RED ALERT! キャプテン・パンダと愉快な仲間たち号!
RED ALERT! キャプテン・パンダと愉快な仲間たち号!
艦橋に鳴り響く耳をつんざく警告音! アイアンブルーとガンメタルグレイの世界を紅く染める警告灯!
「射撃レーダー照射ッ!?」
ミーマの信じられないという声が艦橋に走る。
「対抗障壁領域展開ッ!」
失神状態から刹那の速度で復帰したタッヤが、羽先で操作盤を叩く!
「くそがぁぁぁぁ!」
いつもの面々からガスマスクの中が見えないように顔をそむけていたネガが、キャプテン・パンダと愉快な仲間達号を全力で逃走させるためにペダルを床まで踏み込む!
「こいつはおおごとなのかなぁ」
「これはおおごとなのよ!」
コタヌーンとオクタヌーンが機関室に向かって艦橋を飛び出していく。
「方位210に、シンセティック・ストリームの艦と思われる艦影あり!」
AXEがまだ涙に濡れている瞳で、レーダー盤にかじりついて周辺状況を必死で探る。
「どういうこと!?」
サディが背中からちぐにゃにゃんスイッチを放り出し、射撃管制席に袖をはためかせて飛び込む。アークは自席にすっ飛び、ふたりは戦闘用ハーネスをガチンガチンと接続していく。
その瞬間! 艦橋前面のブ厚い硬化テクタイト製窓に走る閃光!
対抗障壁によって相殺される、極大威力のエネルギーが生み出す余剰電磁波が船体に干渉し発生する、遠い雷鳴のような轟音に艦橋が揺れる。
「敵艦発砲! 後部対抗障壁直撃!」
ミーマが状況を把握。
「対抗障壁使用率1.5%。コタヌーンさんが機関室に到着しだい補助動力機関接続。船体冷却を開始します。それまでは余裕で持つとは思いますが……」
一瞬で失神状態から復帰したタッヤの冷静な計器読み。
「これはいったい……」
大急ぎでひっぺはがした偽装パネルの下から現れた、射撃管制盤の安全装置を次々に解除しながら、サディがつぶやく。
「シンセティック・ストリームの暗部の心臓どもを、万死と等価の異次元にブッ飛ばすお手製の主砲弾を満載にして、銀河中にご禁制品をバラまいてまわっている海賊放送船ではあるが……。今はカワイイパンダマークを船首にかかげる、ただのイチ民間船だぞ。そんなファンシー雑貨の貿易船みたいな船に、何の警告もなくイキナリ当ててきやがるとは……。まったく意味がわらねえし、あいつらマジで正気の沙汰とは思えねえよな!?」
アークが自席のモニターに投影される、AXE、ミーマ、タッヤから次々に送られる情報を確認しつつ言う。
「アークの言い方ですと、警告なしで撃たれてもまったくもって仕方ないようにしか聞こえませんが……。いまは表向き、タダのイチ民間船であることは確かです」
AXEがレーダー盤を冷徹に操作しながら言う。
「まったく状況が理解できません。本船は一切の交戦意志を見せず、表向きは、という条件つきですが一切の武装をしていません。RADIO・ちぐにゃにゃんが使用しているナイン・トゥー・ポイント・ナイン92.2銀河標準メガヘルツは、この銀河のLIVE配信の胴元にキチンと申請して通った周波数です。その証拠にスーパーチャージの一部を上納銭として胴元におさめています。仮にこの銀河において違法な電波放射を行ったとして、いきなり警告なしの直撃砲撃は通常の判断ではあり得ない。配信内容についても、シンセティック・ストリームのクソ野郎とかケツのアナとか、この腐ったふにゃふにゃナスビ野郎とか、そういう反抗的な要素は皆無でした。唯一あり得る可能性としては、この船が海賊放送船イービル・トゥルース号とバレた。という状況ですが、現在行われている射撃レーダーによる計器射撃の距離において、ただのイチ民間船の姿をした本船を、艦影だけでイービル・トゥルース号と見抜くことは不可能と、状況を判断します」
ミーマが現在の状況を冷静に分析。
「いったいなんだ!? 俺達はいったい何をした!?」
こいつはマジでわけわかんねえぞ! という表情のアーク。
「レーダーのログをさかのぼり、過去の状況を確認しました。正気の沙汰ではない砲撃を行った艦は、ちぐにゃにゃんラストLIVEの開始以前からこの宙域に存在していました。ただのイチ民間船として航行していた本船は、何の警告も反応もない状態になれてましたので、私達が無警戒に過ぎる状態だったのは事実ですが……」
AXEが過去へと戻ったレーダー盤の光点をにらんで言った。
「ずっと前から近くにいやがっただと!? だとすると、イービル・トゥルース号とバレているわけじゃねえな……。いまこの瞬間、艦影からこの船をお尋ね者のイービル・トゥルース号と見抜くこともできないはずだ……。だとすると……」
どういうことだ?
奴はずっと前からこの宙域にいた。ということは、少なともレーダーではこの船を捕捉していたはずだ。この船がイービル・トゥルース号だとバレているなら、とっくの昔に沈めにきていておかしくない。
「過去のログを含めて周辺宙域を精査した結果。現在本船に砲撃を行っている艦以外に、本宙域にSS艦は存在していません。他のSS艦はすべて、電波通信不能のグラジ・ゲートの向こうです。戦力の応援がまったく期待できない状況なのに……」
AXEからの過去を含めてのレーダー情報。
「つまりは本船との一騎打ち。それをいきなり挑んできたと……」
ミーマがつぶやく。
「アーク!」
ながらく眠っていた射撃管制盤を生き返らせ、巨大なリボルバーカノンを模した主砲操縦桿からカワイイ猫柄カバーを取り去って、サディがアークに視線を向ける。
「三秒くれ」
アークの脳が高速回転。思考が過去へと急速に戻っていく。
ニャあーん……。にゃあーんと鳴く子猫がちぐにゃにゃんに戻り、ラストLIVEのにゃんにゃん場面が逆回転し、ちぐにゃにゃんスイッチがonからoffへと戻り、ちぐにゃにゃんがサディに戻り、スイッチをサディが背負うところまでやってくる。ヘッドセットマイク付きの猫耳カチューシャがサディから外れ、つけ尻尾がサディのお尻から離れる。
ダメだ……。まったくもっていきなり撃たれる心当たりがない。ここで1.5秒。
考えろ。何かきっかけがあるはずだ。
いきなり撃ってきた。いったいなぜ?
これだ。これが最大の謎だ。奴等はずっと前からこの宙域に存在していた。つまりは、レーダー盤の上では俺達の存在をずっと前から知っていたということになる。
だとすると……。
1番近い過去に原因がある?
そうだ。1番近い過去だ。1番近い過去、ついさっき、俺達は何をした?




