終幕のご利用は計画的に~主役は続投?それとも……~
お久し振りで申し訳ありませんm(_ _)m
また投稿再開しました(^-^)/
ちなみにですが、作者としては50話位で終わらせるつもりでしたが、色々と匂わせてしまったのでもう少し回収に尽力せねばならなくなりました(-""-;)
これぞ題名通りの『自業自得』( ̄□ ̄;)!!
ゴスッ!!
何処か懐かしさすら覚える痛みに意識が浮上する。
幼い頃によく宰相から貰っていた拳骨……?
だなんてちょっぴりほのぉとしたのは一瞬で。
あまりの痛さに瞬時に意識が現実へ引き戻された。
「……あれ?」
「あれ、では無いでしょう。王家主催の舞踏会の日に呆けるなど一体どんな無調法ですか?もう一度基礎から鍛え直して差し上げましょうか」
痛みに思わず呻き、手で撫でながら辺りを見回すと呆れた様子を隠そうともしない声が響く。
そちらを向けば、言葉以上に厳しい視線が……。
(おそらくは)生まれた時からの師匠の睨みには一切の容赦が無い。慈悲なんて皆無である。
さすが父上の幼馴染みだけあって強い!?
この方に自分は頭が上がらない、もうミリ単位でも無理。直角90度で下げっ放しとなる。
実際に次期国王で継承権第1位なのだが、まぁ現実として現国王でも場合によっては頭が上がらないと言うのだからそれは仕方ないだろう。
加えてこの方、俺の教育係の1人で筆頭。
担当は政治と外交といった帝王学の基礎と応用。
確かに自分は同年代に比べれば如才ない子供であったとはいえ、それでもこの宰相のしごきはかなり辛かったという記憶しか無い。
子供の時分、何度寝る度悪夢に魘されたか!!
…………いや、そうでは無く。
「あれ?」
もう一度首を捻る。
何かとても大事な事を忘れているような……?
両親が並んで此方を見ている。
心配そうな表情は……全然浮かべていない。
むしろ呆れ顔だ。何故?!
息子が痛い思いをしているというのに!?
「あ……ヴィクトリア……」
瞬間、身体の中が熱を帯びる。
ヤバい!久しぶりに気を抜いて呼んだから……!!
彼女にミドルネームを付けたのは会って直ぐ。
だって見た瞬間に運命を感じたから。
王族、しかも直系のみに許されたミドルネーム。
付ける事はもちろん、その名を呼べる者も身内以外は許可を与えられた者だけ。配偶者は別。
常々、男子の場合は特に年頃になってから与える点に疑問を持っていたが、その年頃を自覚し始めた頃になってから呼ばれて納得した。
…………本能が刺激されるからだって教えておいて欲しかった。子供にんなコト言える筈ないと分かってはいても遣り様は有っただろうに。
あの場で付けた事は後悔して無いけど。
だって彼女は私の『大事な者』なのだから。
誰かに奪われる前に印を付けなければならない。
………………今度こそは!!って……?
ゴスッッ!グリグリグリ~……。
ん?あれぇ?!
ぼーっとしていたらしく2発目を宰相から頂いてしまったが、それよりも急に湧いて来たその疑問に引っ張られてしまい痛みをあまり感じない。
今はむしろそれが有難い位だ。ぼーっとしていた自分も悪いが、だからって拳で頭の両脇を抉る追加は止めて欲しい!マジで痛いから!!
俺の頭の形、変わって無いよね?!
にしても、だ。
今まで疑問にすら思った事は無かったが、何故自分は彼女に初めて会ったのにそう焦ったのか?
………………答えは出ない。
うん、諦めよう。スッパリきっぱり潔く。
こーゆー時はウジグダ悩んでも答えは出ないから。
出ない所かヘタすりゃ深みに嵌まってヤバいから。
決して目の端に拳を握った宰相の姿を確認したからでは無い、無いったら無いのだ!!
