだアン」
「は~い。今日もお疲れ様パパ、癒してあげるね」
「頼む、身体中もうバキバキなんだ」
キラキラ
「ありがとう、本当アンはパパの自慢の娘だよ」
「も~頭わしゃわしゃしないでよ。私も子供じゃないんだよ」
「パパからすればたとえアンがおばあちゃんになっても子供だからな、忘れちゃいけないぞ」
「ただいま~……ちょっとまた二人でイチャイチャしてママも混ぜなさ~い!!」
二十分後
「ふぅ、満足したわ。それじゃご飯作るけど二人とも何がいい?」
「私はコクウドリの唐揚げが食べたい」
「パパは?」
「うーん、パパはママが食べたい」
「もう、アンの前なんだから、メッよ。……明日の夜ね」
「パパもママも何の話してるの?」
「アンにはまだ早いことかな? 真面目に答えるよ。ママのカレーが食べたい」
「了解。ねえアン、カレーに唐揚げって入れてもいい?」
「いいよ~!!」
トントン、コトコト、キラーン
「それじゃあ、せーの」
三人「いただきます」
「そういえばアン、会いたいって言ってた男の子には会えたの?」
「ううん、まだ」
「アンと遊んでくれてたあの子か。懐かしいな……まさかアンその子のこと!?」
「会いたいよ。なんだかあの子のこと考えてたら胸がキュッと痛くなるの、なんでだろう?」
「アンにもいずれ分かるわよ、ねぇパパ」
「そうだな……パパ的には分かってほしくないんだけどな」
ドンドンドン
「こんな時間になんだ?」
「治療でしょ、行ってくるね」
ガチャ
「アンちゃんか、パパとママはいるかい?」
「いるよ」
「今すぐに呼んできてくれないか!!」
村長と話しているうちにパパとママの顔は青ざめていった。
「アン、心して聞いてくれ。隣国のベルスト王国と戦争が始まった。……それとあの男の子の居場所も分かった」
「……もしかして」
「ああそのまさかだ。隣国ベルストにいるそうだ」
「どうしてそれを」
「アンちゃんのためにワシが調べたんじゃよ」
「ありがとう村長」
「パパとママは戦場で戦う兵士さんに元気になってもらうために行くけどアンはどうする」
「当然行くよ!!」
「そっか、ありがとうなアン。その代わり……男の子のことは諦めなさい」
「……戦争だから?」
「分かってくれて助かる」
「……少し考えさせて」
戦争だからって会いたい気持ちを諦めるなんて私には出来ない、だけど一緒に行くには諦めないと……。
「ねえアン、ママは諦めないでいいと思うわよ。その代わり辛くなるかもしれないけどアンは大丈夫?」
「……ありがとうママ!!」
「それじゃあ行きましょうかパパ、アン」
私たちは各地を転々とした。
そして次はフェイル領という場所に行くことになった。
下
「逃げ遅れた住民がいるようなので避難させてきます団長」
まさか次の戦場がフェイル伯爵領になるなんて……何かあったりしてな。
「もう大丈夫です。僕が安全な場所まで誘導しますので」
「バカだなぁ、これが罠ってことぐらい分かるでしょ」
「……まさか!?」
「理解出来た? これはあんたら傭兵団を始末するためにお父様に頼んだのよ。戦争もなにもかもね」
「相変わらずナタリー様は僕のことがお嫌いなようですね」
「嫌いよ、大っ嫌いよ!! だってお兄様があんたの話ばっかりするんだもの!! お兄様は私のものなのに……だから私お兄様と繋がったの。なのに罪悪感で自殺しちゃったから私お兄様を食べたの。話してる最中なのに逃げるなんて本当腹立つ!!」
僕が団長に報告しに向かっている最中、背後から攻撃されてしまい、僕は意識を失った。
「……眩しい」
「…………良かった。目を覚ました。倒れてたところをパパが運んでくれたの。貴方の怪我酷かったから治すのに時間かかっちゃった」
「君は?」
「私? 私はアンジェよ。パパとママの診療所の付き添いで来たの。こう見えて回復魔法が得意なの」
「ありがとうアンジェ……でも、僕もう行かなきゃ……っ!?」
「ダメよ、治ったばっかなんだから。ちょっと待っててパパ呼んでくるから」
アンジェという子がお父さんを呼びに行ってしばらく経った時、アンジェの悲鳴が聞こえた。
僕はアンジェに何かあったのではないかと気が気ではなく身体が勝手に動いていた。
「パパ……起きてよパパ!!」
「可哀想でちゅねぇ、パパちゃんは死んでまちゅよぉ」
「遊ぶのはその辺にしてエドワードを探しなさい。殺すわよ」
「それは嫌でちゅよ」
「アンジェ!!!」
「探さなくてよかったみたい。それにその女が大切みたいね。みんなでその女殺しちゃって!! 犯して殺そうがなんでもいいわ、方法は問わないから」
「絶対に許さない、ナタリー!!」
我を忘れた僕はアンジェに近づく奴らを殺した。
「はぁ、はぁこれでナタリー、お前だけだ」
「ほんっと役立たずねあのゴミども。まあいいわヘロヘロのあんたなんて私の敵じゃないもの」
ブスリ
キラーンキラーン
「治って、治ってよ!!」
「"不滅の毒"なのよ治るわけないじゃない」
「……そういえば、名前教えてなかった。僕エドワードって言うんだ。……最期にアンに……会え…………た」
「……ちょっと起きて、起きてよ!!」
私がついてきたから……私がパパもエドのことも殺した。
私が殺した
「そうよ絶望なさい!! あいつの大切な人間なんて……」
バキバキバキ……パーン
ベチャベチャベチャ
「大丈夫……じゃないわよね。遅れてごめんねアン……アン? その子ってもしかして」
「……私が、私がパパとエドを……殺しちゃった。私がいなかったら二人とも……」
「やめなさいアン!!」
「止めないでよママ!!」
「……ごめんね」
ドンッ
バタン
私が目を覚ましたころには戦争は終わっていた。
そして私が落ち着いた頃にママはエドが私が会いたがった男の子だと教えてくれた。
それを知った私は助けられなかった罪悪感で押し潰されそうになり、ママがいない間にエドに会いに行った。
「ただいま~、ご飯に……しま……」
バタン
「ようやく会えた。ずっと会いたかったんだよエド!!」
「……もっと遅く来てほしかった。でも僕も会いたがった」
「あのね、私ね……私エドに会えないと胸が痛くて……ママよりエドを選んじゃった。ママを悲しませちゃった、どうしよう。なんで私は……私は」
「大丈夫だよアン。僕もアンに会えないと胸が痛かったんだ。だってアンのことが好きだから」
「……好き?」
「そう、アンのママもパパも僕もアンが好き。でも僕の方は恋の方だけどね」
「恋って……」
そして僕とアンは片時も離れることなく永遠に愛し合った。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
突然降ってきた話です




