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馬鹿息子という認識を一層強めたトップ3


斯々然々、云々かんぬん、喧々囂々、アレこれどうこう。ただし連々長々とは続かせず……。


アシュリフィスの姿をしていながら普段の彼女とは全く異なる雰囲気の、不思議な存在から一通りの話を聞いて頭の痛みを倍増させたのは王妃陛下。

自分の知らない息子の変態さを語られて、その評価を最底辺にまですげ直したのは国王陛下。

その評価にすかさず同意したのは宰相閣下。


おぉう、トップ3がお怒りですッ!?


「「「ゴメンなさい……」」」


と揃っての謝罪のお言葉まで戴きましたが、謝罪した方もされた方も併せてアレに関しては既に菩薩の如く悟っておりました、もう手遅れだと。

なのでもう真摯な謝罪でも諦めの色が強いですが。


「ホントに何故ああなってしまったのか……」


一層項垂れて萎びた葉物の様な王妃陛下。


「育てばまともになるかと思ったのに……」


溜め息が止まらず呼吸困難気味の国王陛下。


「暴走具合だけ見事な育ち具合とは……」


乱心のあまり少ない頭髪を掻き毟る宰相閣下。


部屋の空気は重く澱む一方。

尚、奥で黄昏から未だ戻らずな別3は放置。

とゆーよりは気にする余裕もございません。


「……で、ですね。息子は取り敢えず置いとくとしまして、陛下方は殿下がどのように対処するのかご存知だったのかを聞きたいのですが」


「済まんな、我々もあの馬鹿が自身で収拾を着けるからと任せてしまったのだよ。あんな馬鹿にそんな真似出来よう筈など無いのにな」


「ごめんなさいね、貴女……いえアシュリーが絡まなければまだ少しはまともだと信じてしまったばっかりに。でも馬鹿は馬鹿だったわね」


「よくよく考えれば姫君は十分にお絡みだったのですよね。だからこそ馬鹿は馬鹿だった訳で」


3人揃って『馬鹿』の単語のバーゲンセール。

アシュリフィスな彼女も遠慮ナシに頷いている。


しかし同時に困った。

収拾を着ける筈の馬鹿……もとい殿下は未だに魂が絶賛行方不明かつ意識不明の重体、もしかしたらな側近2人も以下同文。身体は元気そうだがそれでも当分は使い物にはならなさそう。


そっちの方角をなんとなしに眺め、つかれた溜め息の数がもう一つ増加したが誰も気付かず咎めず。

国王権限で一先ず舞踏会は強引解散させはしたが、後日の事情説明と再開催するか補償に回すかだけでも判断せねばと思えば頭の痛みが増す。


『狂女が一人、不遜な地位を望み暴走した』。


一言で表現するならばまさしくこれだろう。

前々から学園で度々問題を起こし、挙げ句には国の威信を掛けた舞踏会を丸潰れさせ、おまけに王族に対する無礼を含めた国家反逆罪をも追加されて現在地下牢に投獄されている自称『ヒロイン』。


国家反逆罪は一族郎党にも罰は及ぶ。

まぁ、舞踏会前の貴族調査で狂女の家族も調べられたがろくでも無い家だとの結果が既に出ている。

金だけは有り余っている様なので問題も無かろう。

……足りるかはまた別問題だが考慮には値しない。


「息子が収拾出来ないのであればそれこそ親の出番だろう。有能で無くてもせめてバランス良く平均値なら紙一重を嘆かずに済むのだが……」


国王陛下の愚痴は止まらず。

王妃陛下と宰相閣下は項垂れてその嘆きは根深い。

意外と聞き覚えの有る諺が有るのねぇと、つい別方向へと意識を飛ばしてしまうアシュリフィス。


国家の揺らいだ威信を取り戻す対策を練る以前に、このグダと化した中枢部分を立て直す策を講じた方が良いのでは無かろうか?などと、もし遠目から高みの見物を決め込む存在が居ればそう突っ込みたくなるであろうこの状況。


だが幸か不幸か、其処まで考えに至る者も居なかった為に突っ込みは不発に終わった。



☆☆☆☆☆



取り敢えず、今夜の舞踏会の後始末に関してはトップ3に押し付け……もとい収拾して下さる目処が立った。そうなれば残るは……。


「しかし……どーすんですか?アレ」


アシュリフィスの示す先には駄メンズ3名。

あれからかなりの時間が経ったが未だに復活の気配すら見せない。それ所か悪化してる?

