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子育てって難しい……(王妃視点)


『国の根幹を揺るがす一大事』がまさかの息子の惚気擬きで終わるとは思いもしませんでしたわ……。

息子の王太子を追い出し、陛下と顔を合わせれば途端に揃って大きな溜め息を吐いてしまいました。


「陛下、申し訳ございません」


「……?何故そなたが謝るのだ?」


「わたくしはあの子の母親で教育を施す為の手配もまたわたくしの責任ですから……」


「教育を施された部分に関しては優秀には育ったのだから謝る事ではないだろう。……むしろアレは教育した所でどうなるとも思えんしなぁ」


「…………確かにそうですわね」


年々才能を開花させ優秀だと誰もが認める逸材へと成長していく姿は誇らしくも、同時に婚約者絡みの正にポンコツ具合も年々加速する一方で、国を治める者としても親としても不安しか抱けない。


何でどうしてこうなった?!?


母親であるわたくしは許されるならば今すぐこの場でそう叫びだしたかった。父親である陛下もおそらくはわたくしと同じ気持ちでしょう。人目がナンボのモン!王族の気品などクソ喰らえ!!とばかりな気分に陥っている有り様ですからね。



☆☆☆☆☆



国王陛下の第一子にして第一王子。

生まれた時から既に王太子の座は確定していた。

ただし、万が一の場合に備えての手も同時に打たれて行く。暗愚が芽生えれば国そのものに未来はなくなるのだから当然ではあるだろう。


幸いにも、大病を患う事も周囲に駄々を捏ねるでもなく順調に育って行く息子。政務の為に乳母に任せて直接子育ては出来ないが、それでも時間の許される限り会いに行き話を聞いて成長を見守った。馬鹿な事をすれば叱り、良い事は褒めて。


五歳を過ぎてからは会える時間は更に減る。

早く一人前と見なされる様にと、王家の子供はこの歳を区切りに離宮を与えられて生活の場を移す。

大勢の使用人を従え動かしながら徐々に差配に慣れさせ、また同時に周囲に常に人が居る状況を当たり前と受け入れさせる為だという。誰が決めたの?


それでも報告は毎日届けば目を通すし、会うのも回数は減っても可能な限り参加した。年齢が上がれば男の子だもの、触れ合うのも減りはしたけど手は繋ぐし頭だってちゃんと撫でてあげた。


陛下は若い時分から国の内外に持て囃される程の美丈夫でそして息子はそんな陛下にそっくり。


髪の色はわたくし譲りだけれど、それ以外は昔の陛下と同じく将来引く手数多なのは保証されたも同然でしょうね。むしろ髪と瞳の色の組み合わせがミステリアスだと城内の女性の間では特に評判なのだとか。陛下、いずれ息子に負けるかも?


何て思ったその頃に第二子の妊娠と出産で一時期疎遠にはなったけれど、会う度に聡明さと精悍さを増して行く息子を見るのは楽しく、話も飽きる事なく頼もしい成長を感じられて嬉しかった。


……のだけど一つだけ懸念の種が生まれていた。


婚約者を選ぶのは王族の責務。

陛下もわたくしも頻度を上げてお茶会を開催し、息子に数多くの令嬢との顔合わせを促し実行した。

けれども結果は芳しく無い。何故なのかしら?


10歳の辺りまでは静観していた。

わたくし達が行うのはお茶会の開催までのみ。

その後は息子が相応しい相手を選ぶ筈だから、と。

なのに一向に決める様子も見せず、誰かに靡く素振りすら見せないとの影からの報告もなされた。


まぁ、同年代の令嬢に関する評判はそれなりに酷いものが多いから仕方ないのかも知れない。もう少し時間を置いた方が良いかと陛下と協議していた矢先に事態は動きました。……ヘンな方角へと。


後々知ったのですが、自身の責務を自覚しながらも不満満載だった息子の見出だした解決策が、『自分の目で嫁を決めちゃおう☆作戦』(←命名も息子)で速攻で実践まで行ったそうです。


権力を行使しその口実を作り出し、歳を問わずに令嬢の居る貴族の屋敷を自分の足で回る日々。

もちろん、相手には自分の身分は一切悟らせずに。


…………その才能は素晴らしいのに震う目的がもう既に可笑しいと思うのはわたくしだけ?!


それから暫くして、『彼女に決めました!』と自らの腕に幼い少女を抱いてわたくし達の元へと現れた息子。元の場所に返してらっしゃいなッ!!と叫んだわたくしは悪いでしょうか……?


歳の差は五歳ながら、高位貴族のご令嬢で親は堅実、本人も幼いながらも聡明と評判で悪い所など一つも無い。結局は息子の熱意に負けて婚約を申し込み無事了承された。もちろん令嬢は帰された。


息子の女性を見る目は確かだった。

と同時に、人としては些か?胸を張れぬ資質もまた持ち合わせている事が判明してしまった!!

婚約者が出来た事はとても喜ばしい。

けれどそれを補って尚余りある絶望。

夫婦で頭を抱えたのは言うまでも無い……。



☆☆☆☆☆



そうね、あの頃には既に片麟は有ったわね……。

王妃としては失格だろうが、誰も居ないのでつい遠い目をしながら過去を思い出して呟く。


やっぱりわたくし、育て方間違えたかしら??


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