第4章 まんじゅうの行方と商店街の秘密
商店街を駆け回るおじいちゃんと杏子の足音が、ひときわ大きく響く。まんじゅうの行方は依然として不明だった。
「おじいちゃん、ほんとにまんじゅうが動いたのかな?」杏子はため息をつきながら歩いていた。
「ぱみゅ子、動いたに決まっとる! まんじゅうが逃げるわけがないじゃろ?」おじいちゃんがにやにやしながら言う。
「食べられるのがイヤで、逃げたんじゃ?」杏子は自分でそう言って、いつのまにか、おじいちゃんの変な世界に紛れ込まされてしまったような感覚に陥った。「でも、誰が何のためにそのまんじゅうを動かしたのか、それが全くわからない」杏子は歩きながら周囲を見回す。
「ふふふ、そこが問題じゃない。大事なのは、まんじゅうがどこに行ったかじゃ。」おじいちゃんが突然、立ち止まって言う。
「え?」杏子は疑問そうな顔をして立ち止まる。
「ぱみゅ子、この商店街の中には、まだまだ隠されたものがあるんじゃ。」おじいちゃんが低い声で言った。その言葉には、何か重い秘密が隠されているような響きがあった。
「隠されたもの?」杏子は思わず歩みを止め、顔を上げる。
「そうじゃ。ぱみゅ子、この商店街の中には、あのまんじゅうに関連する古い秘密が眠っている。」おじいちゃんは少し考え込むように言った。「特に、あの樹神が作ったまんじゅうには、ただの“お菓子”という枠を超えた何かがあるんじゃ。」
その言葉に、杏子は再び気づき始めた。樹神が語った「動く力」の意味。あのまんじゅうがただの食べ物ではないことに、何か重要な秘密があるのではないかと、杏子の直感が告げていた。
「でも、どうして樹神さんはその秘密を隠していたんだろう?」杏子が呟いた。
「それがわからないからこそ、調査を進めるんじゃ。」おじいちゃんは自信たっぷりに言った。「ほれ、あのカフェに行ってみよう。あの店の裏には、何かが隠されている気がするんじゃ。」
杏子は少し驚きながらも、おじいちゃんが指差した先にあるカフェに目を向けた。そのカフェは商店街の外れにあり、あまり目立たない場所にひっそりと存在していた。しかし、どこか不思議な魅力を感じる店で、樹神もよく訪れる場所だと聞いたことがあった。
二人はカフェに向かって歩き始めた。
カフェに到着すると、店内には香ばしいコーヒーの香りが漂っていた。常連客たちが静かにおしゃべりをしている中、カウンターの後ろで働くつぐみが顔を上げた。
「いらっしゃいませ。」つぐみはにっこりと微笑んで、二人を迎え入れた。
「こんにちは。」杏子が軽く手を挙げて言うと、おじいちゃんがすぐに声をかけた。
「わしはな、このカフェの裏に、隠された秘密があると見た!」おじいちゃんは大声で言いながら、店内を見渡した。
「え?」つぐみは驚いたようにおじいちゃんを見た。「隠された秘密? うちにはそんなものありませんよ?」
「いや、あるんじゃ!」おじいちゃんは全く気にする様子もなく、さらに続ける。「だから、まんじゅうが消えた原因を探るためには、この店の裏に行かねばならん!」
杏子はおじいちゃんの勢いに少し笑いながら、「おじいちゃん、さすがに急にそんなこと言っても信じてもらえないよ。」と呟く。
「ふふふ、ぱみゅ子、見てみろ、あのカフェの裏口が気になるだろ?」おじいちゃんが示した先には、カフェの裏口があった。杏子はその扉をじっと見つめ、何かが引っかかるような感覚を覚えた。
「確かに。じゃ、行ってみましょう。」杏子が言うと、おじいちゃんは得意げににんまりと笑った。
二人は裏口に向かって歩み寄り、扉を開けると、そこには予想外の光景が広がっていた。店の裏側には、古びた倉庫があり、その中には様々な道具や材料が無造作に積まれていた。だが、何よりも目を引いたのは、中央に置かれている一つの箱だった。
「これは…なに…?」杏子が息を呑んで言うと、おじいちゃんがその箱に近づいていく。
「ふふふ…ぱみゅ子、この箱こそが鍵だ!」おじいちゃんは箱を開けると、その中から何かを取り出した。
中身は…まんじゅうの一部だった。
「これ、どうしてここに?」杏子は驚きながら、それを見つめる。
「ぱみゅ子、ようやく気づいたか。」おじいちゃんはにやりと笑いながら言う。「これは、まんじゅうが動いた証拠だ! そして、この箱の中に隠された秘密が、事件を解決する手がかりなんじゃ!」