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どんな劇にも幕開けと終幕とがある

私事ですが、ちょっと北陸能登へ2泊3日で旅行へと行って参りました(^-^)/


荒れてない夏の日本海……。

特に和倉温泉の辺りは内海だからか波が殆どたっていない穏やかさ具合でして……。


別にイメージ通りじゃない!?と怒るつもりはありませんけど、つい( ´;゜;∀;゜;)な顔をしてしまったのは許して欲しいです(←誰に?)。



「王太子殿下、会場への移動のお時間です」


妙にしゃこちばった侍従が殿下の元へと来た。

その硬さにジョンソンは何と無ぁく薄すらと事情を察知はしたものの、だからと言って彼らの職責を止めるつもりも無いので黙っていた。


そう、本来ならばあり得ない話なのだ。


扉前を近衛が固めているとはいえ、ジョンソンとフィーズが一時中座した時にこの部屋には殿下とお嬢様しか居られなかった。年頃の男女が二人きり~云々では無い。そちらは居合わせた関係者が揃って口を噤めば良いだけの話。


王太子殿下は王位継承権第一位。

お嬢様は彼の婚約者で準王族。


国内トップ3に次ぐ尊い御身が揃う場としては普通ならばあり得ない。数多くの侍従や侍女がわんさか控えていても可笑しく無い場なのだ。


にも関わらず、この部屋が使われ出した当初から控えていたのはジョンソンとフィーズのみ。

理由は簡単。

忠心篤い殿下付き侍従達ですら嫌がった様に、お嬢様とご一緒の時の王太子殿下に付き添える者がこの二人しか居ない為とまぁちょっと呆れる理由。


一応断りを入れておくと、この部屋は準王族であるお嬢様の為に用意された控え室。王太子殿下専用の控え室は別にある。本来ならば。


けれども殿下は最初から自分の控え室として堂々とこの部屋に居るのでお嬢様は疑問にすら思わず、訂正すべき側近も護衛もその役目を放棄したが為に二人一緒にこの場にいたのだ。


貞操に関しては度外視されている。

確かに二人ともお年頃だし殿下は大人だけど、変に律儀で責任感のお強い殿下は鉄壁の理性をお持ちでいらっしゃった。なので意外にも二人きりになったとしても間違いが起こる筈も無し……と信頼されている。(←ちょい失礼?)


手を繋ぐ、肩を抱く、腰に手を触れる、などの行為も、婚約者同士なら問題ない触れ合いだし。

お膝抱っこでののあ~ん♡まで行くと問題だが。


いや、無論ジョンソンとフィーズも喜んでその場に同席して居る訳では無い。むしろ苦行なので立候補さえして貰えれば諸手を挙げて譲り渡す気満々ですら居る。けれどもそんな強者は未だに現れずに時だけが虚しく過ぎて行き今に至るのだ。


「よし、行くか。どうせ行き先も出番もそう変わらない。姫君、お手をどうぞ」


「有難うございます、殿下」


先に立ち上がった殿下が恭しくお嬢様へとエスコートの手を差し伸べれば、幼い頃からごく当たり前に行われていたお嬢様は素直にその手を取る。


今日の王太子殿下は何時にも増して麗しい。

黒檀の髪はさらさらで艶やか、強烈な印象を与える光を宿す金の瞳も煮詰めた蜂蜜の如く甘やか。

いや、実際に普段よりも柔らかな印象を醸し出す。


(……あぁ、婚姻に1歩近づく大事な日だし)


(そりゃ上機嫌で可笑しく無いわ確かに……)


予想外な柔和な主人に恐れおののく侍従とは裏腹に、瞬時にその内心を察したジョンソンがフィーズと目で会話した。意外に単純な上司に呆れ気味。


この国では成人年齢を迎えれば婚姻は可能だ。

だが、学園に通って居る年齢なのも相まってか大抵の貴族は卒業後に婚姻するのが通例。時たま就学中に出来ちゃって途中休学する女子生徒も現れるが基本的には皆様通例に従う。王太子殿下の場合は特に保護者様方に説得されてこうなった。


某側近によれば、姫君の年齢が適齢期に達した時点で婚姻届のサインを保護者に強要しようとしたおバカ様がいらっしゃったとか居なかったとか。

その際の説得は過去最悪だったとかナンとか。

…………気苦労の絶えない保護者様方で(合掌)。



☆☆☆☆☆



今日はわたくしにとって晴れの日に当たります。

やはり誕生日とはまた違う感慨が身体の奥底から沸き上がってまいりました。国に祝福された成人の儀ですもの。当然と言えば当然なのでしょう。


ちなみに首から胸元には、歴代王室の方々のデビュタントを飾った由緒あるネックレス……のそっくりさん(宰相談)が燦然と輝きを放っておりまして。


もうこの場まで来ましたら、本物だろうとそっくりさんだろうと気にしても仕方ありませんわね。

わたくしを見て微笑む殿下と対面致しましたらそう思えてしまいましたから不思議なものです。


こうして殿下に夜会でエスコートしていただくのも幾度目になるでしょうか?5歳で婚約者となってからですからもう数えきれませんわね……。

わたくしの真横目線ですと殿下の肩が見えます。

背が高いですのでお顔を見上げる形になるのです。


会場までの廊下をエスコートされながら殿下をついちらりと見上げてしまいました。いつも柔和な笑みを浮かべていらっしゃる殿下、今日もまた一段と麗しい笑顔ですわ。余程喜ばしい事がおありだったのでしょうか?気になりますわね……。



☆☆☆☆☆



これから会場で何が起こるかも露知らず。

(ほら、誰も教えて無いから……)

殿下が『ある不穏な理由』から自分の成人を自分以上に喜んでいる事も悟れず。

(ほら、激鈍の極致にいるから……)

ひたすら首を傾げてエスコートを受けるお嬢様。


とうとう舞台は開幕する!!……のか?


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