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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第三部・キャプテンパンダと愉快な仲間達号の冒険

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ちぐにゃにゃんの気だるく優雅な……

ちぐにゃにゃんの気だるく優雅な……



「にゃん」

 むすっとしたアークが言った。

「くそが?」

 とネガ。

「にゃん。にゃん」

 とむすっとしたアーク。

「く、くそが? くそが?」

 とネガ。

「ハンドルを回し過ぎたのかなぁ……」

 にゃんしか言わなくなってしまったアークの横で、深くため息をつくサディ。



「会話になってませんね」

 AXEが目を細めて、無免許もぐりの航海士と、銀河一逃げ足の早い操縦士の会話をみつめる。

「あれから3日ですか。そろそろ戻ってもいいと思うんだけどな〜」

 ミーマがイカツイシートの上で足をぶらぶらさせて言う。

「アークはなんで加減して設計しないんですかね……。ハンドル回せば回しただけ猫パワーをためこんでしまうとは……」

 タッヤがため息をつく。

「オレニゼッタイツカウナヨ」

 とはイクト・ジュウゾウ。



 四日目。

「なおった」

 むすっとしたアークが、ようやくニャン以外のことを言った。

「徐々(じょじょ)になおって、語尾ニャンになるんじゃないの?」

 むーっと口をとんがらせたサディが、アークにつめよる。

「俺はガチでバチバチのハードな男だからな。治る時はガチンとなおるんだ」

 アークがむすっとサディに答える。

「えー」

 大変ご不満そうなサディ。

「あのスイッチは急造きゅうぞうでな。安全設計まで手が回らないから、ハンドル回せば回すほど猫パワーがたまるようになっちまってるんだ。いいか、絶対に23回転以上ハンドルを回すな。22回転がもっとも効率よく猫パワーを生み出す回数だと心得こころえよ。俺に使った時、いったい何回まわしやがった? 猫パワーが注ぎ込まれ過ぎて、あやうく昇天するところだったぞ」

 アークがサディにずいっと迫って言う。

「んー。一晩+コタヌーンさんに回してもらったから……。2222回転くらいはいってたかも」

 サディが超絶適当にアークに返す。

「2222回転だと!? 我ながらよく生きていたもんだ……」

 アークが呆然ぼうぜんとする。

「……」

 すべての真実を知るAXEが、目を細めてサディとアークのやりとりをみつめている。

「うーん……。あんなものがあると、後釜あとがまねらうのがむずかしくなっちゃうー」

 とは、腐った組織ダ! 海賊放送! をやりたがっているミーマ。

「何事も物は使いようです。22回転でスイッチ・オン! ガンガンスーパーチャージを投げられる猫娘が現れるならそれでいいのです」

 タッヤがちぐにゃにゃんの稼ぎを帳簿ちょうぼにつけながら言う。

「デンキショックハキケンダゾ?」

 とはイクト・ジュウゾウ。

「くそがー」

 と言いながら、ポンコツリアクターを売りつける星を目指し、財務的破綻から逃げるという名目で前に進むネガ。

 イービル・トゥルース号あらため、キャプテン・パンダと愉快な仲間達号は、今日も銀河をぷかりぷかりと翔んでいく。



「ちぐにゃにゃんは子猫になりたいニャン。そのためにいろいろ努力してるニャン。お魚はいっぱい食べるし、好き嫌いはいけないから貝も食べるニャン。星の海にお魚が泳いでないのは、この宇宙を作った神が無能な証拠しょうこニャン」

 今日もラジオから92.2銀河標準メガヘルツ、RADIO・ちぐにゃにゃんが流れてくる。

「ちぐにゃにゃん、かわいいなぁ〜」

 一週間ほど前、偶然ぐうぜんチューニングがあったラジオから流れてきた、通常の三倍カワイイ猫耳美少女に、夢中になってしまった男がつぶやく。

「スーパーチャージしーちゃお」

 男はポチりとボタンを押すと、楽金らくきんカードマンが男の口座からおゼニーを抜いて、カワイイカワイイちぐにゃにゃんにチャリンと音がなるお魚ギフトを届けてくれる。

「わー! ガチ恋燃料運び隊さん! お高いお魚ありがとニャン! はむはむごっくん! これでもっともっと、ちぐにゃにゃんはさらにさらに猫になれるニャン! 猫になったら、ガチ恋燃料運び隊さんの手からお魚を食べたいニャン」

