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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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深海1500メートル48時間後

深海1500メートル48時間後




「さあて、そろそろお外に出てもいいころだよな」

 艦橋最前列、ぶ厚い硬化テクタイト製窓の前で、アークはのびをしながら言った。

「さすがにもうあきらめただろうねえ」

 サディはつまらなそうに、リボルバーカノン型の主砲操作桿を指で突きながら言う。

「ご不満そうですね?」

 水中ではまったく役に立たないレーダー盤に、退屈そうなAXEが言う。

「ブラックレーベルをご禁制にするような、愛を知らないひとでなしのシンセティック・ストリームを、二〜三隻沈めたい気持ちはよーくわかりますー」

 ミーマがイカツイシートの上で足をぶらぶらさせて言う。

「沈めるのは中身の詰まった艦がいいです。シンセティック・ストリームの艦なんて、ピンハネ中抜きの中身スカスカで、襲ってもなんの実入りもありません」

 タッヤが計器類を確認しながら、ガチの海賊みたいなことを言う。

「ヒハカイケンサデ、ナカミヲカクニンシテカラブッパナセ」

 とはイクト・ジュウゾウ。

「くそが」

 とネガ。

「あたしはもうけとか関係なく、奴等にブッ放したいだけだけどね」

 サディは口をとんがらせて言う。

「まあまあまあまあ。せっかくたんまり稼いだ後で、意味不明の追跡にあって、どっかんどっかんブッ放してまた貧乏生活ってのもつまらねえじゃねえか。48時間もすりゃあ、鳥頭のアホウタロウなシンセティック・ストリームは俺達のことなんかとっくの昔に忘れてる。そういうわけで浮上と行こう。メインタンク! ブロー!」

 とアークは言った。

「アーク……。この船にメインタンクはないんですよ……」

 タッヤがいつものセリフを返し、反重力装置の逆転率を低下させる。

「反重力装置逆転率低下中。イービル・トゥルース号浮上します」

 深度1500メートルの深海から、海賊放送船イービル・トゥルース号が浮上を開始する。

 アークはヘッドセットマイクのスイッチを入れて、機関室に通信を接続。

「機関長、コタヌーン殿。海上に浮上後、念の為にシンセティック・ストリームのクソ野郎どもがいないか様子を見てから、この星の重力をふりきって宇宙へと帰る。メインエンジンをぶん回す準備を頼む」

「承知ですわぁ。万が一のもしかして、クソ野郎がいた時にも備えて、この子をぶんぶんぶん回せるようにしておきますわぁ」

「まあ、シンセティック・ストリームがいようといなかろうと、宇宙に帰るためにもぶん回してもらわないといけないしな」

「ですなぁ」

 コタヌーンの返事にアークはうなづき、徐々に海面に近づき明るくなっていく艦橋前面のブ厚い硬化テクタイト製窓に視線を向ける。

「バイバイ。美味しいお魚さん」

 サディがさびしそうに窓の外を泳ぐお魚達に手をふる。

「また食べたいか?」

 アークの言葉に

「次は刺し身で、がいいね」

 とニヤリと笑ってサディは返す。

 アークはさすがだな。という表情で眉をあげると、海面がみえはじめたブ厚い硬化テクタイト製窓から差し込む光に目を細めた。



「海上からのレーダー走査では、SS艦の存在は確認できません」

 AXEが復活したレーダー盤をみつめて言う。

「よしよしよしよし。鳥頭なアホウタロウのシンセティック・ストリームどもがいないウチに、宇宙に帰ろう」

 アークはのびをしながらそう言った。

「大気圏外で、私達が宇宙にあがってくるのを待ち伏せしている可能性があります」

 ミーマが冷静に状況を分析。

「そうだな。万が一のもしかして、それに備えるというのは大事なことだ」

 アークはそう言ってポッケから、どこかの銀河の古本屋で買った、俺にとっての最新版の銀河ヒッチハイク・ガイドを取り出す。

「またそれですか」

 AXEがあきれたように言う。

「最新版はたけえんだよ」

 アークはそう言うと、パラパラとページをめくり

「まあ、だいたいこのあたりだろ」

 と言った。

「ウチの航海士は本当にダイジョブなんですかね?」

 AXEが目を細めて言う。

「なんてったって、無免許もぐりですからね」

 ミーマが緑の瞳の目を細めて言う。

「試験も通ってねえし、免許もなにもありゃしねえけど、渡り歩いてきた銀河の数はハンパねえぜ? しかもその実力を証明するのは、この船がなんと言っても存在しているという邪悪なる真実だ」

 アークが振り返ってニヤリと笑う。

「で? 無免許もぐりの航海士の、後腐あとくされなく後悔こうかいのない航海計画は?」

 タッヤが冷静に先を即す。

「幸いにして、俺達がいる宙域の近くには、グラジ・ゲートが多い宙域だ。宇宙にあがってシンセティック・ストリームが待ち伏せしてたら、一番手近なグラジ・ゲートに全速力でとにかく突っ込む。グラジ・ゲートの先で急速反転、追ってきたところを滅多撃ちにしてやるよ!! と牙をむいて待ち伏せしている俺達の目の前に飛び出る度胸なんざ、奴等にはこれっぽっちもありゃしねえよ。シンセティック・ストリームのクソ野郎どもは、クソをちびって追っかけてもこれねえってこと」

 パタンと、俺にとっての最新版の銀河ヒッチハイクガイドを閉じて、アークは得意げに言う。

「俺にとっての最新版の銀河ヒッチハイク・ガイドがどれだけ古かろうが、銀河のデフォルト・オブジェクト扱いのグラジゲートなら、いまも間違いなく存在しているはずですし、信用はできますね」

 AXEが冷静に言う。

「手近な穴にとにかく突っ込む……。というのはなにか野蛮やばんな魅力を感じるぅ」

 とはミーマ。

「大変経済的で喜ばしい航海計画です」

 とはタッヤ。

「グラジ・ゲートから出てきた奴には、沈むまでブッ放していいってことだよね」

 とサディが不気味に笑う。

「イイカゲン、マトモナホンヤデ、シンピンヲカイヤガレ」

 とはイクト・ジュウゾウ。

「それでは、もっとも手近なグラジ・ゲートへ一直線で宇宙に帰るぞ!」

 アークの言葉に

「くそが!」

 とネガは床までスロットルを叩き込む。

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