第5章 事件の真相
杏子とおじいちゃんは、カフェの裏で見つけたまんじゅうの欠片を手に、商店街の広場へと戻ってきた。
「これが決定的な証拠になるとはのう…!」おじいちゃんは得意げに欠片を掲げながら、胸を張った。
「おじいちゃん、いかにもそれっぽく言ってるけど、証拠っていうか…それただのおまんじゅうのかけらだよね?」杏子は冷静にツッコんだ。
「ふむ、ぱみゅ子はまだ若いのう。このまんじゅうの欠片こそが、事件解決の鍵なんじゃ!」
「いや、だから、どうしてそうなるの?」杏子は困惑しながらも、改めて欠片を見つめた。確かに、言われて見れば、この破片には他の部分と違う点があるように見える。まるで、誰かが急いでかじったような跡がついていた。
「…もしかして、誰かが食べたの?」杏子は脱力しながら言った。
「その通りじゃ!」おじいちゃんは大きくうなずいた。「まんじゅうが自ら動いたのではなく、誰かがそれを持ち運んだ可能性が高いんじゃ!」
「待って…なんか言ってること変わってますけど?」
「まんじゅうは逃げたんじゃなくて、運ばれたんじゃ!」
その瞬間、二人は顔を見合わせた。
「犯人は…カフェに関係する人?」杏子が驚いたように言うと、おじいちゃんは満足げに頷いた。
「いや、ぱみゅ子、正確には“犯人”ではなく“協力者”じゃな!共犯というのも可哀想じゃ」おじいちゃんが指をさした先にいたのは、樹神拓哉と、小鳥遊つぐみだった。
事件の真相
「樹神さん、まんじゅうの行方について、もう隠さず話してくれませんか?」杏子が真剣な表情で言うと、樹神は観念したようにため息をついた。
「…わかりました。実は、あのまんじゅうは私とつぐみさんで一度、カフェに運びました。」
「え?」杏子は驚いてつぐみを見る。
「ごめんなさい…!」つぐみは申し訳なさそうに頭を下げた。「でも、私は何も悪いことをしているつもりはなくて…!」
「どういうこと?」
「まんじゅうの内部に異常があることに気づいたんです。」樹神が説明を始める。「あの“生命力”を持つまんじゅうは、通常の状態では問題なかったのですが、もし何かの拍子に暴走したら、イベントどころではなくなるかもしれないと思い、一時的に隠すことにしたんです。」
「でも、あれ、100キロ近くありますよ? 一人で運べるとは思えないんだけど…?」杏子が疑問を投げかけると、つぐみが申し訳なさそうに言った。
「だから、私が手伝いました…。パティシエの仕事を学ばせてもらっている立場なので、樹神さんが困っているなら力になりたかったんです。」
「つぐみさんが?」
「はい。でも、二人で持つのも無理だったので、巨大な板の上に乗せて、カフェまで台車で運びました。」つぐみは肩をすくめた。「思った以上に大変でしたけど…。」
「でも…その後、異常は解決しなかったんですか? 元に戻せばこんな騒ぎにもならなかったのに。なぜ元の場所に戻さなかったんですか?」杏子が尋ねると、樹神は少し申し訳なさそうに目を伏せた。
「まんじゅうを移動させたあと、まさかこれほど大騒ぎになるとは思わなくて…。それに、どのタイミングで戻せばいいかもわからなくなってしまって…。」
「なるほどな。」おじいちゃんが腕を組みながらうなずく。「つまり、まんじゅうは本当に“消えた”わけじゃなく、安全のために一時的に移動していただけだったわけじゃな!」
「すみません…」樹神とつぐみは深々と頭を下げた。
「まあ、結果的には大事にならずに済んだから、いいんじゃないですか?」杏子は微笑んだ。「イベントが無事に開催できるなら、それが一番ですよ。」
その言葉に、樹神とつぐみはほっとした表情を見せた。
「ありがとうございます。私も、まんじゅうがみんなの前で楽しんでもらえることが一番だと思っていました。」
エピローグ
翌日、商店街は活気に満ちていた。
まんじゅうは少し小さくなったとはいえ、昨日から、樹神拓哉と小鳥遊つぐみが懸命に作り直したものが飾られていた。
イベントは予定通り開催された。
「さあ、みんなで巨大まんじゅうを楽しもう!」不動の掛け声とともに、町の人々は大きなまんじゅうに群がった。
「わたしの責任にならなくて良かった」
「うむ、ワシの推理が見事に的中したな!」おじいちゃんは得意げに腕を組んで頷いた。
「えっと…最初全然違うこと言ってたし、当たったのも、ほぼ偶然だった気がするけど?」杏子は苦笑しながらおじいちゃんを見上げた。
「ぱみゅ子、それは言わん約束じゃ!人の良いところだけを見る。それがこの世に生きるものの掟なんじゃ」
「そうそう。おじいちゃんのおかげで事件は無事に解決しよ。これでいいかな?」杏子が肩をすくめながら言うと、おじいちゃんは満足げに頷いた。
商店街には、和やかな雰囲気が広がっていた。まんじゅうの謎は解け、樹神とつぐみの奮闘も無駄にはならなかった。
「ところで、ぱみゅ子、わしゃ、今回の事件には、まだ大いなる問題が残ってると思うんじゃ」
「え~、まだあるの?」
「そうじゃ。初代巨大まんじゅうがカフェに持ち込まれ、処分する時、その場にいたお客さんに無料で振る舞われたというが、なぜわしに教えてくれなかったのじゃ。わしが、まんじゅう大好きってことは、有名な話じゃないか」
杏子は呆れながら
「じゃあ、さっそくイベントに参加して、食べておいでよ。食べ過ぎたらダメへだよ」
「さて、大変美味しかったし、来年もまたこのイベントに参加するかのう!」イベントに参加し、お腹いっぱいになったおじいちゃんは大きく伸びをしながら言った。
「えー、来年はもう、おまんじゅう事件が起きたりしないよね?」
「さあ、どうじゃろうな?
だが、不安に思うことはない。事件のあるところに、おじいちゃんありじゃ」
二人のやり取りを見ながら、商店街の人々は笑い合っていた。