よし、これは改めて考えよう。
そしてそう何度目かの先送りを決めた。
☆☆☆☆☆
「お前に任せておくと一向に進まないから我らが収める事にした。もう手を出すなよ?」
「幸いにも今回の件は醜聞にすらなり得ないし」
「せいぜいが愚かな夢を見た女が暴走した末の断罪劇って程度ですからね、かなり楽です」
「にしても男爵令嬢に過ぎない身の上で高望みがすぎるのでは無いか?あの狂女は」
「王妃なんて世間で言われてる程に楽でも華やかでも無いんですけどねぇ……」
「でしょ?高い社交能力と柔軟な政治思考と強い精神力を併せ持たねば侮られますのに。なのに世間一般での評判は朝から晩まで最高級品で着飾って三食美味しい食事をしている、ですのよ!贅沢すれば国庫は吹っ飛びますから私はキチンと予算内で遣り繰りしておりますのに!!ちゃんと収支報告書も毎月計上しておりますものを!!!」
「……いや、君の苦労はちゃんと理解しているから。まずは一先ず落ち着こう、な?」
あれ?
俺の意識が無い間に勝手に話が進んでる。
最後の方はほとんど関係ない話っぽいが。
相変わらず父上が母上の尻に敷かれている事だけは理解した。嬉しくも無い情報だけれども。
取り敢えず状況を整理したくて一緒に両脇に並んでた右のフィーズを見るが無常にも首を振られ、次に左のジョンソンに視線を向けたらブンと音が聞こえるほどの勢いで顔ごと逸らされた。拒否権など最初から無いのは分かっちゃいるけどお前らももう少し足掻け!と言いたくなる態度だ。
だがそんな想いを込めてジト目を向けると、逆に『じゃあお前がやれ』と言わんばかりに睨み返されて今度は此方がそっと目を逸らす羽目に。
自分に出来ない事を他人に押し付けるのは間違いなのだと学んだ瞬間だった。けど一つだけ、上が出来ない事を助けるのが部下の役目な気が……?
ってはい!もう二度とムチャぶりはしませんから殺気を向けるのは勘弁して下さいて!!
更に両親と宰相に両脇を固められ念押しされて、此方としては瞬きながらも頷くしか無い。
うん、今は取り敢えずね。
と、それを見破られたのか、改めて強い視線を三方から戴いたので今度は本気で頷いた、恐いッ!!
癒しが欲しいが今のこの場には居ない。
居た気がするのだが全員に力強く否定された。
可笑しいな?
ヴィクトリアに関する限り間違わない筈なのに。
首を傾げたついでに辺りを見回せば、宰相に肩を抑えられて表情の固まったフィーズが見えた。
あれは何かしらの無茶を振られた時の表情だな。
あまりに見覚えの有るそれにそっと視線を反らす。
見覚えが有って当然だ。
何せ自分がよくその表情を浮かべている顔が彼の執務室に有る鏡に写っているのを見るモノだから。
済まん、助けたくても自分には無理だから……。
傷心気味な俺を置き去りにして親世代の話し合いは続いている。少しでも殊勝に見せるべく俯いてはいるが、耳は限りなく大きくして頑張って彼らの声を拾う。心は痛むが今はそれ以上に大事な事。
「でも内容はともかく始まりに辿り着くまでに時間の掛かる歌劇も有るのだよな……」
「それが大団円で終わる保証が有れば笑って済ませられるから問題ないんですけどね……」
「演じる者も観てる者も揃って唖然呆然愕然なんて別の意味で笑いは取れます、かね……?」
可笑しい。
今回の収拾は自分等に任せろ!との勢いな両親とその腹心に確認を取ったらば、全く明後日な返事が纏めて戻って来て只今混乱中。
その発言含めて意味が不明にも程がある。
そもそも“劇”になぞらえたのは自分だ。
あの狂女が自身を物語の主人公と気取っている様を皮肉に絡めたつもりだったから。
けれども、発せられる彼らの言葉を聞く限り、それについて発言している風にはどうも思えない。
…………どう捉えても愚痴……だよな?
しかも俺に対する強烈なヤツ……?
「彼女を選んだから趣味は良い、筈……」
「ただ選んだ時期と経緯と手段が、ねぇ?」
「つまり変なのはやはり彼なのだと……」
ふと見ると保護者方が何か言いながら項垂れてる。
3人揃って同じ姿勢なのが妙に可笑しい。
笑えるが、でもそれを指摘したら怒られそうなので黙っておく事にした。あの鉄拳を日に何度も受けるのはゴメンだしいやそもそも受けたくないし?!




