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侯爵にお金を借りに行ったら養女にされました!  作者: 水島素良
第1章

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3/12

1-3 22日、ソムィーズ広場にて

 22日。ローリアはクィルと一緒に広場に向かった。そこには既にたくさんの男の子が集まっていた。身なりがよい子もいれば、みすぼらしい子もいた。みんな、この一攫千金のチャンスにわくわくしているようだった。ソムィーズ家の跡継ぎになれば、お金も爵位も手に入る。一気に国の重要人物になれるのだ。ワクワクしないわけがない。

「どうして男の子ばっかりなのかしら」

 ローリアは思った。

「女の子だって魔力はあるのに」

「ああ、そういえば、新しい『白の司祭』には、女性が指名されたらしいね」

 近くにいた茶色い髪の男が話しかけてきた。

「ほんと?」

 ローリアは驚いた。『白の司祭』とは、ロンハルトの魔法使いの最高位で、女神に仕える重要な役割である。

「先代のデュドネ・カユザクの配下に、ものすごく魔力の強い女性がいたらしい」

「どうせ愛人だろ」

 隣の黒髪の男の子が言うと、まわりの男たちがいっせいに下品な笑い声を発した。ローリアはこの笑い声が嫌いだった。帰りたくなったが、妹のために我慢した。侯爵に会ってお金を借りるまで、あきらめるわけにはいかない。

「お前、女のくせになんでここにいるんだよ」

 身なりの汚い男が近づいてきた。

「弟の付き添いよ」

 ローリアはクィルにくっついた。

「男のくせに一人で来れねえのかお前は」

「しょうがないじゃないか。どうしてもついてくるって言って聞かないんだから」

 クィルが言った。

「それに、僕が金持ちになる瞬間を家族に見せたいしね」

「ずいぶん自信があるじゃねえか」

 男がクィルににじりよってきた。

「俺と勝負しろ」

「やめたまえ」

 大きな宝石をつけた手が割って入ってきた。いかにも金持ちのような、派手な身なりをした青年だった。

「勝負は侯爵に会ってからにしよう。見たまえ。馬車が何台もこちらに向かってくるよ。侯爵の使いが迎えに来たんだろう」

 それはかなり珍しい光景だった。1台でも目立つ、高級な木材を使った金の飾りのある馬車が、何台も何台も広場に入ってくるのだ。まるで、貴族が集まってきたかのようだ。

「諸君、乗りたまえ!」

 飾りのついた派手な服を着た男が叫んだ。

「ソムィーズ侯爵がお待ちだ!」

 男の子たちが、先を争うように馬車に群がり出した。

「早く乗らなきゃ!」

 ローリアとクィルも馬車に向かったが、男の子の数が多くてなかなか進めない。

「お嬢ちゃん、ここで何をしてるんだ?」

 声がした。見ると、1台だけあまり立派ではない、あちこち傷んだ馬車があった。そこから、庶民的な身なりの、汚れたシルクハットをかぶった男が、人懐っこい笑いをこちらに向けていた。

「ここは女の子の来るところじゃねえぜ!欲に駆られた男たちがひしめいてて危ないったらねえよ!」

「私たちを乗せてくれる?」

 ローリアは叫んだ。

「もちろんよ!こっち来な!」

 ローリアとクィルは傷んだ馬車に近づいた。御者が手を貸してくれて、なんとか乗り込むことができた。

「金持ちのボンボンどもめ!」

 御者が外から叫んだ。

「侯爵が「馬車が足りないから来てくれ」って言うから喜んで飛んできてやったのに、誰も俺の愛車に乗りたがらねえとは!」

「どうせ乗るなら立派なのに乗りたいよね」

 クィルが冷めた顔でつぶやいた。

「クィル!」

 ローリアは注意してから、そっと、小さな窓の外を見た。

「侯爵に会ったことがあるの?」

「エリザベスの店で一緒に飲んだよ」

 御者が笑った。

「あの方は、うさんくさい街の連中とも普通に話すんだよ。ま、貴族にしちゃ変わり者だな」

「まあ」

 噂は本当だったらしい。

 どこかから男の子たちの怒鳴り声と轟音が聞こえてきた。どうやら馬車の数が足りず、誰が乗るかで争いが起きているらしい。魔法らしき光が断続的にかすめていく。

「なんだか怖いわ」

 ローリアがつぶやいた。

「人は金が絡むと変わるんだよ」

 御者が言った。

「しかも今回は爵位まで絡んでるからな。こんなチャンスはもう二度とないしな」

「どうしてソムィーズ侯爵は跡継ぎを公募したのかしら。由緒ある別な家から子供を選べばいいのに」

「さあな!何考えてんだか!」

 御者の叫びとともに馬車が動き出した。争い合う声の中を通り抜け、広場を離れると、まわりが急に静かになった。

 とうとう、侯爵に会えるんだわ。

 ローリアは両手を膝の上で握りしめた。

 急に緊張してきた。自分のような田舎のメイドが、高貴な方に急に会って、きちんと話ができるのだろうか。





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