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脚本を書く者、それに踊らされる者

珍しくジャスト文字数となりました(^^)d


会場がちょっとした?カオスに陥っている事など予想だにしていない当事者その1である王太子殿下は、自分の渾身の作品を身に付けて着飾らせた婚約者の姿にご満悦の真っ最中であった。


まぁつまりはいつも通りだったという訳で。


で、報告を聞いた途端、そのご機嫌は急降下の一途を辿り、挙げ句には地中深くまで潜って行ったがその行き先が分かる者は誰も居ない。きっと俗に言う所の地獄へと一直線かと……。


「チッ全く……。愚者が踊り狂うのは勝手だが他人に迷惑を掛けてまで踊るなど最低だな」


「愚者でも踊らされるに至った元凶にだけは言われたくは無いでしょうし言い分も有るかと。で、どうなさいます?放置しますか?」


進捗の確認との名目で廊下で側近のジョンソンから会場での報告を受けた王太子殿下。途端に廊下一帯が極寒の雪山へと変貌を遂げた。あくまでも雰囲気だけだが、比較的南に位置して冬でも雪など滅多に降らない王城でのある意味珍事か?


そのご機嫌を損ねた所以が婚約者であるお嬢様の艶姿の堪能を邪魔されたからだと知っている為に、恐怖よりも呆れと軽蔑の割合が高いので特に威疎む事も無く生温い視線を向けるだけだ。


暴走の原因が限定され、かつ頻繁には起き……はするが迷惑掛かる相手も限定されるので許容されている。それに目を瞑って余る程度には本人が優秀なのも許されている要因だろう。


……迷惑を掛けられる側としては全力で反論したいだろうがそれはまた別の機会に。


自身が企画し演出までこなしておいてまるで他人事の如く仰る王太子殿下。年に数回催される王家主催の夜会の中でも格式高い、成人する令息令嬢方のデビュタントを兼ねたこの舞踏会。


それが至上稀に見る阿鼻叫喚の大惨事が待ち受けている事などいくら優秀な王太子殿下にも予測は付かなかった。まぁそれだけ関わった非常識によって被害が増大された結果なのだが。


収拾着くのか?イロイロと?!



☆☆☆☆☆



で、所変わって此方はその舞台会場。


珍妙な者を見る視線を会場中の人間から浴びても尚不思議にすら思わない、神経が太いのか無いのか是非とも検証したくなる令嬢アリエッティ。


まだ王族用に設えられた壇上に彼らは入場していない。まずはデビュタントする者の名が呼ばれ、全員が揃った後に入場し祝福の言葉を掛けるからだ。つまりは会場奥に有る壇上のその正面に並ぶ事となるのだが……。


歩き難いからとドレスを鷲掴み、ドスドスと足音を立てんばかりにのし歩いて行く。下に敷かれた分厚い絨毯がその音を吸収しているのがせめてもの救いか?潜められた眉間の皺が深くなった方々の割合が一気に増したが、ちなみにコレはまだ序章に過ぎず、次の彼女の更なる珍妙な行動にとうとう周囲の表情は嫌悪感で塗り潰された。


貴族必須の教養作法の最たるは表情を面に出さない事だが、そんな常識すらお構い無しにしてしまうぶっ飛び行為が目前で成されているのだから。


王族専用の雛壇の下の正面付近。

デビュタントの子息令嬢はそこへと並ぶ。

毎年人数はそこそこ居るので一列になる事は稀、なので“呼ばれた順に”大体二列に、下位貴族は後ろに高位貴族は前に。これも暗黙の常識。


さて、アリエッティ嬢。

いの一番に呼ばれて向かった先まではまぁ良い。

再び会場を凍り付かせる行動を行ったのはその後。

何と、真ん中に堂々と止まったのだ!!


会場中の人間は勿論の事、入場する次の令嬢を呼ぶべく扉横で息を吸い込んだ門番たる彼も、呼ばれる事を察して扉の前まで歩み寄っていたその令嬢も例外無く固まった。特にその令嬢にとっては『自分の並び場所』が定まらない羽目に陥ったのだから。


泣きそうな彼女を見て勇気を振り絞った門番の彼。

非常時だからと自身に言い聞かせて一応呼ぶのを中断し、半分泣きの入った令嬢に隅へと向かうよう小声で耳打ちしてから所定の位置へと戻り彼女の名を呼び上げて行くように目で促した。


門番のファインプレーにより、勇気付けられ気を取り直した令嬢が入場したのを皮切りに、取り敢えず再開された令息令嬢方のご入場。


後にこの出来事で好意を抱いた彼の令嬢が、門番の彼と愛を育む後日談が生まれるが今現状でそれを予知出来る者など居ないので流そう。


最初と違い、その後は呼ばれた順に“粛々と”入場し一列に並ぶデビュタント予定者達。

ただ一部だけ違うのは、真っ先に並んだ一番最初の令嬢の横並びには誰も居ないという点。


当たり前だ。並んだ途端に同列に見なされる様な愚は犯さない程度の知能は少年少女にも有る。

それすら持ち合わせ無いのは仲間だと思われていないソイツのみ。今も何故か背後に“三列で”並びだした同級生達に疑問すら持たずに堂々と一人で胸を張っているのがその最たる証拠だろう。


段々と呼ばれる爵位が上がり始め、並ぶデビュタント予定者の列も出来始め、予定としては半分を過ぎた辺りまで達したといった所だろうか。


尚、出演者が出揃うに至るにはまだもう少し……。

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