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わたくしの涙は聖石になりますが、悪役令嬢なので泣きません!  作者: 青風ぱふぃん
第二章

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2-4. 推しにバラすのはマナー違反!

色々あって間が空いてすみません!

出来る限り定期的に投稿したいと思っていますが、ちょっとしばらく不定期になるかもしれません。

Xの方で更新通知は出すようにします。よろしくお願いします。


「……魔王?」

 ホルンの言葉に、エリクシーラが首を傾げる。


 ミルキィベルの腕の中で、ファーヴァがぴくりとかすかに動く。


 エリクシーラの二人の兄と王太子がピリッと緊張し、フローディルがあーあ、と天を仰いだ。


「そういうこと言わないようにって言っといたじゃん、ホルンー」

「え、ごめんなさー、い? でも、ここ言わないと、大事なこと、伝わらない、よぅ」


「どういう事です、ディル」

 フローディルを睨みながら王太子が問う。

「ああ、いやー、この国に来るって決まってから、ずーっとこれ言ってるんだよねぇ。センシティブな内容だから、迂闊に喋らないように言っといたんだけど」

「ただの妄想……と思っていいですか?」

「あー、うんうん、ただの妄想だよ、うん」


 フローディルの態度に何か誤魔化しを感じた王太子は、問い詰めようと口を開いた。と、


「キャーッ!!」


 そこへ突然、マルデルの悲鳴が響き渡った。


   *   *   *


「マルデル、どうしたの!」

 悲鳴に驚いてホルンが駆け寄ってくる。フローディルもすぐに駆けつけた。


「マルデル、大丈夫か?」

「……あっ、なっ、なんでも、な、ないです」

「なんでもなくないでしょ」

「う、あ、あの、その」

 うろたえながら、マルデルはだんだん涙目になってくる。


 その様子に、ミルキィベルが慌てて手をパタパタと振って言う。

「なんかごめんなさい! 言い方が悪かったです! わたしがクレイ家のタウンハウスに居候させてもらってるだけです!」

「え……」

 マルデルは伺うようにリアムを見上げた。

「でも、お、同じお屋敷って……」


「俺はクレイ家の使用人ですので、当然同じタウンハウスに居ります。ですが、使用人棟のほうに部屋がありますので、同じ建物には居住しておりません」

 何を当たり前のことを、と言う顔で、それでも丁寧にリアムが答える。

「あ……、そ、そういう……」

「あ、ただ当直の際にはエリクシーラお嬢様のお部屋の控えの間に居りますので、その時は同じ建物ですね」

 リアムはしれっと付け加える。

 連日自主的に当直していて使用人棟の自室にはほとんど帰っていない、というのは、また騒がれても厄介なので言わないでおいた。


「そ、そう……なんです……ね」

 少しホッとしたように力を抜いたマルデルに、ミルキィベルが慌ててフォローを入れる。


「誤解させてすみません! 高位貴族の娘が男の方と住んでるとか、そりゃびっくりしますよね! そんな奔放な女が聖女とか、ショックで悲鳴もあげたくなりますよね! 変な言い方してごめんなさい!」