「ちぐにゃにゃん、カワイイな〜」

 ガチ恋燃料運び隊こと、男のつぶやきに反応する乗組員は人もいない。というか、男が座る自席の周囲にはモニターと操作盤が多数並ぶだけで、他に人間は人もいない。

 男が乗るのは資源運搬船。たった一人で資源満載の宇宙船を航行させる孤独でハードな日常に、突然やってきたちぐにゃにゃんは、男をスーパーチャージへと走らせるのだった。



「レッドスーパーチャージ! きたぁぁぁぁ!」

 一気にレッドゾーンへと突入する、ちぐにゃにゃんへの課金量を示すメーター!

 タッヤの歓喜かんきの声が、アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋にこだまする。

「俺の海賊放送は内容的に、常にブッチギリのレッドゾーンだ」

 むすっとしたアークが腕を組んで独り言。

「製造原価のことを考えると、これは断然カードラジオ販売より美味しいですね」

 ほくほく顔のタッヤ。

「俺の海賊放送を取り締まるために、シンセティック・ストリームは戦闘機を飛ばし、対艦ミサイルをブッ放し、最後には宇宙戦艦まで引っ張り出す。俺のほうが断然、シンセティック・ストリームどもからレッドゾーン級にゼニーをひっぺはがしている」

 またもむすっとした顔で、艦橋前面のブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる広大な銀河をみつめてアークが言う。

「新規開発の秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチが、しっかり効果を出しているんだからいいじゃないですか」

 AXEはレーダー盤に視線を落としながら言う。

「アークはちぐにゃにゃん運営なんでしょー? ちぐにゃにゃんがヒットすのは、アークも嬉しいんじゃないのー?」

 イカツイシートの上で足をぶらぶらさせながら、ミーマが言う。

「んー……。まあ、そうだな。台本の8割はなんてったってこの俺が書いているんだからな。銀河中のおたずね者である、このガチでバチバチにハードな俺の書いたセリフに踊って、財布からゼニーをぶんぶんブン投げて、通常の三倍以上に断然危険だんぜんきけんなサディに課金している野郎がいると思ったら、確かに気分がいいのは確かだ」

 そう言ってアークは、ふんっと荒い鼻息を一回。

「まあ、そうですよね……。にゃんにゃん言っている通常の三倍カワイイ猫娘。実はイケナイ主砲でキモチイイ大穴を、平気でシンセティック・ストリームに開けようとする戦闘要員。このことを知って、しかも台本はシンセティック・ストリーム勢力圏では、札付きのお尋ね者のアーク・マーカイザック作と知ったら……」

 AXEはぶるっと一回身をふるわせる。

「ウツクシイモノニハ、サギガアル」

 とはイクト・ジュウゾウ。

「くそが……」

 とネガのセリフが最後をしめたかと思ったが……

「……?! 本船に急速接近中の艦船が……」

 レーダー盤に視線を落としたAXEの声。

「んー? アホウタロウのボンクラなシンセティック・ストリームに、この船がイービル・トゥルース号だとばれるようなことはしてないはずだが?」

 アークが片眉をあげて言う。

「レーダーから得られる艦影を照合しましたが、System Self-Defense Force SSF、及び、System Schutzstaffel、いずれの所属艦とも一致しません。大きさ速度的に、一般的な貨物運搬航宙船と思われます」

 ミーマがAXEから受け取った情報を分析。

「んー? 一般的な貨物運搬航宙船が、カワイさアピールでもってガチ恋勢からゼニーを冷酷にひっぺはがす、このキャプテン・パンダと愉快な仲間達号に急速接近して一体何のご用だ?」

 アークがまたも片眉をあげて言う。

「えーと……。誠に申し上げにくいですが、そのガチ恋勢がガチで勢いあまってやってきたのではないかと」

 ミーマが氷砂糖のような半透明の手をあげて、状況分析を発表する。

「なんだと?!」

 アークの目が驚きに見開かれる!

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