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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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イービル・トゥルース号乗組員食堂の惨劇

イービル・トゥルース号乗組員食堂の惨劇




「海賊放送船なのに、新鮮な魚介類とは無縁なの? ってサディに言われちまったからな」

 はっはっはっはっと笑い、アークが次々に料理を出してくる。

 イービル・トゥルース号乗組員食堂の食卓の上には、煮魚、焼き魚、魚のフライ、魚介鍋、様々な魚料理が次々並ぶ。

「ジュウゾウの分析によると毒はない。しかしさすがに、未知の星の未知の海の未知の深海の未知の魚をピチピチのナマで食うのは、未知の病にかかってヤヴァイかもしれん。ということで、今日のところはどれもこれも火を通すことにした」

 そう言って、胸部分にデッカイパンダが描かれたエプロン姿のアークが、ふふんと胸を張る。

「おおお〜!」

 サディは大好物のナマモノがないにも関わらず、食卓の上に勢ぞろいした未知の魚介類料理にいろめきたつ。

「……いつのまに……釣りに……。ここは深度1500メートルの深海なのですけど……」

 目の前に並んだ未知の魚介類料理達に、タッヤがゴクリとつばを飲んで言う。

「格納庫のエアロックに海水引き入れて、ジュコジュコ排水したら、何匹か床にころがってたのよ」

 アークがまた胸をはって言う。

「なんということを……」

 滅茶苦茶な船の使い方に、コタヌーンとオクタヌーンが絶句する。

「せっかく未知の星に来たんだし、この星を味わってみたくはないか?」

 そう言ってアークが、大皿から料理を取りどんどん渡してくる。

「あの……。アークが最初に食べてみていただけません?」

 AXEが目の前に横たわる、見たことのない魚まるまるの焼き魚をみつめて言う。

「んー? 味見で多少食ったがなんともなかったぞ?」

 と言いつつ、アークがフォークを未知の魚のフライにブスリと刺して、がぶりとかぶりつく。

 もしゃもしゃもしゃもしゃ……

 乗組員一同がみつめる中、アークの中に未知の魚のフライが消えていく。

 もしゃもしゃもしゃもしゃ……

「うまい!」

 アークがほこらしげに宣言した時……

「大変だ! アーク! 尻尾が生えてきてるよ!」

 サディが立ち上がって、アークのお尻を指差して言った!

「なにッ!?」

 アークはびっくりして自分の尻をみる!

 確かにそこには、真っ白いふわふわが生えている!

「やっぱり食べちゃだめなヤツなんじゃないですかぁー」

 タッヤの絶望的な声が乗組員食堂に響きわたる。

 だが、アークはこれっぽっちも動揺どうようすることもなく

「これは、エプロンのデザインだな……」

 と言った。

「尻尾付きのパンダエプロン……」

 ミーマが緑の瞳を点にして言う。

「どうだ? 可愛いだろう?」

 アークはデッカイパンダの描かれたエプロン姿の胸を張り、キリッと表情をひきしめてそう言った。



 未知の星の未知の海、深度1500メートルの未知の深海での潜伏生活の時は過ぎていく。

 サディはアークが開発した深海漁法にはまり、未知の魚をエアロックで捕獲ほかくしては、ジュウゾウのもとに持っていって分析させて、ジュウゾウからめっちゃくちゃウザがられた。それでも、ホントに食べてはいけないヤヴァイものも何匹かいたし、基本的に真空冷凍冷蔵庫にぶちこまれた物か、長期保管可能な加工食品によってまかなわれるイービル・トゥルース号の食事が、一気に豪華になったのも確かだった。


 AXEはイービル・トゥルース号の船員食堂で、サディが獲ってくる未知の魚の調理に、アークと共に頭をひねって過ごした。

 アークは白身魚はとにかくフライにしたがり、白身魚以外は断じてフライにしたくない。という意味不明なこだわりをみせて、AXEを大変困惑たいへんこんわくさせた。


 ミーマは船内庭園に遊びに行き、人工照明ながら恒星に近い成分に調整された光を浴びながら、かなりの範囲の銀河でご禁制品になってしまったブラック・レーベル(通称BL)作品を読んでいた。

 ああ、本当に日の当たる場所で、こういう物が自然に手に入って、普通に読めるようにしなくちゃ。

 ミーマはそう思いながら、シンセティック・ストリームに対抗しうる海賊放送船の乗組員であることにほこりを感じたりもした。


 コタヌーンは相変わらずパンダ船長のご英断を無視して酒を飲み、食堂に現れる時だけシラフでいた。

 オクタヌーンは相変わらずの夫に、特に何か言うこともなく、食堂に行く時だけはシラフであるように監視していた。


 タッヤは

「これは食べれるのですから、船の真空冷凍冷蔵庫にたっぷり保存して、食費の倹約に役立てるべきです」

 と深度1500メートルの深海魚の保存貯蔵を強く主張したのだが……

「新鮮な魚介類以外は食べたくない!」

 というサディの恐ろしいまでの強気な発言に強い衝撃しょうげきを受け、タッヤは大変がっかりかつションボリしてしまった。


 システム監視に移行した艦橋では、イクト・ジュウゾウとパンダ船長が不眠不休で船を見守り、ただの一回もSS艦の気配は確認されなかった。


 特に逃走する必要のない、深度1500メートルの深海での生活に退屈しているのか、今日もネガは

「くそが」

 と言って時を過ごした。

 

 たった一隻でシンセティック・ストリームに対抗しうる、ビックリドッキリ驚愕驚異きょうがくきょういの宇宙戦艦、海賊放送船イービル・トゥルース号の潜伏時間は、そんな感じに刻一刻と流れていった。

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