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閑話・何時からだ?って聞かれても困るなぁ……


気付いたら意識が在ったとしか答えようが無い。


死んだ瞬間は覚えて無いけど、だからってそれまでどうしてたかってのを敢えて表現するなら、寝起きな意識がボンヤリとしてて徐々にハッキリしたらこんなんでした、ってカンジだ?


でも何にも出来なかったからね、実際。

それこそただ厚い透明の枠越しに映像を眺めてる、その表現が一番ピッタリだと思うの。

テレビって言わなかったのは、アシュリフィスと呼ばれている少女の視界を共有した形だったから。

彼女の見ている視界がそのまま“私”の視界だ。


でもいやもうホントに見てるだけ。


アシュリフィスそのものの意識も在るし、そっちが主人格だと分かるのは直ぐに理解出来た。

自分では動きたくても動けないし話せないし。

一応ね、頑張ってはみたんだけどすぐ諦めた。

どう頑張っても無理だったから当然だよねぇ。


自分の知らない常識と日常の世界。

自分がかつて生きてた世界には、『あり得ないけどあり得たらイイな♡』願望から産み出された、色んな非日常が溢れたエンターテイメントが有った。


そりゃもう数多、選び放題な山盛り状態で。

だからこそ直ぐに切り換えられたし理解もした。

納得出来たかは……また別問題だったけど。


ちなみにそう、『異世界転生』というヤツだ。

ただし“私”の場合は憑依タイプだと思うが。

眠い目を擦ってまで読んだ甲斐が有ったよ!?

取り敢えず~ってあちこち読み漁ったからねー、俗に言う乱読人間でしたから、自分。


それが今に活きている、知識だけ。

……って元の身体は死んでますけどね?!

……今も自分では全く動けてませんし!?


ぶうぶう思いながらも、それでも絶望しなかった自分ってもしかしたらかなり図太いのかも?


そんな日々を過ごし出してから暫く、アシュリフィスと呼ばれている5歳の貴族の少女に自分が宿っているのだとか色々知って、見るしか出来ないならせめての退屈しのぎに観察を!と思い立ち、周囲に目を向けてから気付いたら事が幾つか。


その一つがコレ。

彼女と接するのが一番多いのは両親、な筈。

だけど実際には違った。

イケメンなんて表現が陳腐に感じる程に整った顔をした彼女より少し歳上の少年、通称『殿下』。

さすがお嬢様な彼女、5歳で婚約者が居た。


『殿下』はそのままこの国の『王太子殿下』。

ひぇえ!それって未来の国王陛下じゃんか!?

じゃあアシュリフィスは未来の王妃陛下なの?

身分なんて無かった世界の住人でも知っているロイヤルセレブ。凄い存在だったんだね、貴女。


でもこの『殿下』、なんか可笑しい……。

そう気付くのはそりゃもう速かったと思う。

その一つを軽く紹介すると……。


アシュリフィスは婚約者に選ばれてから数日に一度の割合で城へ王太子妃教育を受けに行く。


と、馬車で城に着いたらまず殿下のお出迎え。

エスコートされて教師の待つ部屋へと向かう。

授業が終わるとちょうどまた殿下のお出迎え。

中庭で婚約者の触れ合いという名のお茶会を。

帰るのに何故か殿下専用の馬車で彼も同乗し。

彼女を屋敷まで送って帰って行く、これ必ず。


で、彼女が城へと行かない日に関してだが。

毎日とまではいかないが殿下が屋敷に来訪し。

一緒に中庭を散歩したり。

一緒に部屋で読書したり。

一緒に部屋で会話したり。

…………一緒に居ない時って有るのか?状態。


ここまではまぁでも普通?だった。

ドン引きのトドメはそりゃあもう強烈な出来事。

あの野郎、まだ幼いから(六歳位かな?)必要だとしている週に一度のアシュリフィスのお昼寝に一緒に参加しようとしやがりまして!?


彼女と5歳違いの殿下はすでに思春期入った少年。

抱き上げてベッドにアシュリフィスを寝かせ……まではまだ微笑ましい光景さ、そりゃ。


令嬢の部屋に身内以外の男性が入るのはあまり推奨は出来んが一応婚約者だし彼女もまだ幼い。

ついでにお嬢様だから侍女は必ず付き添うしね。

だから厳密には2人きりでは無いのよ、一応。

ギリアウトかセーフか微妙ではあるんだけど。


で、寝かせてお布団を彼女に掛けた後に大問題。

反対側を捲ってイソイソと潜り込もうとしたの。

ナニやってんだよ、この野郎!と叫ぶよね?!

