表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/51

何故か事情聴取の相手はトップ3


「んー?“私”にも分からないですねぇ」


あまりにも静まり返った会場。

壇上で固まったままの我が子。


一応段取りは整えてあり、取り敢えず王太子殿下に状況を任せていた国王・王妃・宰相のトップ3。

予定されていた時間になったので入場してみれば、まるで自分達が理解出来ない空気が漂っていて。


何故か1人階段の下で腕組みしているアシュリフィスに気付き質問したのだが、返ってきた答えも態度も含めてまるで普段からはかけ離れたその姿に、仕方なく会場内の人間に解散を告げて退席させ、ついでに固まった殿下を未だ混乱中の側近2人と共に回収し、人払いした上で用意した客室に収まった。


唯一、正気に思えた彼女に事情聴取を試みはしたものの、やはりアシュリフィスは普段の彼らの知る彼女では無かった。ついでに質問の答えがコレ。


…………これはどーすべぇか?


思わず顔を見合せ、視線でそう会話してしまった夫婦+幼馴染みでもあるトップ3。

自然にそう会話してしまう辺り仲の良さは歴然だ。


まぁ、それはともかく。


ちなみにだが、床に押さえ付けられていた物体はとっくに地下牢へと連行されている。ただの騒動だったら貴族用の牢屋で済んだのだが、罪状に『国家反逆罪』が加わったので一般人用の牢屋。

その扱いは……まぁ推して知るべし、だろう。


ただし、「説明位なら出来る」とその後にアシュリフィスが続けたので場所を移動して←今ココ。


王妃陛下が部屋の隅を見る。

ある程度広い室内。

自分達がアシュリフィスと向かい合わせに座るソファーのセットの他にも色々と有る。

その一つに視線を向ければ溜め息が止まらない。


…………固まった我が子は復活の気配を見せず。


説明はおろか、息をしているのかすら疑わしい真っ白な顔で、似た様な状況の側近と3人で仲良く横並びでソファーに座らされてそのまま。

結構な時間は経っているのでいい加減復活して欲しいがそんな気配すら見せない我が子に頭痛が増す。


そうして今度は正面に視線を移す。

痛む頭はそのままだがこの際は無視を決め込んだ。


目の前には腰掛けて茶器を傾けるアシュリフィス。

その所作は少し荒いが優雅さは残しているし基本的な部分に本来の彼女を感じられる。

その事に少しだけ安心した。


何せ5歳で我が子に拉致……いや見出だされ、10年間王太子妃教育を受けたのだ。最近では王妃教育も加わったが長年身体に叩き込まれた礼儀作法はそう簡単には消えないのだと実感出来た。


「……ただ、あの自称『ヒロイン』の一方通行を誰かが止めなければ混乱は広がるばかりだし、でも事情を知らない同士で会話したって時間の無駄でしかないし。実際に殿下と女の会話……会話なのかなアレ?通じ合って無いから聞いててイライラするだけで。だからもう!って“私”が出た感じ?」


「まぁよく分からないがそれは助かった。いつも以上にポンコツに成り下がったアレに事情を聞くなど無謀以外の何物でも無いからな」


さすが国王陛下、我が子にすら容赦ない。

アレとは部屋の隅の、先程王妃が見ていたモノだろう。陛下も見たが直ぐに視線を反らしたし。


「あー……、まぁ全体の詳細はいずれ必ずしますから。で、“私”は……うーん何と説明すべきでしょうかね?この世界の方々が知るアシュリフィスとは別意識な存在、と言うのが一番近いのかと思います、はい。分かるかな?」


「別意識、ですか?」


「別人格と呼んだ方が正しいかも?ただし“私”はアシュリフィスを良く知っていますがアシュリフィス自身は“私”を知りません。普段は彼女の内側でただ外を眺めているだけですから。こんな状況でも無ければ一生出て来ませんでしたよ全く……」


