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見守るだけは存外難しい(護衛視点)


護衛を任されていたお嬢様から一時期引き離されて地獄に近い環境に身を置いていた自分。

短くはあったがあれは本当に地獄だった……。

一応古巣な筈がいつから彼処は地獄になった?!


師匠としての責任を取れ!と地獄の主であるかつての上官近衛騎士団長に言われ地獄に放り込まれたけど、あんな暴走馬と化した殿下なぞ弟子だろうと止めるのは無謀なだけだとアンタも良くご存知でしょうが?!自分にゃ無理ですてッ!!


てぇかさ!?

俺達だって殿下があそこまで悲惨さを滲ませた表情するからそれに感化しただけですよ!?

けどまぁお嬢様の激鈍さには前々から不安を抱いていたのは事実だし、つい国の将来を悲観しちまったのもまた事実ではあるんだよなぁ……。


同じ男として良ぉく分かりますとも!!

甘い言葉で愛を囁けど行動として示せど全くもって伝わっていないと気付いたあの虚しさよ……。

それでも懲りずメゲずに繰り返す殿下をある意味では俺は尊敬する。その部分に限るけどな。


どうやらお嬢様は、殿下との婚姻を完全な政略結婚だと信じて疑ってもいないらしい……って嘘だろ?!と気付いた時につい叫んだ俺は悪くない。

あんだけ愛されてる相手と政略?

いゃもぅそれこそあり得ねーだろーがーー!!


とはいぇなぁ……。

お嬢様が殿下以外とよく会話する相手は家族と使用人を除けばまず俺だ。屋敷内部はあの家専属の護衛騎士と折半しているが、学園に通っている時はほぼ俺が担当しているというせいもあるしなぁ。


そして俺に気を許しているだろう証拠に、お嬢様の言葉は飾らない素に近いものだ。丁寧なのは教育の賜物であって他人行儀だからでは絶対無い。

だって父親母親ともあの言葉遣いなんだから。


んで会話してると特に実感するんだよね。

お嬢様が本気で『政略結婚』だと思ってるって。

報われないよなぁ、殿下も。

まぁまだ婚姻までには時間が有るから是非頑張って欲しい。……無理かもしれんけど。


短期間とはいえ地獄と言う名の古巣には当たり前だが男しか居ない。騎士団なんだから当然だ。

お嬢様の護衛に戻る為にも早目に言葉遣いも直さなきゃならねぇ……いやならないし、心配させない為にも傷も治さなければならない。辛いなぁ。


どちらにも肩入れ出来ない中途半端な気分の俺。

幼い頃から鍛えつつ見守る殿下は弟子だし、その弟子からの希望で託されたお嬢様もまた俺にとっては大事な存在。さながら妹か娘な気分か?


そう、どちらか一方に立っているジョンソンとは違って俺は両側に心を許していて、尚且つ両側の事情を知り、そしていつも近くに居る存在だった。


だからだろうか。

護衛なのだから守るべきなのは当たり前。

それ以外は見守る“だけ”のつもりだったのに。

情に絆されたのか欲が出たのか、気がつけば双方へと助言と助力を自ら行うようになっていた。


けれども肩入れまでは出来ない。

殿下の師匠やお嬢様の護衛騎士な以前に俺の立場は近衛騎士団に所属する騎士なのだから。近衛という権力者に近しい立場だからこそ、公私を区別して自分をより律しなければならないのだ。


分かってる。分かってはいるのだ、頭では。

でも感情と言うのは厄介なもので、殿下やお嬢様と一緒の場はその公私が外れやすい居心地の良い場所だというのが一層拍車を掛けている。


お嬢様は入学したばかりだから卒業まで約三年。

これはそのまま婚姻までの日数も兼ねている。

だけど婚姻されて王太子妃になったとしても、俺は引き続き殿下と妃殿下の側に仕えるままだろう。

それについては妙な確信を抱いていたりする。


なので殿下。

俺の気苦労を減らす為にも頑張って下さい!!



☆☆☆☆☆



「学園での噂に関して、ね……」


誰が聞いてる訳でも無いので独り呟く。

どうやらお嬢様は殿下を心配なさるあまりに真実が知りたいようだが、俺としてはその殿下から止められているので聞かれてもはぐらかす事しか出来ない。俺の本当の雇い主は王家だしね。

世の中ってホントに世知辛いなぁ……。


俺もその場に居合わせた訳では無く、それでも本人から聞いてはいるから詳細は知っている。別に教えても差し支え無いとは思うんだけど?


そもそも今の状況って、この件で心配掛けまいとする殿下と心配しているお嬢様の、互いの心遣いが見事に空振りしあってるとしか思えんしな?!

あの二人を知ってて端から見てれば直ぐ分かる。


殿下からは話すなよ!と笑っていない目での無言の圧力。お嬢様からは教えて欲しい!との懇願の視線で無言のアピール。挟まれた身はツラい。

どっちにも転ばずに毅然とした態度を貫くのが正解なんだろうけどそれもまたツラい……。


ちなみにだが、後日、お嬢様の手元に然り気なく視線を向けたら『側妃・愛妾候補リスト』なるものを発見して仰天し、それでも辛うじて殿下ではなく宰相を通じて国王陛下へと報告し、よくやった!と褒められたがあまり嬉しくない俺だった。


いぇね、ホントにアンタらいい加減にして?!


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