実際には叫んだのは侍女さんだったけどさ!?

台詞だって違うけど今気にするのはそこじゃナイ。


もう一度言う、アシュリフィスはお嬢様。

5歳を過ぎたら母親とだって別々に寝るのが普通。

寝付くまではベッド脇に侍女が着くけど寝たら退室するから基本的に一人寝は当たり前なご身分。

しかもコイツはまだ婚約者であって夫では無い。

アシュリフィスのベッドに入る資格まだナシ!!


彼女は気にしてなかったのが不思議だったけど、見てるしか無いとはいえこっちはそれ所では無く。

混乱した侍女が悲鳴を上げて、廊下に待機していた側近がすわ一大事!と飛び込んで来て殿下を速やかに回収しその場は事なきを得た。


いや、マジ貞操の危機だっ……た?

さすがにそれは違う?でもねぇ……。


彼女が婚約者になった経緯からしても異常だし。

王太子殿下のくせに国中の貴族の家に身分隠して極秘訪問しての婚約者捜しってナニさ?!

で、彼女の顔見た途端に拉致して連れ去って速攻で家族に紹介ってまじナニしてんのさ!?

拉致・誘拐・ロリコンの三連コンボかいッ!!


あれほど身体の自由が利かなかった事を悔しく思った事は無いよ、“私”。思いの丈を絶叫した

のに出来ない現実に打ちのめされたわぁ……。


でも実は最大の驚愕はコレでは無かったりする。

話は変わりますが、『あざとさ』ご存知?

“私”が生きてたR時代にはそこかしこに生息しておりました、別名『養殖天然』の代名詞。

素の天然なんてもう絶滅危惧種、居てもそれこそイコールおバカってキャラだったしね?!


けど居たんですよね実は、素で天然な子!!

それがアシュリフィスという少女でした!!

おバカでも無く、鈍いけど聡明、天真爛漫。


あまりにも純真なのが逆に心配だったけど、その辺りはさすがにお嬢様、ちゃんと娘の危うさに気が付いて危惧した両親が信頼出来る補佐役の侍女を配置してたから無問題。ついでに例の異常な婚約者の殿下も対策はバッチリ施してたしね。

それだけは感謝・評価出来ますです、ハイ。


いや、それにしてもやっぱり殿下のご両親と保護者の皆様も、アレがヤバいと理解しているようで何よりです。早く何とかして下さい!!


で、“私”なりに出した結論なのだが。

アシュリフィスは天真爛漫、純真無垢。

周囲の大人による完全防御で、身近な人間は全て信頼出来る存在で、その中でも婚約者である殿下への信頼度数は抜群ピカイチ!無意識無条件の全面的信頼を寄せる相手なのよ、これホント。


だから幼い頃から一緒に居る殿下を無邪気に深海並みに深ぁく信頼しているのだ。雛鳥の刷り込みに近い?などと“私”は思ってるが。

ただ、何故か結婚観に関してのみ現実派なのだ。それも見事なくらい特化している。家同士の政略結婚だと信じて憚らない、凄ぇ不思議。


彼女の意識とゆーか心の内部、感じたくなくてもある程度は解るし覗こうと思えば覗けて暴こうと思えば暴ける。“私”は“私”だけどアシュリフィスでも在るからね、実際のトコ。

やらないしやりたくも無いからやらんけど。


……と、ついでに“私”の事ってのを少~し。


意識と同様にアシュリフィスの知識は“私”の知識、彼女が新たに学んだ知識も全て“私”は記憶している。彼女の方は知らないけど。

何時の頃からか、彼女との結びつきが一層強まった気がして薄ら疑問を感じてた。そしてある晩、アシュリフィスが寝てる時にちょっとと試してみたら出来てしまった身体操作!?


彼女が8歳になった頃だった。


考えましたよ、そりゃ必死に。

“私”が“私”だと認識始めたのは5歳の頃。

でも当時は“私”ななぁ~んも出来なかった。

それは間違いない、何度も試して確認したから。

それが3年経って急に出来るようになるなんて普通ならあり得ないと思ったからね。


何度か試してみた、やっぱり出来た。

頭を捻った、前世と今世合わせて断トツに。


観察を始めて3年位は経ってたから日々の記憶と自身の感覚を思い出して……ハタと気が付いた。

そー言えばアシュリフィスには5歳の婚約者内定の時ミドルネームが殿下から与えられてたなぁ、と。

あの乙女ゲーの設定とはもうかけ離れているなーとは前から思ってたけど一番の違いはそれだった。


王族の特性、『ミドルネーム』。

これが『ヒロイン』の力を高め、身分は低いが婚約者として相応しいと国民や貴族から認められたって設定裏話にも有った気がする、確か?


