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5. 魔法合戦

 騎士登場! あと魔法!

 エリクシーラは、目の前で広がる炎に身を竦ませた。だが、兄二人はそんなエリクシーラの肩を抱いたまま平然と立っている。

「あーあ、やってくれたねえ」

「全く面倒な…」


 その三人のすぐ後ろまで下がった王太子は、パニックになりそうな生徒たちに、大丈夫だから落ち着け、と声をかけている。

 不思議なことに親たちも、困ったものだ、程度の反応で、慌てる子どもたちを落ち着かせ、順次外に退避している。


 クレイの金緑の双子がいてよかった、という呟きが大人たちから聞こえてきて、エリクシーラはえっ、と兄二人を見上げた。


 轟々と渦巻く炎に正対したレオンとシルヴァは、いつも通りの悠々とした雰囲気で、ゆったりとただ佇んでいる。炎は二人に届かず、カルルの周りでだけ燃え盛っている。


「くそっ……、なんだ、炎が上手く操れなっ……」


「あっ!」

 制御を失った炎が身を翻した龍のように捻れて吹き上がり、カルルの背後を襲おうとしたのを、エリクシーラは見た。


 そこに身を竦めたミルキィベル伯爵令嬢がなすすべもなく立っているのを。


「だめっ……!」

 咄嗟に駆け出したエリクシーラは、カルルの横を抜けミルキィベルに飛びつくように覆いかぶさった。

 そのまま、恐怖に身を固くしながら炎が落ちてくる瞬間を待ったが、何も起こらない。


「……?」

 恐る恐る顔を上げれば、炎はエリクシーラの周りには落ちず、捩れながらカルルの周りを回っていた。


「くそっ……、くそっ」

 カルルは自分の炎と戦うように腕を振り回している。


「王太子殿下、いい加減弟殿下とちゃんと向き合ってくださいよ」

 シルヴァがうんざりしたように王太子に声を掛ける。

「聖石を噛んだヤツの相手は面倒くさいんだよ……耐久高くて……」

 王太子は嫌そうに言う。

「全力出したら瞬殺いけるでしょ」

「全力は疲れるだろ! まだ政務が残ってるんだよ!」

「いいから、魔力操作解きますよ」

「結界は部屋に張ったままにしておくが、なるべく当てるなよ」

 ブツブツ言う王太子に、シルヴァとレオンが言い放つ。

 しょうがないなあ、と王太子は二人より前に踏み出した。


 自分たち以外の生徒は全員、親と一緒に建物外に避難したらしく、ホールはがらんとしている。

 ミルキィベル以外のカルルの取り巻きたちも、ひとり残らず消えていた。


「はい、どうぞっと」

 シルヴァがパチンと指を鳴らした瞬間、そのがらんとしたホール内に、カルルの炎が弾け飛ぶように広がった。


「うわあっ」

 カルル本人がその勢いにびっくりして悲鳴を上げ、慌てて炎を自分の周りに収束させる。


 エリクシーラはその様子を、ミルキィベルを腕の中に抱いたまま身を縮めて眺めていた。いつの間にか青髪の騎士が自分を守るようにすぐそばに立っていた。


「お嬢様、大丈夫ですか、お怪我は」

「だ、大丈夫」

「動けるようなら少し下がりましょう、王太子殿下の攻撃に巻き込まれても困りますので」

「そんなヘマはしないぞ!」

 聞こえたらしく、王太子がこちらに向かって叫ぶ。

 騎士は軽く肩をすくめ、エリクシーラとミルキィベルを促してホールの端近くまで下がった。


 ホール中央では連続して爆発が起こっている。カルルと王太子の魔法がぶつかり合っているのだ。だが、全て中央に収まっていて、流れ弾一つ飛ぶ気配はない。エリクシーラはホッと息をついた。


「あ、ミルキィベル様、大丈夫ですか?」

 気持ちに余裕ができてやっとエリクシーラはミルキィベルの様子をうかがって……、そして気付く。


 ミルキィベルはずっと静かに泣いていた。


「えっ? ミルキィベル様? 何処か怪我でも?」

「……めんなさ…………」

「えっ?」

「エリクシーラ様、ごめんなさい……!」

「えっどうしましたのどうしましたの?」

「彼女、最初からずっと泣いてましたよ」

 青髪の騎士が言う。


「えっずっと? っていうかあなたずっといたの?」

「そりゃ居ますよ……俺はエリクシーラ様付きの騎士ですから……」

 騎士は傷ついたように言う。

「そりゃまあ……目立たぬように守れと言われていたのであまりお近くには寄りませんでしたが……それにしても、認識すら、されてなかったんですね……」

「ごっ、ごめんなさい、えっと……」

 と、改めて顔を見て、乳母そっくりの青髪と黒目を確認して驚きの声を上げる。


「えっ!? リアムおにいちゃん!?」


「そうですよ、乳兄弟のリアムですよ。思い出してくれて嬉しいですが今それどころじゃないですね」

「あっそうね! ミルキィベル様、どうなさったの?」


「ごめ……ごめんなさい、王子殿下が……ひどいことを……」

「えっ? なに? 婚約破棄のこと? 良いんですのよ願ったり叶ったりですもの!」

「わ……わたし……、エリクシーラ様に取って代わろうなど一つも思っていなくて……」

「えっ? そうですの? 良いのよ王子持っていってくれて!」


「王子要らないですぅ!!」

 うわあああんっ! と、ついにミルキィベルは声を上げて泣き出してしまった。


「要らないの!?」

 エリクシーラも驚いて大きい声が出た。

 ここまでお読みいただいてありがとうございます!


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