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1. 婚約破棄?受けて立ちましょう

 あんまり考えずにイケメン書こうと思って始めました!

 と思ってたのですが下手すぎて文章こね回してたら思ったより時間がかかりました(苦笑)


 少しだけ書き溜めてあるので、そこまではテンポ良く投稿したいと思います!

 お気軽に読んでいただけると嬉しいです。

 よろしくお願いします。

 今日は王都魔法学園の卒業式。


 貴族が多く通う魔法学園のホールは、卒業式後のパーティーのためにきらきらしく飾り立てられ、華やかなドレスの令嬢や凛々しいスーツ姿の令息たちで埋め尽くされていた。


 なのに、今や会場はしんと静まり返っている。


 そんな彼ら彼女らの注目を集めた会場中央で、エリクシーラは婚約者のカルル第二王子と向かい合っていた。


 エリクシーラの長いストレートの黒髪は床に向かってまっすぐに流れ、少し俯いたその表情を隠していた。


 王子の隣には明るいミルクティ色の髪の、ふんわりと可愛らしい令嬢が、王子の陰に隠れるように俯き気味で立っている。


「……お前の地味さでこの私の隣に立つのは辛かろう。だから、このミルキィベル伯爵令嬢を正妃とするのだ。可憐な彼女なら立っているだけで外交も社交も完璧だ!

 ……ああ、心配するな! お前を見捨てはしないとも。側妃として娶ってやるから、裏で私の補佐をすればいい!

 お前の好きな、地味な書類仕事は全部任せてやるぞ。どうだ、全てお前のためだ、ありがたい話だろう」

 短めの金髪を掻き上げながら、王子は自信満々でエリクシーラを見やる。


「お断りいたします」

 エリクシーラは間髪入れずに答え、顔を上げた。


 色白の頰に影を落としていた長い睫毛がゆっくりと開かれ、アメジストの瞳が挑むように王子を見つめた。


「えっ」

 従順な婚約者だったエリクシーラの突然の反抗に、王子は青い瞳を丸くして言葉に詰まる。


「お断りいたします」

 エリクシーラはもう一度はっきりと言う。


「なぜだ! お前のためだと言っているだろう!」

「お断りいたします」

 表情も変えずエリクシーラは繰り返す。


 その様子に、生徒たちがヒソヒソと囁き始める。


 王子は、ギリリ、と歯を食いしばった。


「その態度は何だ! 今すぐ跪いて謝れ!! 私の厚意に感謝して提案を受け入れろ!!」


 「提案……」

 エリクシーラが呟く。なぜこの男はわたくしがその条件に頷くと思っているのだろう。


 ……まあ、わたくし自身、今の今まで王子に尽くすことだけが自分の存在価値だと思っていたのだから、王子も勘違いするのでしょうけど。


(本当に、愚かでしたこと……)

 エリクシーラは艷やかな黒髪をさらりと揺らして小首を傾げ、自省するように瞳を伏せる。


 それをどう勘違いしたのか、王子は勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「泣いても許さんぞ! 跪け!」

 王子は、生徒たちの前で彼女の心を傷つけるだけの目的で、さらに声を張り上げる。


「跪かないなら、婚約は破棄だ!」


 エリクシーラは、動揺したように閉じた扇子を口元に置く。


 王子はズカズカとエリクシーラに歩み寄り、

「ほら、謝れ! 本当に婚約破棄されたいのか?」

 と、エリクシーラの肩に手をかけようとした。


 その手を、エリクシーラは扇子で弾く。

 乾いた音が広いホール内に鳴り響いた。


「な……なっ……」

 驚きのあまり口をパクパクしている王子を侮蔑の視線で見やり、エリクシーラは口角を吊り上げる。


「お断りしますと申し上げました。わたくしもう、あなたのためには泣きません。婚約破棄、けっこうですわね、受けて立ちますわ。


 わたくし、悪役令嬢ですので!」


 オーッホッホッホ! と高笑いを響かせてみせる。


 そう。

 先ほど唐突に知ったのだ。自分は悪役令嬢だと。


 と同時に、今まで王子の言うなりになってきたことが間違っていたと気がついた。

 知らぬはずの異世界の記憶、溢れ出す『乙女ゲーム』というものの記憶が、萎縮した心を洗い流していく。


 こんな男にペコペコしていてはダメだわ。わたくしは悪役令嬢なんだから、もっと自由に堂々と生きなきゃ!


