あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ にゃにゃにゃぁぁぁぁ!!
あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ にゃにゃにゃぁぁぁぁ!!
ぐるぐるぐるぐる。
呆然とするちぐにゃにゃんことサディ。唖然とする乗り組員達の視線を一身に受けて、アークが秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチのハンドルをぐるぐる回す。
ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。
「最初の一発めだし、これくらいでいいだろう」
アークがハンドルを回すのをやめて一息つく。
「で?」
ほほをピクっと引きつらせて、サディが問う。
「ハーネスがついているだろう? これを背中にとりつける。あとはレバースイッチを入れた瞬間、サディよ。この秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチが脳にむけて猫娘パワーを送り込む! 昨夜は内緒で自分を実験体にして試してみたが、ついさっきまでにゃあにゃあ言うのがやめられなくなるくらいで、特に人格にも肉体にも害はなかったし、もちろんただちに死ぬということもない。安心しろ」
キリリと表情を引き締めたアークが言う。
「あの……。すでにアーク自体がイカれてしまっているから、なにも問題が起きなったということでは?」
とAXEは言った。
「うううう……」
サディは定時配信前の変身儀式、ヘッドセットマイク付き猫耳カチューシャと、着け尻尾をアークとAXEにセットされながら震えていた。
その背中にはイカツイハーネスで取り付けられた秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチ!
「ダイジョブだ。スイッチを入れれば自然と語尾はにゃんになるし、猫娘キャラへのシンクロ率が圧倒的に上昇することで、今までのように、い・か・に・も・む・り・し・て・い・ま・す、という感覚もブッ飛んで消える。一気に楽になるぞ」
アークが猫耳尻尾姿でちぐにゃにゃんへと変身した、サディの背中のレバースイッチに手をかけて言う。
「お時間です! ナイン・トゥー・ポイント・トゥー! 92.2銀河標準メガヘルツ! RADIO・ちぐにゃにゃん! NOW! ON AIR!!!」
ドクロマークのうえに猫のシールが貼られた赤いボタンに、ミーマが半透明の拳を落とす!
「秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチ! ON!!」
アークがサディの背中のレバースイッチをバチン! とONに倒す!
秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチのフレームにアーク放電が走り、艦橋に青い光をバチバチ飛ばす!
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!!? にゃにゃにゃぁぁぁぁ!!!!??」
RADIO・ちぐにゃにゃん! NOW LOADING!! と表示されたサムネイル画像にちぐにゃにゃんの悲鳴が響く!
「ちぐにゃにゃん、お魚大好きにゃん。でも、本当は1番大好きなのは貝なのにゃん。でも、子あーくま子猫になりたいから、お魚が1番好きってことにしてるにゃん。猫が好きなのはお魚に決まってるにゃん。でも本当は貝がいっぱい食べたいにゃん。もちろんナマが1番にゃん」
ちぐにゃにゃんのなめらかな語尾にゃんトークが艦橋に流れる。
「きてます! スーパーチャージが今までとはくらべものにならないくらい、ガンガンにきています!」
ガンガン投げられるスーパーチャージの額に、レッドゾーンへと突入していく計器をみつめて、タッヤが興奮を抑えきれずに言う。
「まじですか……」
ちぐにゃにゃんの後釜を狙っていたミーマが、呆然とした表情でなめらかに進行していく配信を聞いている。
「ちょっと! アーク! あのスイッチ! あれはいったいどうなっているんですか!?」
ヘッドセットマイク付き猫耳カチューシャと着け尻尾、いわゆる圧倒的シンクロ率! ちぐにゃにゃんなりきりセットを開発したAXEが、血相をかえてアークの首根っこをつかんで言う。
「いやいや、そんなたいしたもんじゃねえって。ただの電気ショックよ」
AXEにくびねっこをつかまたアークは、サディに聞こえないように、艦橋のすみにAXEを誘導しつつ言う。
「ただの電気ショック!?」
AXEの目が点になる。
「そうよ。ハンドルぐるぐるでスイッチの中にたまった電荷が、レバースイッチを倒すと一気に放出されてビリビリ! それだけ」
「はあ? それでどうして人が猫娘になるんです?」
「まあ、催眠術ってえか、プラシーボって言うか……。ルーチンというか。そういうもんよ」
そう言ってアークが肩をすくめる。
「つまり……。やっぱりインチキなんですね?」
目を細めてアークの瞳をのぞきこんだAXEは、秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチの正体を理解した。




