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侯爵にお金を借りに行ったら養女にされました!  作者: 水島素良
第1章

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5/12

1-5 「君が後継者だ!」

 その後、石は少しずつ光を失っていき、ゆっくりと落ちてきた。侯爵が石を受け止め、男の子たちのほうを見て言った。

「これでわかっただろう。石が誰を選んだか」

「えっ?」

「なんだって!?」

「ハア?」

 動きを止めていた男の子たちが、いっせいに反応した。

「この石は、安易に触ってはいけないものなんだ」

 侯爵が言った。

「石から湧き出ている魔力を感知できれば、そのことはすぐにわかったはずだ。しかし、みんな気づかずに触っていただろう。実はね、この試験は、この石に触った時点で失格なんだよ」

 侯爵はそれからローリアを見た。

「でも、彼女は違った」

 それから、心から優しい顔でローリアに近づいてきた。ブローチの緑の石から放たれる魔力からも、警戒感は消えていた。

 侯爵は、驚きで固まっているローリアの手を取り、

「おめでとう!君がソムィーズの後継者だ!」

 と言って、強く握った。

「ふざけるな!」

「後継者が女?ありえない!」

「こんなのインチキだ!イカサマだ!」

 男の子たちが一斉に抗議し始めた。クィルだけは、心配そうな顔でローリアを見ていた。

「ち、違うんです!」

 我に返ったローリアが慌てて言った。

「私はただ、病気の妹のために薬代が欲しくて、侯爵なら親切だから貸してもらえると思って!」

「妹さんが病気なのかい?」

 侯爵が尋ねた。

「すごく珍しい病気で、薬がとても高いの。村には出せる人がいないから」

「もちろん?薬代は僕が出そう」

 侯爵が言った。

「君が僕の娘になってくれたらね」

 ローリアは怯えて、後ろの壁にはりついた。

「だから!そういうつもりじゃなかったんです!私は後継者になんかなれません!」

 ローリアはすがるような目で侯爵を見た。

 嘘よ。

 嘘でしょ?

 嘘だと言って。

「いいかい」

 侯爵が寂しさと厳しさの混じった目で言った。

「これは、僕にもどうにもできないことなんだ。魔石が君を選んだからだ。これはもう決まったことなんだよ。君はこのソムィーズ家を継ぎ、この国の魔石の管理者になるんだ」

 どうやら、本当らしい。

 それがわかったとたん、ローリアは目を見開いて侯爵を見つめた後、気を失って倒れてしまった。

「ローリア!!」

 クィルが飛びついてきてローリアを抱きとめた。

「彼女を部屋に運んで、医者とパトリシアを呼んでくれ」

 侯爵が従者に命じた。クィルがローリアを運ぼうとしたとき、

「俺は認めないぞ!」

「この魔女め!!」

 男の子たちの何人かが、ローリアに襲いかかった。魔法を放ったものもいた。

 しかし、

『止まれ!』

 侯爵が怒鳴った途端、全ての男の子の動きと魔力が止まった。

「う、動けない」

 殴りかかろうとした男が、空中で止まってもがいていた。他の男の子たちも体が石のように固まり、身動きができなくなった。

「ソムィーズ家は代々、魔封じの家系でね」

 侯爵が冷たい声で言った。

「それは、魔力の強い王家やツウェターエヴァ家のような名家が何か間違いを犯した時、ソムィーズがそれを止める任務を担っているからだ。女性に負けたくらいで逆恨みして暴力を振るうような愚か者には、この重大な任務は務まらない」

 侯爵は男の子たちに背を向け、

「外で馬車が待っているから、早く帰りなさい」

 と言い捨てて、ホールを出ていった。男の子たちは、その後10分くらい侯爵の魔力から抜け出せず、その場でもがく羽目になった。


 



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