第一話 転生
血の匂いが、雨に混じって鼻を突く。
組の抗争なんて、もう何度も経験してきた。
でも、今回は……やけに、冷える。
胸の奥に何かが刺さったまま、俺は膝をついていた。
白いスーツに血がにじんでいく。
右手にはまだ、折れたドスが握られてる。左手は、真っ赤だ。
あのガキが――笑いながら俺を刺した。
筋も仁義も通さねぇチンピラが、どのツラ下げて“極道”名乗ってんだ。
「……しょーもねぇ幕引きだな」
地べたに這いつくばりながら、そんなセリフが口を突いて出る。
雨粒が、頬を打つ。涙じゃねぇ。俺は泣かねぇ。
――頭の中に今までの人生が流れる
極道の組長の家に産まれて。
その家は女ばかり産まれて跡継ぎに恵まれなくて。
とち狂った父が末娘の俺を男として育てた。
男として、この組を継ぐはずだった。
これが走馬灯かよ……。ろくなのじゃねぇな。
そのとき
視界が、白く染まった。
気がつけば、そこは知らない草原の上だった。
空は真っ青。鳥みてぇな化け物が飛んでる。地平線には山じゃなくて、なんかでけぇキノコが生えてるし……おいおい、なんだこれ。
「……あの世か?いや、待て。感触が、ある」
土の匂い。空気の味。妙にリアルだ。
身体に力を入れると、すっと立ち上がれた。傷はない。白いスーツも綺麗なままだ。
無意識に周囲を見渡しながら、つぶやいた。
「……はぁ?なんで俺、こんなとこに?」
そうして、俺――
極道・神埼 蓮は、
なぜか知らんが、異世界にいた。
しかもこのあと、俺の前に現れるのは――
お告げを受けし“聖女”……とかいう、
見た目は真面目、中身はド腐れオタクのシスターだった。
――こうなったら、俺の仁義と仁心、異世界でも通してやらぁ。




