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第23話 作製:シングル

 今日は仕入れに街まで来ている。豆を出来るだけ多くの種類をそろえるつもりだ。

 だが問題がある。恐らく数キロになるだろう荷物。持って帰る、背負って帰る。いずれにせよ私ごときでは無理は出来ない。

 なので、事前にユリウスに相談していた。


「荷物、か。あそこは交易の街でもあるし”魔車”もあるかもしれない」

「ましゃ、ですか? それはいったいどのような……?」

「魔力で自走する荷車だ。馬車ほど速度は出せないが、歩く君の後ろを追従するくらいはできる力はある。街の商人に聞けばどこかで取り扱っているはずだ」


 とのこと。今、私は小金持ち程度のお金がある。今後も使えそうなら買っておきたい。

 今日の予定としてはまず商人の所で魔車の入手、その後豆を仕入れ、煎ってもらう。そんな感じ。


「ごめんください」

「ああ、こんにちは。コーヴァの種子、ですね」

「はい。種類があるなら、あるだけ」

「あるだけ、ですか。……少々お待ちを」


 少し困惑したような様子だったがすぐに探しに行ってくれた。と、もう一つ尋ねなければ。


「あとお尋ねしたいのですが、魔車、は取り扱いございますか?」

「魔車ですか。でしたら、街の大門の方で訪ねた方がいいかもしれません。地図に印を打っておきますね」

「ありがとうございます」

「それから、今使う分の荷車も良ければお貸ししますよ。——豆をあるだけ、ですから。結構ありますよ」


 それから私も手伝いながら小型の荷車を借りたり、積み込んだりした。


「あとそれぞれの収穫場所について教えていただけるとありがたいのですが」

「場所、ですか。大まかな地方のようなもので良ければ」


 そう言ってタグのような紙に名前を書いていってくれた。なんて書いてあるかがさっぱり分からない。……言葉の勉強も必要、かな?


「こちらで以上になります」


 詰みこまれた荷物は、袋にして9袋。種類は4種になる。


「お店として本格稼働、でしょうか」

「はい。少しづつお客さんが入ってくれればなぁ、と」

「楽しみですね。また足を運ばせて頂きます」


 そんな商人とのやり取りを終え、今度はロースターの元へ向かう。


(荷台があっても結構しんどい……)


 そう思いながらなんとか荷台を引いてロースターの元へたどり着く。


「ごめんくださーい」

「……また来たのか。もう前回の分がもうなくなったのか?」

「いえ。扱う種類を増やそうと思いまして」


 そういって荷車の豆を見せる。


「……これ全てか。時間がかかるぞ」

「はい。お手数をお掛けしますがおねがいします」

「かまわん。仕事を断る程ヤワな俺ではない」

「それで……申し訳ないのですが、しばらくお預かりいただいても?」

「というと?」

「お願いしている間に魔車を買いに行こうかと」

「……なるほど。この荷物を扱うなら必要かもな」

「では、よろしくお願いします」


 そう言ってロースターの元を後にした。さて、次は魔車探しだが……。


(この街も結構広いんだよね……迷子にならない様にしないと)


 そう思いながら地図を頼りに歩き始めた。


     *     *     *


 街の大通りは朝から賑わっていた。

 石畳の道は陽を反射して淡く光り、両脇には色とりどりの天幕や木造の軒が並んでいる。香辛料の香りや焼き菓子の甘い匂いが風に混じり、すれ違う人々の服もさまざま——旅装の商人、腰に工具を下げた職人、籠を抱えた主婦たち。

 異国訛りの会話があちこちで飛び交い、荷馬車の車輪が石をきしませながらゆっくり通りを抜けていく。

 店先には見慣れない果物や色鮮やかな布地が山と積まれ、呼び込みの声が絶えない。小さな路地に目をやれば、干した魚を吊るす店や、子どもが手を伸ばして駄菓子をねだる姿も見える。

 交易の街らしく、通りを抜ける風はどこか塩気を含み、遠く港の方から船の帆を打つ音が微かに届いた。

 地図を片手に進むが、人波と露店の列に視界を取られ、足元の石畳の段差につまずきそうになる。


(うわ……人が多い。これ、地図を見てるとすぐ迷いそう)


 胸の内で呟き、少しだけ歩幅を狭める。

 目的地は大門——街の出入り口の一つで、荷車や魔車の取扱所があるらしい。きっとそこも、今以上に人と物でごった返しているだろう。

 やがて大門が見えてきた。石造りのアーチをくぐれば、広場のような空間が広がっている。

 荷車や馬車が何台も行き交い、積み下ろしの掛け声と車輪の音が入り混じる。

 その一角に、木造の屋根付き棚が並び、下には鉄枠の台車や、魔力石のはめ込まれた奇妙な荷車が静かに置かれていた。

 人々はそれらの周りで値を交わし、時折、淡く光る魔力石が短く脈打つ。

 商人たちの背越しに、門外の道が遠く霞んで見えた。


「いらっしゃい!」


 思っていたより大きな声がかかり、ビクリとする。普段静かな森の中にいるのでこういう雑踏は久しぶりの感じだ。


「あの、魔車、を探していまして」

「ああ、こっちの裏で受け付けてるよ」


 案内されるがまま付いていく。そこには窓口があった。

 レンタルか購入か、などなどしかじか話して、くだんの魔車を手に入れた。四輪の木製で出来ている質素なものだが。先に使った荷車よりコンパクトだ。

 走ったりするとついてこないとかなんとか。とりあえず購入出来た。私の後ろをついて来る。かわいい。

 

(あとはこれに荷物をまとめて載せるだけね)


 この大門付近の活発さは凄いものを感じた。次に来ることがあれば宣伝とかやってみたい。

 そうこうしてまた焙煎士の場所に戻ってくる。丁度仕上がったらしい。


(これで四種の豆が入手出来た。それぞれの特徴を掴めば早速メニュー入りだ)


 こうしてシングルオリジンとしての豆を入手したのだった。

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