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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第三部・キャプテンパンダと愉快な仲間達号の冒険

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奴らは死の棘からやってきた

本話には、未開の宇宙からやってきた野蛮人がまきおこす、残酷な現実というものが記載されております。

あらかじめご了承のうえ、お読みいただきますようお願いいたします。

奴らは死の棘からやってきた



 右半身をねじくれた金属塊(きんぞくかい)と化したSystem Schutzstaffel艦に突き刺さる刺突衝角(しとつしょうかく)がうみだす、全身が総毛立つような金属同士がこすれあう音。冷たい硬度を持った重量物が金属を破壊しねじ曲げながら、血塗(ちぬ)られた屠殺場(とさつじょう)のような真っ赤な光に染まる戦闘指揮所に迫(せま)る音。

 そして……

 メタクソにねじくれ曲がった金属塊(きんぞくかい)ではない、正確な工作精度で作られた機械が冷たく動作する音が戦闘指揮所に届く。

 重機械が駆動する冷たい音が酷く冷酷な匂いを漂わせて響き、死の棺桶(かんおけ)と化した戦闘指揮所に近づいてくる。

 くるな! くるな! くるな! くるな!

 あの巨大なドクロがこの艦に挿(さ)し込んだ棘(トゲ)から、死神が注入されたのだ!

 やめろ! やめろ! やめろ! やめろ! もう決着はついているではないか?! なぜこんな恐怖を俺に与える?!

 星の海でただやすらかに死なせてくれ!

 最初は遠かった銃声がどんどん大きくなっていく。クソ重たい金属が駆動するアクチュエーターの冷たい音が聞こえる。立ちふさがる耐圧扉を次々ぶち破ってくる、比喩(ひゆ)ではない鉄拳の音がする。まだ生き残っている者たちが、つぎつぎに肉塊(にくかい)に変えられていく悲鳴が聞こえてくる。

 近づいてくる! 近づいてくる! 俺を狙(ねら)って死神が近づいてくる!

 視線の先にあるのは、戦闘指揮所を外界から守る厚い装甲耐圧扉。

 キュィィィィン! ズッガーーーーーン! キュィィィィン! ズッガーーーーーン!

 戦闘指揮所を守る装甲耐圧扉を破壊し侵入しようとする、凶悪な音が大音量で響きわたる。

 キュィィィィン! ズッガーーーーーン! キュィィィィン! ズッガーーーーーン!

 何発も叩き込まれる比喩(ひゆ)ではない鉄拳に、装甲耐圧扉が少しずつだが歪(ゆが)んでいく。

 耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ! 絶対に耐えろ!!

 おまえは銀河臣民達(ぎんがしんみんたち)の血税で作った最後の砦(とりで)なんだぞ。銀河臣民(ぎんがしんみん)とは違う銀河神民(ぎんがしんみん)であるこの俺を、扉一枚へだてた向こう側にいる死神から絶対に守りやがれ!

 イヌオは懇願(こんがん)した。華美(かび)な装飾に彩られた戦闘指揮所の艦長席で懇願(こんがん)した。お母様に懇願(こんがん)した。全知全能絶対無謬(ぜんちぜんのうぜったいむびゅう)の神に祈りを捧(ささ)げた。だが、我は森羅万象(しんらばんしょう)を司(つかさど)ると豪語(ごうご)した、総統陛下(そうとうへいか)には一度として祈りなどささげなかった。

 神に祈りが通じたのか、銀河臣民(ぎんがしんみん)の血税(けつぜい)によって作り上げた最後の砦(とりで)が勝利したのか、最後の防衛線を殴り続ける鉄拳の音がやんだ。

 骨身を震わせる振動が消えた戦闘指揮所の空気が、一瞬にしてゆるむ。

 やったぞ! バカが! 銀河臣民(ぎんがしんみん)の血税を吸い上げて作り上げた、採算度外視(さいさんどがいし)の防御力を甘くみやがって! 

 ざまあみやがれ! こいつは無理だとあきらめたな!

 だがそれは……

 誤解だった……

 戦闘指揮所を閉鎖する、厚い装甲耐圧扉から火花が吹き出る!