「あっ……、そういう意味では……、あ、いえ、こ、こちらこそ、すみま、せん」

 ペコペコしながらフォローを続けるミルキィベルに、マルデルも慌てて頭を下げた。


「え、じゃあさ、リアムくん、恋人、いない?」

 不意にホルンが口を挟む。


「は……?」

 相手は仮にも国賓なのに、リアムは不快そうな顔を隠さない。


「……リアム、ご質問にお答えしろ」

 レオンが渋い顔で付け加える。


 はあ、と不敬なため息をいて、リアムは背筋を伸ばした。


「現在恋人と呼べる存在は居りません」

「好きな人とかは? 恋愛的な意味で!」

「……居りません」

「そっか!!」

ホルンがホッとしたようにマルデルを振り返る。


「良かったね、マルデル! 推しのリアムくんがフリーで」


「ぎゃーっ!!」


 マルデルが再び悲鳴を上げ、ホルンに飛びかかるようにしてその口を押さえた。


   *   *   *


「ホルンのっ、ばっ、バカバカバカ!」

「え。ごめーん、つい、うっかり?」

「もう、ほ、本当にバカでバカで、もう、バカ!」

「マルデル、語彙が死んでる」

 泣いて怒っているマルデルと、笑い転げているフローディル。


 自分のせいで、とオロオロしているミルキィベルに、エリクシーラがそっと近づいて問いかける。

「……推しって、好きな人、という意味でしたっけ?」

「えっ? あーまーそうですね、恋愛的な意味とは似て非なるものなんですが」

「あら、恋愛とは違う『好き』なのですね」

「いやー、一概にそうとも言い切れなくて……」


 モゴモゴと言葉を濁すミルキィベルに、エリクシーラは首を傾げる。


「ええとあの、つまり、推し活っていうのは、軽く楽しんでる方から本気の恋愛になってる方までいるんです」

「まあ……」

「特に地位の高い方は政略結婚が基本でしょうから、推しは愛情を注ぐ対象として、大切な心の拠り所ではないかと推察できます」

「そうなのですね……」

 うんうん、とエリクシーラは頷く。

「マルデル様は、リアムがお好きなのですね」


 言葉にしてみたらなんだか不思議な思いがして、エリクシーラはまた首を傾げる。


「……ちょっと身分が違いすぎる気もしますが」


 あら、なんだか意地悪な言い方になってしまったかしら、とエリクシーラは自分の言葉に困惑する。

 あれ、とミルキィベルはにまりと笑う。


「エリクシーラ様、もしかして……」

 ヤキモチ? と続けようとしたところに。


「良い!!」

 急に、ホルンがエリクシーラを指差して叫んだ。


「良い! 良い悪役令嬢!」

「えっ、えっ?」

「今の、良い意地悪!」

「……まあ! そうですか!」


 ぱあっ、と顔を明るくしたエリクシーラは、なにかモヤッとした気持ちを忘れてしまい、ミルキィベルは

「ああ……エリクシーラ様と恋バナ出来るかと思ったのに……」

 と残念そうに肩を落とした。


   *   *   *


「何をやっているのですか」

 ぼそりと、声がする。

 エリクシーラにしか届かないような、呟くような声。

 振り向くと、そこには、さえない感じの白衣の男性が立っていた。伸びた茶色の前髪が目にかかり、むすりと結ばれた口元が不機嫌そうだ。


「あっ、アブリエル先生、おはようございます」

 エリクシーラが礼を取る。


「おはようではありません。登園したらなぜすぐに生徒会室に来ないのですか」

「申し訳ありません、今すぐ! 殿下がた、失礼いたします」


「待て」

 王太子が止める。アブリエルと呼ばれた教師は動きを止め、渋々といった様子で振り返る。そして、

「……王国の輝く星、ジョエル王太子殿下にご挨拶申し上げます。……なんの御用でしょうか」

 とボソボソと呟くように挨拶をし、頭を下げる。


 うん、と鷹揚に挨拶を受けた王太子は、

「エリクシーラ嬢をなぜ連れて行く? 生徒会室とはどういうことだ」

「え? はい、エリクシーラ・クレイがいないと生徒会の業務が回らないからですが」

「エリクシーラ嬢は役員ではなかったのではないか?」

「は……? まあ、そうですねえ。しかし、エリクシーラ・クレイはずっと生徒会執行部を手伝っていますが……」

「なぜだ」

「彼女がいないと業務が回らないからだと申し上げています。授業前にやらなければならないことがありますので、御前失礼いたします」

 

 口出し無用、とばかりに不機嫌そうに話を打ち切り、アブリエルはエリクシーラを促してその場を後にする。


「エリクシーラ嬢……」

「お仕事がありますので、失礼いたしますね」

 軽く挨拶をして、エリクシーラは慌てたようにその場を去る。


 不審げに眉をひそめた王太子だが、今は隣国の王子の案内中だ。

 軽く頭を振って、王太子はフローディルの方へと向き直った。


   *   *   *


 今日は、特別に朝から全校集会が開かれた。


 王太子が立ち会う中、隣国ヴァナランの王子と王女が留学してくる旨が学園長から通知され、挨拶がなされる。


 最高学年にフローディル王子、1年生にホルンとマルデルが入学してくることが告げられた。


 3人で前に立ち、軽く挨拶をした後、壇上から不意にホルンがエリクシーラに話しかける。


「それでねぇ、悪役令嬢、王太子と婚約、するの、いつ? すぐ?」


 ざわ、と全校生徒が騒めき、壇上の王太子に注目が集まる。


「……いや! 現時点でその予定はない!」


 慌てて否定したその王太子の慌てぶりが、妙に信憑性を持った噂として、生徒の間に定着してしまった。



 ここまでお読みいただいてありがとうございます!


 ご評価、ご感想、ブックマーク、レビュー、リアクションなど、頂けたら嬉しいです。励みになります!


 次もよろしくお願いします!

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