理想と現実
自分の高校生活は一人で教室の端で本を読む事だった。だが今ではもう出来ない環境が出来てしまった。そしてまず隣が我が校における神様と呼ばれている珠音がいればなおさら無理だと確信していた。なにかと巻き込まれると予想がついていたから。だが俺が予想してたのと全然違う。
「敦樹ー。何考えてるのー?」
「ん?あぁ俺が思ってた高校生活と違うなーっと思ってな。」
「どうせ敦樹の事なんだから教室の端で本を読んで過ごすとか思ってたんじゃ無いの?」
「なぜ分かった。」
「何年一緒にいると思ってる。幼馴染を馬鹿にするものではないぞー。」
「急に真面目になるのやめろ」
「いじゃん。たまには」
「キャラが合わん。」
「それはひどいってーー!」
「何のお話をしているのですか?」
そこに珠音がやってきてそう尋ねた。
「いや、俺の思ってた高校生活と違うなと。」
「理想は良いですけどそれを現実にするのは相当難しいのでは?」
「普通に考えてそうなのか?」
「理想通りの世界であれば誰も苦しい思いはしないでしょう。」
「おっしゃる通りです。」
正論すぎて何も反論出来ない。
確かに理想は現実化は特にしにくい。もし簡単に出来ていれば質問攻めや珠音達とこんなに楽しく話して過ごすという事は無いと思うのだから。だがなぜそういった事がすぐに出てくるのかが不思議だ。
「珠音って前に理想が現実にならなくてめっちゃ悲しんだ経験があるのか?」
「どうしたんですか?急に。」
「いやすぐには考えにくい意見が返ってきたから何かあったのかと不思議に思ったんだよ。」
「そうですね……今はまだ言わないって事は出来ますか。」
「別に構わないが………そのこんな質問してごめん。」
明らかにさっきより表情が暗い。いつかは話してくれるのだろうが果たして俺が聞いても大丈夫なのだろうか。そういった心配事が増えてきた。だが、今は珠音を元気にさせることを優先するべく、さまざまな話をして機嫌を取り戻そうとして頑張っているとなぜか珠音が小さく笑みを浮かべた。
「何かあったか?」
「いえ。機嫌を取り戻すのにものすごい必死でつい。」
「しょうがないだろ。俺が悪いんだし。」
「気にしていませんよ。」
「もうご飯食うか。」
「そうですね。」
「てか樹里どこ行ったんだ。」
「とりあえず2人で食べましょうか。」
こうして2人で昼食を取った。