 その覚悟を持って臨んだ断罪劇。


 やり遂げたわ、と、エリクシーラは王子に背を向けてパーティー会場を出ていこうとする。


 騒めく会場内、ポカンと口を開けてエリクシーラを見送るカルル第二王子。


 騒ぎを聞きつけ、ホールの入口に、生徒の親族の貴族たちが集まり始めていた。


    *   *   * 


 時は少し遡る。

 卒業式の式典は滞りなく終わり、学園内の大ホールで式後のパーティーが行われていた。


 華やかに飾り立てられた会場の中、来賓たちの挨拶も済み、保護者たちも退場して、生徒たちだけの交流会の時間になっていた。


 場の緊張も解け、先輩との別れを惜しむ在校生や、卒業後の進路を語り合う卒業生たちなど、皆思い思いのグループに分かれて賑やかに過ごしている。


 その時間になってやっと、エリクシーラはホールの入口まで辿り着いた。


 高位貴族の面々に仕事を押し付けられ、卒業式の準備から片づけまでバタバタと駆け回っていたエリクシーラは、やっと仕事を終わらせて、急いで身支度を整えてここまで来たのだ。


 髪を結い直す暇も装身具を整える暇もなかった。


 仕事を片付けたあと、自分に与えられた控室に駆け戻ったエリクシーラは、下女のように一つ括りにしていた髪を解いた。


 部屋に侍女は居ない。エリクシーラに侍女をつけることを、王子が嘲笑いながら拒否したからだ。


「自分のことは自分でできるだろうエリクシーラ。侍女なんて贅沢だものな。贅沢な王子妃は国民に嫌われるぞ。お前のために提案しているんだ」


 ニヤニヤと笑いながら言う王子のその後ろには、侍従やメイド、護衛、取り巻きの貴族の子息子女がたっぷり付いて、いつも細かく王子の世話を焼いている。


 多分本音は、侍女なんかいたらエリクシーラを虐めにくくなる、と言うあたりだろう。

 公爵家には、王家が侍女を付けるからと根回しまで済ませてのこれだ。エリクシーラにその『提案』を拒絶することはできなかった。


 エリクシーラは控室を見回した。櫛を探す間も惜しい。軽く頭を振って、指を数度髪に通す。癖のないエリクシーラの黒髪はそれだけで濡れたような艶を取り戻し、サラサラと肩から腰に流れた。


