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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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オーバードライヴ! エニグマエンジン!

オーバードライヴ! エニグマエンジン!




「メインエンジン〜。出力上昇〜」

 機関長コタヌーンの陽気な声が、イービル・トゥルース号艦尾、エニグマエンジンが熱く稼働かどうするイカツイメカニカルな機関室に響き渡る。

「バルブカイホウ! リアクターオンドジョウショウ! ホジョキカン、レイキャクリョウコウ!」

 メカニック係長イクト・フタロク率いる、ギンギラメタルボディのロボット乗組員達がエニグマエンジンをガッチャンガッチャン操作する。

「メインエンジン出力領域、レッドゾーンをとっくに突破」

 機関副長オクタヌーンが青い表情で、あらゆる数値がブッチギリで入っちゃいけないレッドゾーンに突入していく計器類をみつめている。

「さあて、宇宙に向かってぶっ飛びますぜぇ」

 コタヌーンの声に合わせて、エニグマエンジンが驚愕驚異きょうがくきょういの推力をブッ放す!

「どうしてこれ、ダイジョブなのよぉ〜」

 オクタヌーンのいつものセリフ。

「いつもダイジョブだからダイジョブなんじゃないかなぁ」

 とはコタヌーン。

 そして、たった一隻でシンセティック・ストリームに対抗しうる、ビックリドッキリ驚愕驚異きょうがくきょういの宇宙戦艦、海賊放送船イービル・トゥルース号のケツに、アツイ青き炎が灯る!



 艦尾からの爆発音!

 それはエニグマエンジンが生み出す莫大ばくだいな熱量が、海水を一瞬で水蒸気爆発させる轟音!

 強烈な推力でうるわしの船の素敵なケツを蹴っ飛ばし! 艦首のドクロが空をみあげる!

 常識的な重量を遥かに超越したメタルのカタマリ的な船体が、海面から宇宙へと飛翔を開始する!

「イービル・トゥルース号! 発進! 宇宙へ帰るぞ!」

 永遠に続く夕焼け色の空をブ厚い硬化テクタイト製窓の先に見て、無免許もぐりの航海士の声が艦橋に響く!

「反重力装置出力最大。メインエンジンオーバードライヴ。補助動力機関稼働順調。船体姿勢制御に問題なし」

 タッヤの冷静な計器読み。

「レーダーに感なし。周囲にSS艦ありません」

 とAXE。

「これよりもっとも手近なグラジ・ゲート方向に大気圏を飛翔ひしょうしつつ、最終的に本船はこの星の重力圏から脱出します」

 ミーマが状況を冷静に解説。

「ジュウリョクカラバックレロ!」

 とは、イクト・ジュウゾウ。

「くそがぁぁぁぁっ!」

 銀河一逃げ足の早い操縦士が、この星でずっと遊んでおいでよと、甘い誘惑で縛り付ける重力から全力逃走を開始する!

 深海に潜伏を強いられ、沈黙していた海賊放送船イービル・トゥルース号は、いまふたたび宇宙に向かって空を翔ける!



「コリオリの力で若干針路にブレがみられます。もっとも近いグラジ・ゲートへの直行のため、進路を方位17へ修正」

 ミーマの提案に

「くそが」

 とネガは答えて操縦桿を若干倒す。

「来る時は景色を楽しむ余裕もなかったからな。船外画像をメインモニタに映して楽しもうか」

 アークがめいいっぱい倒した自席からゆったりと提案。

「二度と訪れることもないかもしれないもんね」

 そう言ってミーマが操作盤を叩く。

 艦橋前面の硬化テクタイト製窓に、船体の下に広がる夕日に染まる海の画像。

「なんか見えるね」

 サディが投影される海面に目をこらして言う。

「ん?」

 アークがシートから身体を起こして目をこらす。

「海面から出てるのは……建造物だな?」

 アークが言う。

「拡大しますか」

 ミーマが操作盤を叩く。

 海面にズームした映像が映し出したのは、完全に朽ち果てた超高層建築が海面からのびている姿だった。

「これ……。水没してる?」

 サディが、むー? という表情で言う。

「多分そうだな。デザイン的に、海中の建造物として意図して作られたものじゃないな」

 とアーク。

「銀河ヒッチハイクガイドに書かれている、ほとんど無害というのは……。超高層建造物が水没して完全に朽ちているところからみて、この星の知的生命体はもうとっくの昔に滅亡めつぼうしている。ということなんでしょうね」

 AXEがレーダー盤に視線を落としながら言う。

「空中航行中の船から見えるってことは、かなり大きい建造物ですよね。それが完全に朽ちて水没しているってのは、そういうことなんでしょう」

 タッヤが朽ちた建造物の映像に視線を向けながら言う。

「電波状況をモニタしてるけど、放送みたいなものも一切ないなー。でも、やたらと強い周波数の電波がいくつか」

 ミーマが電波をモニタするスペクトラム・アナライザを確認して言う。

「ということは? 何か電波を出すものがまだ動いている?」

 アークがそう口にした時、投影される映像に陸が映る。

「うわ……。めっちゃ船の残骸だらけ……」

 サディが海辺に打ち上げられ、朽ち果てた船の残骸ざんがいをみつめて言う。

「船以外にも……。デッカイ六本足の巨大な蜘蛛クモみたいなやつが、海辺にぽつんと立ってるな」

 アークが海辺に打ち付けられた船の残骸の中から、特徴的な存在をみつける。

「立ってるってことは、まだ生きている知的生命体が乗ってるのかな?」

 サディが映像をみつめて言う。

「長いあいだ放置されているみたいだし、ピクリともしない。遠い昔に放棄ほうきされたんじゃないかな」

 とアークは言った。

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