殿下がアシュリフィスをミドルネームで呼ぶ度に力が増してた……って考えればまぁ納得も行く。

何せ殿下のミドルネームから派生した名なんだもの。しかも普段から呼ぶし。甘ぁくね!?


でも何故かつい最近、アシュリフィスが拒否したお陰かせいか殿下は彼女を『姫』って呼ぶようになった。拒否した理由は秘密にされてるが、アシュリフィスなりに彼女が殿下をミドルネームで呼ぶ度に殿下が変になってるって気付いたからかも。


顔を赤くして息も荒くて立ってるのもやっと状態。

本人は何でも無い!って言い張ってたけど、前世で成人年齢達してた身としては心当たりあるわ~。

思春期男子特有の興奮具合だと思うのよ、アレ。


危機管理能力意外と高いのよね、アシュリフィス。

我が身の危険察して止めたんだろうね、凄いわー。


力が与えられといてなんだけど“私”もそれが正解だと思った。その頃には“私”の力の具合に関しては手遅れ感満載だったけどそれとこれは別。で、出ようと思えば何時でも自らアシュリフィスの身体を自由に出来る様になった“私”だけど。


……けど普段は止めようとも決意した、早々に。


だって考えてもみてよ?

“私”はアシュリフィスの知識は持っているけどそれ以外では別人と言っても良い。性格は元の世界のままの庶民感覚、価値観もこの世界からかけ離れ過ぎている。特に身分の上下なんて“私”にとっては正に異世界常識でついて行けない代物。

色んな意味で『アシュリフィス』は荷が重い!!


まぁ一番の理由は言わずと知れた殿下だけど。

あんなクソ重い、甘ったるくて綺羅綺羅しいオトコは趣味じゃないし手に余る。彼女と男性の好みが違うだけでも“私”とアシュリフィスが別人格なんだと思えるよね、良かったわ~。

ん?だって自分は悪趣味じゃないって事だし。


……あ、でもアシュリフィスも好み云々以前の段階な気はするけど。何せ政略前提全面肯定派。


それに動けても、『アシュリフィス』としてしか生きられないのならせっかくの異世界転生も楽しくは無いだろう。彼女自身が悪い訳じゃ無いけど、身分も立場もそもそもが“私”向きじゃ無い。

ならば内側で大人しくしているのが一番だと思う。


そうやって“私”がアシュリフィスと『同居?』するようになって10年チョイ、身体が動かせると判明はしたけど観察者に徹して8年弱経った。


何て言ったか?あの乙女ゲーの名前。

正直あんまり覚えて無いんだよね、ダサいから。

で、大体あのテのオープニングは学園入学の前後。

どーなんのかなぁ?と思ってはいたけど心配する様な動きは無いから油断していた1ヶ月後。

……突撃して来たよね、あの自称『ヒロイン』。


何がしたいのか全く、全くっ理解出来んかった。

その後もナンか有ったみたいだけど、あれよあれよと知らない間に自滅の道を歩んでいたらしい御花畑ヒロインタイプの例の少女。トドメを刺したかったのか泳がせていたみたいだった殿下含めて。


パーティーが断罪の場の定番だとは知ってたけど。

でもさー、ウダウダして全然話が進まない。

もう一度言いましょう。

アンタら結局ナニをどうしたかったのさ!?と。


国王陛下と王妃陛下と宰相閣下、お三方が思ったよりお早く登場してくれてホント助かりました。

このアホらしい騒ぎを早期収拾させたかったので予定外でしたが敢えて口を出す事にした“私”。


子供が収拾出来ないなら頼りになりそうな大人にまかせるのが一番だと前に誰か言ってた、と思う。


“私”が瞬時に出れたのは良いけどただ一つ。

殿下がアシュリフィスを拘束してたせいで振り払うのに余計な時間が掛かったのが一寸ね……。


この後“私”自身の説明どーしよーかな?なんて一切考えずに取り敢えず口出ししてしまったし。

あ、アシュリフィスに拒否された事実に打ちのめされて使い物にならない貴殿方の息子をどう復活させるかも考えないといけないのでしょうか?


……なのでホントお願い致します陛下方!!


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