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侯爵にお金を借りに行ったら養女にされました!  作者: 水島素良
第6章

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6-2 レディのお茶会

「レディ・アマンダ・ルビンシャーのお茶会は、普通の軽いお茶会とは違うのよ」

 侯爵夫人が言った。

「社交界でも選ばれた人だけが呼ばれるパーティーのようなもので、とても盛大なの。だから、ちゃんとしたドレスを着ていかないといけないわ」

 というわけで、ローリアとアルマはまた新しいドレスを作ることになった。

 こんなに頻繁に服を作っていたら、どれだけお金がかかっているのだろう?とローリアは疑問に思った。それだけの金額があったら、村の人はもっと楽に暮らせるのに、とも。

「わあ! 見て! これ綺麗!」

 何も気にしてなさそうなアルマが、アクセサリーを見て喜んでいた。ローリアにも、魔力のこもった大きな宝石のついたネックレスとイヤリングがあてがわれていた。

「お茶を飲むのにこんなの必要かしら?」

 ローリアが言った。

「ねえローリア。いいかげんこっちの世界に慣れなさいよ。たぶん、貴族の世界では常に服装で権力を示すのよ」

 アルマがパーシーにブレスレットをつけてもらいながら言った。

「ソムィーズは偉い家なんだから、変な格好はできないでしょ?」

「あなたは早く慣れすぎよ」

 ローリアが言った。

「時々、村のことを思い出すの」

「ローリア」

 アルマが不愉快な顔をした。

「貧しい時代のことは忘れるべきよ。せっかく奇跡のような幸運が訪れたんだから、利用しなきゃ」

「そうね」

 どうやらわかってもらえそうにない。ローリアは村の話をするのをやめた。ユーナにネックレスをつけてもらい、鏡を見た。宝石はきれいだった。でも、自分の地味な顔には、大きすぎる石は合っていないような気がした。


 ルビンシャー家の敷地は広大で、馬車で門をくぐってから、森や丘を通過し、花々に満ちた庭園にたどり着いた。そこにはすでに着飾った男女がたくさんいて、テーブルには花と、なぜかワインを飲んでいる人がいたのでローリアは驚いた。

「こんな昼間からお酒?」

「確かにただのお茶会じゃなさそうね」

 アルマがつぶやいた。

「ようこそお越しいただきました」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが、お付きのレディたちを従えて現れた。大きな青い石のイヤリングに、同じ色の平たいデザインのネックレスをつけていて、白い肌にとても合っていた。ドレスも、見た瞬間に最上級のものだとわかる、上質で豪華なものだった。ひだ飾りや刺しゅうが細かく施されていて、ところどころが光っている。

「お招きいただきありがとうございますぅ」

 ローリアはちょっと気後れした。『本物の令嬢』を前にするとどうしてもひるんでしまう。

 レディ・アマンダ・ルビンシャーは、ローリアがつけているネックレスをちらっと見ると、

「失礼ですけど、そのネックレスはお顔に合っていないわ」

 と言った。取り巻きのレディたちがクスクス笑った。

 ローリアの顔が真っ赤になった。鏡を見て思ったことはやはり当たっていたのだ。

「せっかく優しい印象のお顔なのですから、もう少し小ぶりな石をお使いになって、細かい装飾のものにしたほうがよろしいかと」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが真面目な顔で言った。どうやらレディにはバカにする気はさらさらなく、思ったことを口にしただけらしい。

 ネックレスを脱ぎ捨てて走って逃げたい。

 ローリアはそんな衝動と戦っていた。

「私はどうかしら」

 黙り込んでしまったローリアの代わりに、アルマが尋ねた。

「一応、肌に合うものを選んだつもりですけど」

「あなたはとてもよく似合っているわ」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが微笑んだ。

「馬車でお疲れでしょう。どうかお座りになって」

 二人はバラが飾られた白いテーブルに案内された。使用人が近寄ってきたので、アルマが『水をちょうだい』と言った。その様子があまりにも自然だったのでローリアは軽い衝撃を受けた。

 妹はもう、お金持ちのお嬢様になりきっている。

 でも、私は……。

「どんなお茶がお好みかしら」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが尋ねた。

「レモン、ローズヒップ、ジンジャー……は、パーティーには合わないかしら。でもお好きなら……」

「私はハーブティーが好きなんです」

 ローリアはなんとなく言った。

「祖母が育てているので」

 すると、またまわりのレディがクスクスと笑った。レディ・アマンダ・ルビンシャーは彼女たちを軽くにらんで笑うのをやめさせると、

「素敵なおばあさまね」

 と言って微笑んだ。アルマが小声で、

「余計なこと言わないでよ」

 と言ってきた。ローリアにはその意味がわからなかった。なんでおばあちゃんの話が余計なの?

「私たち、こちらの世界に来てまだ短いので」

 ローリアはあくまでも正直だった。

「まだ、こちらのルールがよくわかりません。だから、こんなネックレスをつけてきてしまって。恥ずかしいわ」

「気にすることはないのよ」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが優しく言った。

「私が何をしたらいいか教えてほしいんです。こちらの世界に慣れるために」

 ローリアは真剣に言った。すると、

「まず、形から入ることね」

 レディ・アマンダ・ルビンシャーが言った。

「また失礼なことを言ってしまうけど……レディ・ローリア、今のあなたは、公爵令嬢にしては地味すぎるわ。もっと服装に気をつかわなくては」

 それを聞いたローリアはまた真っ赤になった。

「良家の令嬢の装いというのはね、女性たちのお手本のようなものなの。みんな憧れて真似したがるような。レディ・ローリア、あなたは令嬢の中でも一段格が高いのだから、服装は常に注目されるわ。デザイナーをつけたほうがよろしいわよ」

「デザイナー?」

「よかったら何人か紹介できますわ」

「ぜひお願いします!」

 アルマが前のめりで言った。服とアクセサリーが大好きだからだ。隣のローリアが青ざめているのにもおそらく気づいていない。

 ファッションまで学ばなきゃいけないなんて!

 しかもデザイナーを雇う?

 どこまでお金を使わなきゃいけないの?この世界?

 ローリアが悩んでいるうちに、レディ・アマンダ・ルビンシャーとアルマはドレスの話で盛り上がっていた。

 話に乗れないローリアは遠くの席を眺めていた。紳士たちが何か飲みながら話をしている。

 あっちに行っちゃダメかしら。

 そういえば、今日はくまさんがいないわ。ハーヴィス伯爵も見かけないし。

 ローリアはぼんやりと『くまさん兄弟』を思い出して、なぜか、あの巨大な男が見当たらないと、寂しい気がするのだった。








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