急襲降下部隊ノ帰還
急襲降下部隊ノ帰還
センクター急襲降下部隊を回収したキャプテン・パンダと愉快な仲間達号は、そのまま理解不能の出力を叩き出すエニグマエンジンをオーバードライブさせ、大気圏を一気に離脱。
うえからの命令でようやくケツに火がついたSS艦達を
「クソが!」
の一言でブッチギリで引き離し、まだ誰のものでもない野蛮な宇宙を今はぷかりぷかりと飛んでいる。
「一時はどうなることかと思いました……。正体不明の謎の飛行物体まで現れましたし……」
タッヤがシートにぐったりともたれかかって言う。
「こ・れ・は・あ・た・し・の・お・て・が・ら・よね?」
サディがにんまりと笑ってタッヤに言う。
「そ……、そうですね……。いつもどおり予定以上にブッ放しはしましたが、今回の収支は間違いなくプラスです……」
タッヤがぐったりとしながらも、頭の中で今回のシノギを計算。
「あたしにはちょっとキツ過ぎたかも〜」
そう言ってイカツイシートの上で足をぶらぶらさせている、身長1メートルの氷砂糖みたいに半透明の少女に戻ったミーマ。
「……」
そんなミーマを横から、目を細めてみつめているのはAXE。
センクターはそのグラマラスボディがギッチギチに詰まったカラミティ・ヒアの操縦席から、何をどうやっても脱出できなかった。センクターのグラマラスボディを引っ張るのに疲れたサディが、これはもう機体をバラそうと言って、アークを呼びに格納庫から出ていったくらいだ。
残ったAXEは深いため息をついて、ほんのちょっとだけ考えた。そして、すぐに思いついた。AXEはセンクターに提案して操縦席のハッチを一度閉じて、ギチギチ状態のグラマラスなセンクターから、いつものミーマに戻る秘密の儀式をとりおこなってもう。操縦席のハッチをまた開けたらあら不思議。そこには、だぶだぶのバトルスーツ内でもがくミーマが。そしてAXEがバトルスーツの中からようやくミーマを救出したのだった。
「んー、まあ、ひさしぶりの本業で、サディも大変ご満足されたようでなにより。太くて長くて威力がスゲエ、俺の作ったRINGO砲はナカナカ気持ちいいブツだったろ?」
アークが満足げにサディに言う。
「いいねえ。ガツンときたねえ。ほら、あたし体重めちゃ軽いから、撃つたびに空へとのぼる気分だったよ。でもあれ、ガラクタから作ったんでしょ? やるじゃん。アーク。それにしても、兄冥土との取引がこんなに面白いなら、次から私担当のシノギにしてくれてもいいよ?」
ふふん。という顔で得意げに笑うサディに
「こういうのは交渉力とか、需要と供給とか、何より扱うブツの分野に詳しくないとなぁ」
と艦橋にきているコタヌーン。
「つまり商品知識は最大の武器なのかもしれません」
とはオクタヌーン。
「うう、ブラック・レーベル……。興味ないんだよなぁ……」
サディはがっくりと肩を落とす。
「一緒に読もうよ〜」
とミーマが満面の笑みでサディを誘う。
「え、遠慮しときます」
と肩を落としたサディがしゅんとして、ミーマにかえす。
「さて、次は格納庫に鎮座する、あのクソヤヴァイデカブツをさばきに行こうや」
ふんっと鼻息荒くアークが言う。
「よくあんなガラクタの売りつけ先がみつかりましたね?」
AXEがあきれた感じでアークに言う。
「このあきれるほどに広い銀河には、ガラクタが大好きな変わった奴等がいたりするのがありがたい」
アークはそう言うと、いつものスーツ姿で空いている席に座るコタヌーンに視線を向ける。
「機関長、コタヌーン殿。商売の時は近いぜ? そのスーツ姿でいつどおりビシッと頼む」
「あのー……。仕様書読んだんですがね。アレ、全然売れる気がせんのですけど……」
何事もにも動じないコタヌーンの珍しく困りきった声が、アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋に響く。
「ダイジョブだ。間違いなく売れる。絶対に売れる。ブッ飛ぶように売れる。だからコタヌーン殿は、こいつはいかにもやり手のキレ者だぞ。って雰囲気でいてくれさえすればいい。いれぐいみたいにあのガラクタを相手は飲み込んじまうよ」
そう言ってアークはくっくっくっくと笑う。
「あの……。副機関長としても、あんな時代遅れの……。しかも、中身はヤヴァイブツが満載のものが、とてもじゃないですが売れるとは思えないんですが……」
とはオクタヌーン。
「ダイジョブだ。そういう悪ければ悪いほどたまらねえ。そういうマニアがこの広い銀河にはいやがるのさ」
アークが邪悪な笑みを浮かべながらオクタヌーンに言う。
「いや〜。にわかには信じられませんなぁ……」
そんなコタヌーンの返事に、
「ダイジョブだ。ガラクタを売りつけてゼニーに変える。キャプテン・パンダと愉快な仲間達号のシノギ、ここで本領発揮ってやつさ」
とアークはふんっと荒い鼻息を一発はなった。




