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侯爵にお金を借りに行ったら養女にされました!  作者: 水島素良
第1章

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1-1 馬車はソムィーズ邸を目指す。

 ローリアは、なけなしのお金で借りた馬車に揺られて難しい顔をしていた。ずっと田舎の村で暮らしていて、人生で初めて華やかな都会にやってきたのに、窓の外の景色が全く目に入らないのだ。

 アルマのために、薬を手に入れなくては。

 ローリアは、病気の妹のことだけ考えていた。

 そのためにお金がいるわ。きっと侯爵様に会えば貸してくれるはず。お優しいと評判の方だもの。領地の方々にも優しくて、邸宅の周りの人はみんな幸せに暮らしてるって噂だもの。うちの窮状を知ったら、きっと助けてくれるはず。

 ローリアは元々、他人を頼みにするような娘ではない。両親が流行り病で亡くなってから、近所の金持ちの家でメイドをしながら、たくさんの弟妹たちの面倒を一人で見ていた。村の人たちはローリアの真面目で優しい気性を知っていたから、貧しいメイドと蔑みながらもなにかしらの援助は惜しまなかった。だから、ローリア一家はなんとか生き延びてきた。

 しかし、妹アルマが難しい病気にかかった。

 治療には、高価な薬が必要だ。

 村には、そんな大金を持っている人はいなかった。ローリアが働いている金持ちの家の主でさえ「そんな金額は出せないよ」と言った。

 出せそうなのは、侯爵しかいない。

 ローリアは侯爵に頼みに行くことにした。村の人はその計画を知って驚き、呆れた。

「身分の高いお方が、お前なんかに会ってくれるはずがないじゃないか」

 とみんな言ったが、ローリアは馬車に乗った。他に方法がなかったからだ。

 とにかく、侯爵に会ってお金を借りなければ。

 今ローリアが考えているのはそれだけだった。まず、侯爵に会う方法を考えなくては。侯爵は気さくな方で、しょっちゅう街に出て庶民と話していると噂で聞いたことがある。だから、街に行けば会えるかもしれない。

 馬車は広場に止まった。円形に整えられた石畳の空間に人だかりができている。どうやら、若い男の子がたくさん集まって何かを見ているようだ。みんな、村では見たことがないようなきれいな身なりをしていて、何人かは宝石のついた指輪をしていた。きっと裕福な家の子供なのだろう。

「お祭りでもやっているの?」

 ローリアが御者に尋ねた。

「ソムィーズ侯爵のお達しが貼ってあるんだよ」

「お達し?」

「後継ぎの男の子を募集しているんだ」

 御者がニヤニヤしながら言った。

「ソムィーズ侯爵は歳を取ってから、同い年の女性と結婚したんだが、年齢的に子供を作るのが難しいらしくてね。このままだと跡継ぎがいないだろ。だから、家宝の魔石を扱える魔力のある男の子を養子にして、跡継ぎにしようって考えたのさ。いやあ、俺が若かったら参加したんだがな。これでも魔力には自信があるんだぜ」

「魔力に自信があるなら、なぜ馬車を仕事にしたの?」

「あいにく、馬のほうが好きでね」

「そう」

 ローリアは馬車を降りて御者に金を払うと、人だかりに近づいていった。身なりのいい若者がたくさん群がっていて、文字が見える位置までいくのに時間がかかった。やっとのことで前にいくと、金属でできた掲示板に上質な紙が貼ってあり、

「魔力の強い男の子求む。

 ソムィーズ侯爵が跡継ぎを募集します。

 魔力に自信がある18歳までの男の子は、22日の正午にソムィーズ広場に集まるように」

 と書いてあった。

「ソムィーズ広場ってどこ?」

 ローリアが言うと、周りの男の子たちがいっせいに笑い出した。

「どこって!」

 隣の男の子が言った。

「今君がいるところさ!」

 男の子たちがけたたましく笑い、ローリアは顔を真っ赤にした。

「君かわいいね」

 後ろから金髪の男の子が出てきた。

「僕がソムィーズ家の跡継ぎになったら、つきあってくれるかい?」

 まわりの男の子たちが口笛を吹いた。

「か、考えておくわ」

 ローリアは真っ赤なまま言った。

「それより、ソムィーズ侯爵に会ってみたいわ。22日って明後日よね。ここに来たら会えるかしら」

「侯爵はここには来ないんじゃないかな。たぶん選考は侯爵の邸宅でやるだろうから」

「そう」

 ローリアはがっかりした。

「侯爵はよく街に出てくるのよね」

「エリザベスの飲み屋によく来るらしいよ」

 後ろの黒髪の男の子が出てきた。

「エリザベスとよろしくやってるって噂もある」

 男の子たちが下品な笑い方をした。怖くなってきたので、誘おうとする男の子たちを無視し、ローリアは広場を離れ、街を歩きだした。

 商店街だろうか、とても華やかだ。

 きれいな帽子を売っている店の前で足が止まった。夢のようにきれいな花飾りがついた赤い帽子が飾られていた。ローリアはしばらく見とれていたが、店の奥から怖そうな女店主がこちらをにらんでいるのが見えたので、あわてて歩き始めた。

 買い物をするお金はない。

 とにかく侯爵に会わなくては。飲み屋に現れると男の子たちが言っていたが本当だろうか。高貴な身分の方がそんなことする?でも他に情報はない。

 夜までどこで過ごせばいいのだろう。

 どこに泊まればいいのだろう?

 残金はあまりない。

 ローリアは悩みながら街を歩いていた。考え事に夢中になりすぎて、汚い身なりの男が近づいてくるのに気付かなかった。

 男はローリアに体当りすると、持っていたバッグを奪って走った。

「待って!待ちなさい!!」

 ローリアは慌てて男を追いかけた。



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