 いくつもの赤熱(せきねつ)する刃を高速回転させる、無慈悲(むじひ)なヒートブレードチェーンソーが装甲耐圧扉を貫(つらぬ)き現れ、ゆっくりと装甲を切り裂いていく。

 斬(き)り刻(きざ)まれた隙間(すきま)から巨大でブ厚い無骨な金属板がブチこまれ、テコの原理を使って生みだされた暴力によって、裂け目がじょじょにこじ開けられていく。

 臓腑(ぞうふ)がひっくりかえるように凶悪な大音響を戦闘指揮所に響かせ、押し開かれた裂け目がじょじょに大きくなり、それはついに巨大な開口部へと変わった。

 贅沢(ぜいたく)に高い天井を持ち、華美(かび)な装飾に彩られかつては壮麗(そうれい)ですらあった赤い光に満ちた戦闘指揮所に、全高4メートルの金属の巨人が2体、暴力の臭いをふりまきながら押し入ってくる。

「艦長はどいつだ?」

 赤熱するヒートブレードチェーンソーは凶悪な赤い光を宿し、いまだ惰性(だせい)で無数の刃を回転させる作動音を不気味に鳴り響かせる青い機体から、氷のような冷血さを漂(ただよ)わせる低い声がした。

 アベガスキー、スガガスキー、キシダイスキー、すべてのナンバーズ達が、すみやかにかつ正確にイヌオを指さした。

 青と赤、2体の金属製の巨人が、冷たいレンズの焦点(しょうてん)をイヌオに合わせる。

「なぜ無警告で、カワイイパンダマークをつけた非武装のイチ民間船を撃った?」

「貴様……。いったい、何人殺したと思っている?」

 イヌオは言った。

「そうねえ、存分(ぞんぶん)に死んだよね。ここにくるまでに蹴ッ飛ばして踏みつけて、ぐしゃぐしゃのひき肉にされちゃった、死体の山をこさえたのはあんただよ」

 悪霊退散と書かれた両の鉄拳と、左肩に六本の銃身を束ねた重機関銃を装備した赤い機体から、女の冷たい声が響く。

「私の権畜達(けんちくたち)を殺したのは貴様らだ」

 イヌオは言った。

「いいや、しこたま殺したのはおまえだよ。すべては、無警告で最初に撃てと命令した、おまえの責任だ」

 ヒートブレードチェーンソーと無骨な金属盾で耐圧装甲扉をこじあけた、青い機体から響く低く冷たい男の声。

「艦を棺桶(かんおけ)にしたのは貴様らだろうがッ!」

「物理的にはな。だが道義的(どうぎてき)には違う。うなるようなゼニーを注ぎ込んで作り上げた、抑止力(よくしりょく)と称する過度な装飾品すらついている過剰(かじょう)な武力を、ただのねじくれまがった金属塊(きんぞくかい)と肉塊(にくかい)に変えちまった原因はおまえにある」

 ああ? 何言ってやがるんだ? この艦をこんなにしちまったのは間違いなくおまえらじゃねえか!

 道義的(どうぎてき)にってなんだ? 意味がわからん。コイツの言っていることは、まったくもってわからない。

「貴様の言うことはまったく意味がわからない」

「すまんな。おまえには過ぎた話をしてしまった。いいんだ、気にするな。おまえがカワイイパンダマークの非武装船を、どうして無警告で撃ったのか? 俺はその理由がわかればいい」

「言うとでも思っているのか? System Schutzstaffelの守秘義務をナメ……」

 パンッ!

 と乾いた音がして、イヌオの身体の右側が急に身軽になった。

「え?」

 イヌオが視線を急に軽くなった身体の右側に向けると、もうそこには右腕がない。肩から先は、ダラダラと血を流すぐしゃぐしゃの赤い断面に変わっていた。

 え?

 意味不明の光景に意識が混乱する。そして、意識が混濁(こんだく)するような激痛が脳を満たす。

「ああああああああああああああ!」

 イヌオの悲鳴が、真っ赤な鮮血(せんけつ)のような光に照らされる戦闘指揮所に満ちる。

「おまえは右に寄り過ぎた。どうだ? バランスがよくなっただろう?」

 巨大な人差し指から煙をひとすじたちのぼらせる金属製の青い機体から、一切の感情を感じさせない男の声が響く。

 イヌオは艦長席から転がり落ち、戦闘指揮所の床をのたうち転がりまわる。踏み潰(つぶ)された軟骨入(なんこつい)りツミレ料理レベル以下に分解された右腕が作り出した赤い海を、イヌオは残された一本の腕と2本の足でもがき泳ぐ。

「好きなだけ泳ぐといい。それがお前が愛した積極的平和力行使がたどりついた、平和力に満ちたあたたかい海ってやつだ」

 一切の表情を浮かべない金属製の巨人が、平和力の海をのたうつイヌオをじっとみつめる。

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