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4. 断罪……?

 双子のお兄様と王太子登場!

「貴様、なぜここにいるんだ!」

 カルルはレオングリンを見上げて怒鳴る。


「大した騒ぎだな」

 すらりとした体格から想像できないほどの力で腕を掴まれ、カルルは痛みに顔を顰める。振りほどこうと腕を引くが、レオングリンはびくともせず、涼しい顔でエリクシーラに微笑みかける。

「よく頑張ったな」


 その後ろから、同じ顔がひょこっと出てきた。

「やあ、僕もいるよー」

「シルヴァお兄様!」

「エリィ、随分顔色が良くなって。良かったねぇ」


 双子の兄の弟の方、シルヴァレッドがエリクシーラの頭を撫でる。シルヴァのたれ目気味の緑の瞳が金色を帯びて光り、柔らかそうな金髪が整った顔をかたどって輝く。


 ほとんど同じ顔なのに、わずかにつり目のレオンと比べて、シルヴァはとても優しそうにほんわりと笑う。ホールの令嬢たちから、さわさわと控えめな歓声が上がった。


「なんでこんなに親がいるんだ……! 帰ったんじゃなかったのか」

 周囲に目をやりながらカルルが小さく呟いたのをレオンが聞き咎めた。


「保護者たちは保護者たちで、小ホールの方で交流会をしていたんだが、知らなかったのか?」

 怪訝そうにレオンが言う。シルヴァが引き継いで、

「一緒に帰ろうと思う親は、式典出席後にそのまま待つことも出来たんだよ。

 今年の卒業生には君がいるからね第二王子殿下、親族として王太子殿下がご出席だ。貴重な交流の機会だし大体みんな残ってたんじゃないかな」


 そこまで言ってシルヴァは首を傾げ、

「あとで生徒たちと合流して解散の手筈だったんだけど……、……生徒会長だった君が知らなかっただなんてことはないよねえ?」

 とカルルに笑いかける。


 カルルはグッと唇を噛み、レオンに掴まれた腕を振り払うようにして……力が足りず全然振り払えていないが……怒った声を出す。

「うるさいっ! クレイ公爵家には今年卒業生は居ないだろう! 貴様らはなぜここに居る!」


「王太子殿下を迎えに来た」

 レオンが答える。

「政務が詰まってるのに保護者交流会で王太子殿下が捕まって帰れなくて困っているというので迎えとして派遣された。

 だが、来てみたら第二王子がたわけた騒ぎを起こしたとかでそれどころではなくてな。小ホールは蜂の巣をつついたような大騒ぎだったぞ」

「たわっ……、たわけただと、貴様っ……!」


 暴れる王子から面倒そうに手を離したレオングリンは、エリクシーラの隣に来て切なそうに彼女を見つめる。

「話は聞いた。もう少し早く来ていれば可愛い妹の晴れ舞台を最初から見れたと思うと残念でならない……」

「ああ、そうですわね、お兄様方にも見ていただきたかったですわ、わたくしの悪役令嬢デビュー!」


 レオンとシルヴァに守るように挟まれて、エリクシーラは嬉しそうに微笑む。

「悪役令嬢? なんだそれは」

「帰ったらお茶しながら話聞かせてねー」


 ワイワイと話している三人に、イライラとカルルが歩み寄ろうとした。クレイ家の紋章の騎士服を着た青髪の騎士がさっと走り出て、彼らを守るように王子の前を塞いだ。


「無礼な! 下がれ! 私はまだエリクシーラと話があるのだ!」

「拳を振るうのは話とは言わないよ? どういう教育を受けているんだい君は」

 シルヴァが騎士の影から呆れたように言い、後ろを振り向く。


「そんなところで顔を赤らめて照れていないで、あなたの弟をなんとかしてくださいよジョエル王太子殿下!」

「あ……いやぁ……」

 本当に顔を真っ赤にし、それを隠すように片手を口もとに当てた王太子が人混みの中からそっと進み出る。


 緩いウェーブの緑がかった金髪は、肩にふわりと影を落とし、王族らしい深い青の目は今は落ち着きなく逸らされている。

「世界一美しいエリクシーラにベタ褒めされてたからな、気持ちはわかるが……我らがあれを止めるとあとが面倒なんだ、ジョエル」

 レオンが道を開け、王太子を促す。


(ベタ褒め? しましたっけ? ……しましたわね。第二王子を貶めるのに利用しただけですけど。聞かれてましたのね。さすがに不敬だったかしら……)


 エリクシーラは王太子に向かって礼を取り、

「ジョエル王太子殿下、御名をみだりに口にしまして、大変に失礼をいたしました」

 と頭を下げた。

「ん、いや、構わない」

 と言いながらも王太子はエリクシーラと目を合わせてくれない。そのまま目の前を通り過ぎて行く。

 これは良くない。

 あとで兄たちと相談してなにかお詫びをしなくては……とエリクシーラは心に決めた。


 一方、王太子はそのまま歩を進め、カルルの前で立ち止まる。


「自分がどれほど愚かな行いをしたかわかっているのか、カルル?」

「うるさいっ! 無能のくせに! 先に生まれたからってだけで王太子になった兄上に、優秀な私に意見する権利があると思ってるのか!」

「無能?」

 王太子は片眉を上げる。

「お前こそ、エリクシーラ嬢なしでその優秀さを維持できるのか?」


「えっわたくし?」

 キョトンとエリクシーラは声を上げる。

「わたくし何もしてませんが……」

「ああ、エリィは可愛いなぁ」

 シルヴァがそんなエリクシーラをガバっと抱きしめ、よしよしと撫でながら口の中で小さく呟く。

「父上が隠し通してたからなぁ、知らぬは本人ばかりか……」


「ジョエル、ここではまずい」

 周囲の目を意識したレオンの勧めに応じ、小さく頷いた王太子は、場所を変えようとカルルに背を向ける。


 憎々しげに王太子を睨んでいたカルルは、その瞬間を捉えてニヤリと笑い、パッと何かを口に入れ、噛み砕く。と同時に、魔法を発動した。


 カルルを中心に巨大な炎が膨れ上がり、ホール内に悲鳴が響き渡った。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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