 パーティー用の華やかなドレスも装身具も用意してあったが着替える暇はない。

 装飾を抑えた卒業式用の礼服ドレスのまま、扇子だけを掴んで飛び出してきた。


 その扇子を握り直して姿勢を正し、エリクシーラは呼吸を整えてからゆっくりとホールに足を踏み入れる。

 どうしてもパーティー中に愛しい人にお祝いを伝えたい。こんなときくらいは、彼も笑顔でありがとうと言ってくれるかもしれない。


 切ないほどのそんな思いを抱え、カルル王子を探して、エリクシーラは周囲を見回しながら歩く。


 と、カツッと足音を立てて背後に人が立った。

「エリクシーラ、今頃来たのか」

 不快感のにじむ声で吐き出された言葉に、エリクシーラはびくりと背筋を伸ばし振り向く。そこには複数の令嬢令息を従えて立つカルル王子がいた。


「カルル様!」

 エリクシーラは王子に会えて、声に喜びを滲ませる。


「遅くなりまして申し訳ありません、カルル様、ご卒業おめでとうございます」

「王子殿下と呼べ、不敬だぞ」

「えっ?」

 いつもの呼び方を突然咎められ、驚きの声を上げてしまってから、ああ、また始まったか……と思う。王子はいつも気まぐれにエリクシーラを貶める。


 失礼いたしました、と頭を下げながら、エリクシーラは苦い思いを噛みしめる。

 その様子に暗い喜びを滲ませながら、王子は、わざとらしくやれやれ、と困ったような顔を作った。


「高貴な私の婚約者に選ばれたとはいえ、しょせん貧乏公爵家の末娘だろう。身の程をわきまえて、大人しく隅にでも控えていろ」

 それだけ言うと返事も聞かず、カルル王子はくるりと背を向ける。

 クスクス、ホホホ、と嘲笑を残し、王子と取り巻きたちはホールの中央に戻っていった。


 王子が人波にのまれて見えなくなるまで頭を下げつつ、エリクシーラは、誰にも気づかれないように小さくため息を吐いた。


 そう、エリクシーラも実は高位貴族の端くれである。端くれというか、王家に次ぐ高い地位を持つ公爵家の一員だ。


 このヒースフィールド王国は、大陸に広大な領土を持つ大国である。

 そこには王家の下に三大公爵家があり、さらにその下に五大侯爵家を始めとする多数の貴族家が政務に励み、領地を管理して国を支えている。


 ……と聞くと公爵家の地位はとても高いもののように思えるが、実際は『二大公爵家とおまけの弱小公爵家』と言われるその弱小公爵家がエリクシーラの生家である。


 さらに婚約者であるはずの王子が彼女を軽視した態度を続けていることで、エリクシーラは他の貴族子息たちからも見下され、王子妃教育の名目で下働きのようにこき使われていた。


 曰く、

「生徒会の仕事は政務に通ずる。王子をサポートする立場のお前の将来のために学ばせてやっているのだ」


 また曰く、

「他の貴族家とのつながりは王子妃として大切な人脈だ。困っている彼らの手伝いは積極的にするべきである」


 こんな調子で休む間もなく様々な仕事を押し付けられ、そのうちに教師も、生徒会長であるカルルに渡すべき仕事を、すべて当たり前のようにエリクシーラに渡すようになった。


(隅に控えていろって言われてしまったわ……)

 エリクシーラは二年生。卒業生の中には良くしてくれた先輩もいる。卒業後は領地に戻ってしまう者もいるのだ、挨拶にくらい回りたいのだが。


(仕方がないわね……)

 王子の機嫌を損ねると面倒なことになる。大人しく壁際に立っていることにした。


(カルル様が卒業してからは、少しは時間が取れるようになるかしら。滞っている本来の王子妃教育も進めなくてはね……)


 通りがかった給仕からレモンを加えた炭酸水を受け取り、喉の渇きをゆっくりと潤しながら考えにふける。しばらくぼんやりとしていると、会場の中央辺りからどっと歓声が沸き起こった。


 驚いてそちらに目をやれば、視線の先の人波がザッと音を立ててふたつに割れ、自分と騒ぎの中心を繋ぐ道が開いた。


「は……?」


 そこには、可愛らしい令嬢を腕に抱いてこちらをあざけるように見下す、王子の姿があった。

 王子はその位置からエリクシーラに向かって朗々と宣言する。


「私はこのミルキィベル伯爵令嬢を正妃として迎える!」


 その光景に、雷に打たれたような衝撃を受け……、そして心のなかで叫ぶ。


(断罪スチル!!!!!)


 その言葉とともに溢れる『乙女ゲーム』の記憶。それに釣られるように自分の過去の記憶も一気に脳内を駆け巡った。

 ここまで読んでいただいてありがとうございます!


 まだイケメン出てこない(笑)すみません。

 次の書き溜めも文章見直してから投稿します!


 また来てくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!

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