表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵にお金を借りに行ったら養女にされました!  作者: 水島素良
第9章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/57

9-5 小さい子の挑発

 ローリアが玄関に行くと、デュドネ・カユザクと、いつか石のビジョンで見た黒髪の妻コロネリア、息子ネヴィル、娘ノラがいた。ノラは腕にモフモフを抱いている。

 あの人たち、本当にいたのね。

 ローリアが遠巻きに一家を眺めていると、

「おう、遅れて悪いな」

 デュドネがローリアに笑いかけた。

「大雨で馬車が走れなくてな」

 コロネリアが男のような口調で言った。ビジョンで見たときも美人だと思ったが、実物はもっと美しかった。長身で細い。端正な彫像のようだ。

「私はコロネリア、この子がネヴィル、こっちがノラだ」

「存じております」

 ローリアはおじぎをした。

「ここは広いから好きなだけ暴れられるな。ククッ」

 デュドネが変な笑い声を発した。

「爆発物を投げるのは禁止だぞ」

「ピッキー!」

 コロネリアが言い、モフモフが鳴き声を発した。

「僕疲れた。休みたい」

 ネヴィルが言った。

「えー!遊びたい!」

 ノラがモフモフを地面に下ろしながら言った。

「ずっと馬車に乗ってたら身体がなまっちゃったもん」

「じゃ、お前はこのお姉さんの訓練を手伝え」

 デュドネがローリアを指さした。

「えっ」

 ローリアはノラを改めて見た。まだ5歳くらいの子どもだ。何をさせる気なのだろう。

「さっそく広場に移動するぞ」

「ピッキー」

 モフモフが牧草地に向かって走り出した。ノラが追いかけていく。コロネリアは息子と一緒に屋敷に入っていった。そこでローリアは気づいた。ケッパー夫妻と屋敷の使用人たちが集まって、おびえた顔でこちらを見ているのを。

「どうしたの?」

 ローリアが声をかけると、

「デュドネ様が来たので、みんな怖がっているのです」

 デリルが言った。

「前に来たときは、実験で納屋を爆破しました」

 ナルシーが言った。

「えっ……」

「侯爵がそりゃあもうお怒りになって」

 デリルが言った。

「また何か起きやしないかとみんな不安なのです」

「おい! 早く来い!」

 デュドネが叫んでいる。

「だ、大丈夫よ、たぶん」

 ローリアはごまかすように言って走り出した。


「ノラがお前を攻撃するから、回避しながら走り回るモフモフを攻撃しろ。10回当たるまでな」

 デュドネが言った。

「今回は難しいぞ。同時に2カ所に注意しなくちゃならないからな」

「わかりました」

「あと、間違ってノラを攻撃したらマイナス1回な」

「あんな小さな子、攻撃しませんよ」

「それが、パニックになると間違えるんだよな」

 デュドネが笑った。

「じゃ、とりあえず走れ!」

「ピッキー!」

 モフモフが走り出した。

「待てーっ!」

 ローリアは追いかけながら光の玉を放った。モフモフの少し横をかすめて飛んでいった。

 ノラを見ると、両手を頭上にかかげて……赤い玉を作り出している。炎だ!

「えっ」

 ローリアは慌てた。てっきり自分と同じ光の玉で攻撃してくると思っていたからだ。

「てーい!」

 ノラの声とともに、炎の線が複数、ローリアを追いかけてきた!

「キャー!」

 ローリアは逃げた。

「キャーキャー言うなと言ってるだろうが!」

 デュドネが怒鳴った。

「モフモフを追いかけろ! もう遠くに行ってるぞ!」

 見ると、モフモフは牧草地のはるか向こうまで行ってしまっていた。慌てて走る。しかし、

「てやー!」

 走ってきたノラの声とともに、ローリアの足元の土が弾け飛んだ。

「えっ!?」

 ローリアは足を取られて倒れた。どうやら土の魔法も使うらしい。さすが天才の娘。

 起き上がろうともがいていると、ノラが近くまでやってきてのぞき込みながら、

「お姉さん、ちょろい」

 かなり意地悪な顔で笑った。

「くっ……」

 ノラが走り出した。

「待ちなさーい!」

 ローリアはノラを追いかけてしまった。

「だからそっちじゃねえって!」

 デュドネが怒鳴り、

「ピキッキー!!」

 無視されたモフモフは怒って戻ってきた。


 そんな三人と一人の様子、というより、炎や爆発が次々と起こる様を、屋敷の窓からみんなが怯えながら眺めていた。その中にはアルマもいた。

「今の爆発、見ました?」

 パーシーが言った。

「女の子に向かってなんてことするんだ」

 デリルが言った。

「ローリアは訓練とか練習って言葉が好きなのよ」

 アルマが冷めた声で言った。

「わたしにはわからないご趣味ですけれど」

 みんなが見ていると、ローリアの放った光の玉が、なぜかデュドネに当たった。怒ったデュドネが何かをぶん投げ、また爆発が起きた。

「ヒィッ」

 ナルシーが怯えて夫にすがりついた。

「女の子があそこまでする必要あるのか」

 デリルが言った。

「あるのよ。だってソムィーズの跡継ぎだもの」

 アルマが言った。

「言っとくけど、ローリアは本当に魔力が強いんですからね。本気で怒らせたら──」

 ローリアが放った光の筋が木に当たった。木はなんと、真っ二つに裂けて、ゆっくりと倒れた。

「あれよ」

 アルマがなんてこともない顔で指さした。使用人たちは蒼白な顔でそれを見ていた。

「心強いでしょ?あんな子が将来みんなを守ってくれるんだから」

 アルマは皮肉っぽく笑い、歩き出した。



 3時間後。

「お前は挑発に弱すぎる」

 7発で力尽きて倒れたローリアを見おろしながら、デュドネが呆れていた。

「モフモフよりノラと俺を攻撃した回数のほうが多かったぞ。簡単に敵に乗せられてどうするんだ」

「すみませぇん……」

 ローリアは反論する元気がなかった。本当は『先生まで攻撃してくるなんて聞いてませんよ!!』と言いたかったのだが。

 ノラはモフモフと遊んでいる。子どもの体力はすさまじい。3時間走り回ってもまだ元気だ。

「これが戦場だったら、お前は死んでるぞ」

「はい……」

「お嬢様! 大丈夫ですか?」

 ユーナが走ってきた。

「次は3日後だな。もう1回同じことやるぞ」

 デュドネは娘を抱き上げて去っていった。モフモフがそのあとを追いかけていく。

 ローリアはよろけながら立ち上がり、ユーナに支えられながら屋敷に戻った。

「悔しい」

 歩きながらつぶやいた。

「10発当てられなかった」

「あれだけ暴れたら十分ですよ」

 ユーナが言った。

「屋敷の者はみんな驚いてますよ。お嬢様が素晴らしい魔法を使うから」

 廊下にケッパー夫妻と使用人たちがいた。みんな、今までとは違う顔でローリアを遠巻きに見ていた。ローリアが通るとみんなさっと横によけ、中には敬礼する者までいた。

 ローリアは部屋に入るなりすぐ、花柄のベッドに倒れた。

「お嬢様、寝る前に着替えてください!」

 ユーナが起こそうとしたが、ローリアはそのまま眠ってしまった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