宰相の問いに肩を竦めるアシュリフィス。

確かに彼らの知る彼女はこんな動作すらしない。

見える姿も答える声も自分達の記憶と同じなのに、けれども動作も態度も表情も全く異なるお陰かせいかむしろそれを自然に受け止められた。

もし別の状況だったら疑ったろう、そりゃ色々と。


「“私“が”私”に気付いたのは、言いたく無いけど貴方達の息子さんが原因ちゃ原因なんですよね、実は。“私”もですけど自称『ヒロイン』の知る世界観にはアシュリフィスに与えられたミドルネームは別でしたから。実際だと後に息子さんに見出だされた本来の『ヒロイン』に与えられるモノなんですよね、その世界ならばですが」


「…………へ?」


「仮想の世界を実際の世界に見立てて遊べる技術が在る世界でしてねぇ。それに関しては常識とか丸無視の、ご都合主義満載な遊びの一種だと知って頂ければ充分です。そーゆー遊びがあると認識して貰った上で念のためお伺いしますが、一応それなりの良い性格のお嬢様さんですが身分は低位貴族で数年前まで平民だった方を婚約者としたいとある日息子さんが言ったらどうなさいますか?皆様」


「……まずは息子の正気を疑うな」


「次にその女性を疑って調べるでしょ」


「どちらにせよ反対一択ですな我々は」


「ですよねー。でもその遊びでは無いんですよそんな状況は一切。むしろ諸手を挙げての大歓迎」


「あー、だから常識丸無視のご都合主義満載だと」


「ですです」


何だかんだと言ってる割にはアシュリフィスの別人格の説明は解りやすい。元々聡明なのだろう。

その軽い口調と態度も本来ならいただけない筈だがあまり嫌悪感を感じないから不思議だった。


「で、……その息子が原因とは?」


「おそらくですがこの世界の王族のミドルネームには意味が在ると『ストーリー』、つまり話の本筋に意味を持たせているのが原因です。選ばれた一族の存続に関わる重大要素ですからね」


「……本来なら『ひろいん』が与えられるミドルネームのせいで貴女が力を付けてしまった?」


「理解が早くて助かります、宰相閣下。偶然か必然か、この世界の神の思し召しか、それとも悪魔……神とは逆の存在の悪戯か。いずれにせよ“私”が意識を保てるだけの力を得てしまったと」


ついでにあんなにヤバいモノが出来上がるとは……との彼女の呟きに、それが息子の事だと察した国王と王妃は小さく頭を下げた。

確かに見ていて寒気すら催すのはヤバいモノだと。

一番近くで見ていただけに直ぐに察したのだろう。


本当によくアシュリフィスは耐えられたモノだ。

……いや、よく気付かなかったモノだと思う。

ちなみに別人格の話では、それこそがアシュリフィスのそら恐ろしい、ゲフンゲフン、天真爛漫で愛らしい天然性質なのだとか。イイのか?


「あーまぁただ……、確かにアシュリフィス、彼女の意識を簡単に乗っ取れる程度の力はありますけど、“私”はこの騒ぎが終息したら引っ込むつもり満々ですのでご心配なく」


そんな中で今後の事を聞かれ、淡々とそんな事を言い出す別人格さん。あまりにもあっさりしたその様子にトップ3は疑問を持ったが、別人格さんからの続く言葉には納得するしか無かった。


「皆様からの事情聴取には応じますからその間はちゃんと存在しますけど、その後はアシュリフィスは本来の彼女に戻ります。……耐えられませんからね~あんな日常はその、イロイロと……」


……実は後半部分が彼女の本音だろうとトップ3は揃って思ったが全員口に出すのは止めた。

間近でその光景を目撃している身としては、ましてや色々とそこからの流れ弾を被る被害者としても同感はしても反対など出来よう筈も無い。


あんなのに耐えられるのはアシュリフィスのみであろう。身内でも遠慮したいレベルなのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