探せばキノコでも生えてそうな程の湿り気具合だ。


王族の使用する部屋だけあって、華やかだが落ち着きある内装で置かれた家具も手の込んだ一流品。

その一角が何かヤバい状況に陥っている気がする。

一瞬、トップ3が彼女の言葉に揃ってそちらに視線を向けた後にまた揃って勢いよく反らした。


まぁあんな身内の情けない姿を見たいとは思わないわな……とアシュリフィスも納得の色。

しかし、先ほどの萎びた菜っ葉の王妃陛下は姿形が親子だけあってよく似ていた、とは言わない方が良いだろう。お互いの精神の安定のためにも。


「どうすると言われてもなぁ……」


「私としては見なかった事にしたいわ……」


溜め息をつかれる陛下ズ。

自分達の息子に対して酷くね?と思わなくも無いが、むしろ息子だからこそかも知れない。


「いやぁ、いざとなれば“アシュリー殿”が呼び掛ければ瞬時に復活なさるでしょう。頭の数発も殴れば嫌な記憶も消去されるやも知れませんしな」


自らの顎を撫でながらそう仰る宰相閣下は意外と冷静で居らした。口元には笑みも浮かんでいる。

いや、後半の台詞を聞く限りでは違うのか?!

しかし言った本人は至って真面目な口調。

その横に並んだ国王陛下も王妃陛下もこれまた揃って頷いておられるし。イイのか色々!?


(殿下なだけに対処も“電化”扱い?)


殴って直すS世代をよく知るアシュリフィス。

思わずもう一つの特徴まで発動させてしまった。

誰にも通じないのであくまで内心ででは有ったが。


「分かりました、アレに関しては彼女に任せるのが適任だと私も思いますから。それに普段も」


「あら、もう出現予定は無いのかしら?」


問題は山積みだが幸い時間もまだ有る。

別名現実逃避。だがソレは言うことなかれ。

なので一旦脇に置いた会話の流れになっていた。


そんな中で彼女が問われた今後についてが此方。

面白いコト大好きな妻のはしゃいだ声音に国王陛下が呆れた視線を向けたが本人は気にしてない。

尚、宰相閣下も同じ視線を王妃陛下に向けている。

だが気になるのも確かなので耳はしっかりと2人の会話に向いていた。黙ってはいたが。


「……勘弁して下さいな。割れ鍋に綴じ蓋って言葉が似合うカップルなんて早々に居ませんし、だからこそお似合いってな程度には波長が合うんです。わたしの綴じ蓋は少なくとも殿下ではありません。アシュリフィスだからこそでしょう」


「随分とピッタリな言い回しねぇ」


「割れているというよりは底抜けだとは思うが」


「正に身も蓋も底も無いですからな、色々」


溜め息と共に発したアシュリフィスの言葉に陛下ズと閣下が感心した様に頷かれている。

息子を割れ鍋扱いされてむしろ納得するのは親としてどうなのか?思わないでも無いが捨て置く。

対外的に完璧王子とか言われてたって身内から見ればポンコツの極み。そう、今みたいにね……。


「とにかく今はまだ必要性有りますから居ますよ。その後はまぁ『彼女』次第かな?まだ『わたし』を知らないんですから」


アシュリフィスに関する一応の結論は出た。

ので全員でチラリと何度目かの視線を飛ばす。


萎びた菜っ葉を肥やしに菌類が満員御礼な某所。

いつまでも、仮にも一国のお城の一角をキノコ畑にする訳にはいかないので早急な対処は必要だ。

けれどもその“早急な対処”はある意味一瞬で済むので全体として急かす要素は無いと。矛盾?


「此処だけ板塀で囲おうかしら……」


「いっそ石垣にしてやろうか……」


「やるなら場所を変えて貰わねば……」


今日も王国トップ3の嘆きは深くキレが有った。


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