悲劇か喜劇か、三文芝居か茶番劇か
かなり間が空いてしまいましたm(_ _)m
一時期此方に力を入れていましたが、本来は別の方の活動が主な為にそちらへと戻っておりました。気分屋気質なのでバランスって難しいです……( ´;゜;∀;゜;)
ご愛顧いただいている方々には篤く御礼を申し上げますm(_ _)mm(_ _)m
この国の王族は世界でも特別な存在だ。
故にその名は特に厳重な管理が成されている。
当人が“許可”した時にのみその対象者が名を呼べるという、『言霊』と積み重ねた“誓約”に縛られて代々受け継がれた特別な王家、それがこの国。
王族にのみ与えられるセカンドネームもその一つ。
ちなみに子供は親から、そして嫁ぐと決められた婚約者は確定した時点で未来の配偶者から名を与えられる。……筈なのだがこの時ばかりは例外が発生した。ある家に身分を隠して訪問した当時10歳の王太子殿下が、いきなり両親の元に現れた際に幼女を抱いていたのは有名な話だが。
実はこの後の事は一部にしか知られていない。
まぁ王家の根幹に関わる問題なので極秘とされた。
何せこの息子、『私の姫を見つけました!』と両親に向かって言った際にはもう既に彼女にミドルネームを与えていたのだ。ただの報告ならば少年の微笑ましい話で済んだのだが……。
国王陛下が第1王子に与えたミドルネームは『ヴィクトリアス』、あるいは『ヴィクトル』。
後者はまぁ愛称の様なモノだ。
そして王太子殿下が“私の姫”とまで呼んだ彼女に分かち合えた名は『ヴィクトリア』である。
実は響きが似ていれば似ている程に誓約や重みが増すのだが王太子殿下は一切合切躊躇なさらず。
名を分け与える行為は己の魂を分かち合うモノ。
特別な王家の特殊なモノだけあって、一度定めれば取り消す事はそう容易では無いので両親は頭を抱えた。尚、本人はケロリとしていたそう。
それどころか、『自分の魂の片割れたる存在に巡り逢えたのです!他の誰かに奪われたら責任取って貰えるのですか?』と両親に訴えたとか。
訴えられた彼の両親は目を点にしていたとか。
…………その気持ちは痛い程に良く分かる。
で、与えてしまったモノは仕方がない。
まだ5歳とはいえ、王太子殿下に選ばれた相手も国内有数の高位貴族のご令嬢。血筋は勿論の事、尚且つ下手な権力争いに熱心な家の出身でも無い。
むしろ王太子殿下の婚約者に選ばれた事を知った途端に彼女の父親母親は二人揃って腰を抜かしたとか、しどろもどろになりながらも懸命に辞退しようとしたとか、ともかく権力から遠ざかりたいタイプの方々だったとかで宰相閣下が感心なさったとか。
結果、王家からすら諸手を挙げての大歓迎。
経緯はアレだが蓋を開けてみれば上々に収まったのでまぁ良かろう!と無事相成った。
……ちなみにこの続報を聞いたお二方はぶっ倒れて一週間ほど寝込まれたそうで、御愁傷様。
☆☆☆☆☆
「……え?もしかして言えないの、か?!」
耳障りこの上ない意味不明な金切り声が会場に響き渡って暫く、誰かの呟きが静かな空間にポツリと落ちた。王太子殿下が許可を出してからこの方、会場のほぼ全員が声には出さずに一度は口の中でフルネームを呟いては驚愕したというのに?!
基本的にこの国の貴族ですら王家の方々の名を呼べる機会はそうは無い。無条件に機会が与えられるのはその王族の婚姻時と戴冠式の時位だろうか?
だからと言ってその名を知らない訳でも無い。
それがこの国に於ける貴族の常識の様なモノであり5歳の子供ですら当たり前の認識なのだ。
「…………言えないのであればむしろ貴様はこの国にすら認められて居ない、という事なのでは無いか?まぁ私にはどうでも良いが」
「嘘よッ!ウソっ!!だってあたしはヒロインでこの世界はアリィのモノで男達だって全員があたしに跪いて愛を乞うのよ!!そう決まって……」
「頼まれても金を積まれても貴様に愛を乞いたいなどとは露とも思わん。馬鹿にするな」
「身も蓋も無い言い方なさいますね、殿下。まぁ私も誠心誠意で同感しますけれども」
より耳障りな金切り声に殿下が冷たく吐き棄て、ジョンソンが同意の声を上げれば、同時に会場の彼方此方で男性陣が全力で首を縦に振っていた。
確かに見た目は庇護欲そそる可憐さが際立つ少女だが中身がアレではとてもイタだけない……とその顔には書いてあったかも知れない。
どちらにせよ、この狂っているとしか思えない女の妄言を信じる者などこの場には誰も居ない。
向けられる皆の視線は男女問わず一様に冷たい。
本筋が始まるまでに時間を要する事もある。
話全てが大団円で終わる保証もまるで無い。
それが『劇』たるモノの本質だろうか?
そして今回に関しての終焉や如何に……?!
☆☆☆☆☆
(何処ぞかの誰かの呟き「終わるの?コレ……」)
☆☆☆☆☆
『世界が認めていない』←ココ重要!
アリェッティは自身をこの世界でのヒロインだと声を大にしてほざいているが、むしろ世界の法則となっているこの国の王家の特性に反応しなかった。
『それは正に彼女は世界に認められてはいない『異物』であるという事では無かろうか?』と。
さて、王太子殿下の言い分は正しいのだろうか?




