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幕間・(無自覚)主演女優の耀き


お嬢様は硬直していた。


出来ればこのまま気を失ってしまいたかったが、あまりにも煌びやか過ぎる燦々たる光の前に眩しくて目を細めるのがやっとで困っている。


「……えーっと、これは?」


「はい、王太子殿下特注の品でございます」


えぇ、それは見れば分かります。

……取り敢えず心の中でそう呟いておく。

答えの様で答えになっていないのが正解なのだ。

目の前の物の事を知りたいのでは無い。

何故此処に有るのかを知りたかったのだ。


「…………宝物殿で見た様な?」


「きっとそっくりサンでしょう」


お嬢様ははつい首を傾げたがその返答は喜天烈極まる代物。真面目にやって下さいと怒るべきか、それとも曖昧に笑って流してしまうか。

……仮にも一国の宰相が相手ではどちらも無理かも知れないわね、と諦めモードに入るお嬢様。


先々代位だったか?に王族から降嫁された王女の血筋に現国王とも幼馴染みの関係性。王族を除けばこの国屈指の高位貴族の当主でも在る方。

肝心な所はボカす癖にどうでもイイ様な事にやけに拘る所がそっくりで、やたらと誰かサンとの血の繋がりを彷彿とさせるヒトである。


そんな厄介なヒトを前になんだが、実は王太子殿下の婚約者で準王族である自分の方が上の身分だとは気付かずに居るお嬢様。浮かべる笑顔が引きつらない様にするのがやっとだった。


「代々の女性王族の方のデビュタントに彩りを添えた……とのエピソードの在る由緒正しいお品……、のそっくりサンですからさぞかし貴女に映える事でしょうね」


今、ナニかを言いかけましたわよねっ?!

直ぐに言い方替えて言葉を繋げましたけどさすがに誤魔化されませんわよっ!?


……とお嬢様は言いたい、心の底から叫びたい。

けれども哀しむべきかな、5歳から徹底的に施された王太子妃教育の賜物が邪魔をする。どんな時でも淑女たれ!の笑顔が崩れない。


この国トップ3の一角たる現宰相。

VS

王太子殿下の婚約者で未来の王妃。


…………顔はニコニコ、心はシクシクしながらお嬢様は静かに見えない白旗を掲げた。

何年経とうと敵う気がしない!!

この穏やかさが逆に曲者なんだから……。


そう密かに敗北感を味わいながら、目の前に置かれた燦然と輝く『そっくりサン』とやらと、その輝きに負けない笑顔を浮かべながらさぁさぁ着けろ!と言わんばかりに手を差し伸べる宰相を交互に見る事しか出来ないお嬢様でありました。



☆☆☆☆☆



お嬢様は脳ミソをフル回転させていた。

首に国宝をぶら下げてデビュタントに挑む者は果たして歴史上に何人居ただろうか?と。


だが何度考えても出ては来ない。

それなりの記憶力を発揮してみても残念ながら思い出せずお嬢様は肩を落とす。いや、考える以前に零だろう!?と聞いた者は叫ぶかも。


習って無いからかしら……?

ついそう捉えてしまうお嬢様は天然かお馬鹿か。

贈った王太子殿下も、届けた宰相閣下も、今度はそちらが揃って肩を落としそうだ。


余談だが、今お嬢様の豊かなサイズの胸元を飾り立てている所謂『国宝そっくりサン』。


遥か昔にこの国を建国した王が自分と同じ髪色の龍を倒した際に見つかった漆黒の石を中心に配し、それを繊細な黄金細工があしらわれたチェーンが幾重にも取り囲んでいる。石の大きさは人の握り拳程も有るが特性からか重さは感じない。


しかも黒い癖に光まで放っていたりする。

一説には龍玉か逆鱗かとも伝わる代物だ。

それだけに何か有事の際には身を護る為の防御壁が自然展開される魔道具でも有った。


ちなみに持って行った宰相閣下。

お嬢様の知らないその機能を知る身としては王太子殿下の優しさを感じながらも、同時に哀しい男のサガ目線から、お嬢様の豊かな胸元が3倍増で注目を浴びるだろう懸念に心を痛めておりました。


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