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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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アイアン・ボトム・サウンド銀河、公宙域事変

アイアン・ボトム・サウンド銀河、公宙域事変




 ぽかーん。とする全乗組員を前に、アークはフフンと話を続ける。

「そんでもって、まあいろいろあって、クソグロいブツをとっ捕まえて、コイツを閉じ込めるおりがわりの箱を作っていたらだ。宇宙空間をふわふわ漂ってくるものが、コツンと俺のモビルトルーパーにぶつかりやがった。なんだこれ? と思ってみれば、一枚の古いデータディスクじゃねえか。俺の脳は回転したね。このクソグロいブツをとっ捕まえることができたのも、もともとは古い古い戦記モノからもってきた情報なわけでもあるし、偶然俺にぶつかってきたこの古いディスクにも、なにやらとんでもない情報が記録されているんじゃないかってな」

 そう言ってアークが、濃紺のミリタリージャケットのポッケから、現代のハートウェアで読み取り可能なメディアに焼き直したディスクを取り出す。

「中身はどれぐらい昔かわからない過去からやってきた音楽だった。いつかどこかの戦場で、この音楽を聞いて戦った者がいるのかもしれない。いつかどこかで、俺達みたいなお宝見つけ隊がこの音楽を聞いて、宇宙の深淵しんえんに挑んだのかもしれない。その真実は誰にもわからないのかもしれない。だけど、単純に、俺はこの曲が心の底から気に入った。だから、こいつをかける」

 アークはそう言って、データディスクを操作盤の読み取りドライブに突っ込み、いつかどこかの過去からやってきた名もなき音楽を、ナイン・シックス・ポイント・ナイン96.9銀河標準メガヘルツにのせて、あの歪んだサウンドと躍動するビートを宇宙へと送り出した。

「よし、曲が終わったら、本日の海賊放送はここまでだな」

 アークはヘッドセットマイクのスイッチを切って言った。

「おつアーク」

 ミーマがいつもの真っ黒いコーヒーを差し出す。

「おお、ありがたき。ナイコーヒー」

 アークは感謝の心を込めて真っ黒いコーヒーを受け取り、いつものようにコーヒーをがぶりと飲んだ。

 ミーマが自席に戻ろうとした瞬間。アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋を赤く染める警告ランプが点灯! 耳をつんざくアラートが鳴り響く!

「射撃レーダー照射ッ!?」

 ミーマの声に、タッヤが文字通り自席にすっ飛んで、対抗障壁領域展開を開始する。

「領域展開……」

 タッヤが完了を告げる前に、艦橋前面のブ厚い硬化テクタイト製窓が強烈な閃光に染まるッ!

 ズッガーン! ドッガーん!

 極大威力のビーム兵器が対抗障壁によって相殺そうさいされ、発生した電磁的衝撃波が船体に干渉して生み出される轟音。

「直撃ッ!?」

 振動に揺れる艦橋を走るサディが自席に飛び込み、四点支持の戦闘用ハーネスをガチガチつないで、深紅と漆黒の和服姿をイカツイシートに固定する。

「直撃です。対抗障壁の展開がギリギリ間に合いましたが、現在使用率3%。補助機関への接続と冷却を急ぎます」

 タッヤの言葉に、コタヌーンとオクタヌーンが機関室に向かって艦橋を飛び出していく。

「射撃飛来方向、方位270仰角40度。同方位の先に艦影を確認! 宇宙戦艦ないし巡洋戦艦と思われます!」

 自席に飛び込んだAXEがレーダー盤を確認!

「ああっ!? い・き・な・り・当ててきただと!?」

 アークが真っ黒いコーヒーの入ったカップを手にしたまま、理解不能だぞ、という顔をする。

「ブッ放すよね!? アーク!」

 サディが主砲照準器にお顔を突っ込み、方位270仰角40度に主砲を急速旋回させつつ言う。

 サディの言葉に、アークの脳が急速回転。

 宇宙の常識として、レーダー照射即斉射、などというのは戦時中においての基本であって、通常平時の宇宙航行ではあり得ない。

 いまこの瞬間に行われたことは、言ってみれば、路上ですれ違う見ず知らずの相手からいきなり銃で撃たれたに等しい。

 やられたらやりかえせ。まだ法律なんてものが整備されていない宙域にあっては、それが基本ではある。のだが、正体不明の相手から恨みを買うような覚えは……ないな。System Schutzstaffelの艦ならありえなくもないが……。

「艦影照合完了! System Schutzstaffel巡洋戦艦!」

 AXEがレーダーから割り出した艦影を照合、いきなりブッ放してきた相手の正体を明かす。

「当たりかよ」

 アークは真っ黒いコーヒーをがぶりと飲んで、サディに視線をうつす。

「いくよ?」

 サディはすでに、リボルバーカノンを模した主砲操作桿の引き金に指をかけている。

「交戦するなら、船長の許可をいただいてからだ」

 アークは真っ黒いコーヒーをがぶりと飲み干しそう言った。

 艦橋前面、ブ厚い硬化テクタイト製窓に再び強烈な閃光が走る。

 ズッガーン! ドッガーん!

 極大威力のビーム兵器が対抗障壁によって相殺そうさいされて、発生した電磁的衝撃波が船体に干渉して生み出される轟音と振動。

 System Schutzstaffel巡洋戦艦からの第二斉射が、イービル・トゥルース号に直撃する。

 いきなりの戦闘状態への突入に、艦橋のいつもの面々の視線が、艦橋最奥に鎮座ちんざするイカツイ艦長服のパンダ船長に集中する。

 突然の砲撃にも一切動じることなく、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる宇宙をみつめて、パンダ船長は……

「ぱふぉっ!」

 と言った。

「アーク! 船長はなんて!?」

 主砲照準器にお顔を突っ込み、リボルバーカノンを模した主砲操作桿の引き金に指をかけたサディが、牙のように尖った犬歯をむき出しにして問う。

「たっぷり稼いだ後に、無駄弾撃って無駄にする理由はねえ。ケツマクってとっととずらかれ! 船長はそう言った」

 アークの言葉に、サディは主砲照準器から顔を引きがして銀髪を揺らし

「まじかぁぁぁぁっ!?」

 とアークに叫ぶ!

「イービル・トゥルース号、全力逃走! 了解ッ!」

 ネガは元気一杯120%の気合で答え、床までスロットルを叩き込む!

「7000万ゼニーも稼いだんだ! ドッカンドッカンドッカンドッカンくらいやっても、全然フトコロなんて痛くも痒くもないじゃない!」

 サディが吠える!

「機関室応答了解! メインエンジン! 出力オーバードライブに入ります!」

 タッヤが銀河一逃げ足の早い操縦士の要求に、正体不明の出力を叩き出すエニグマエンジンが応えることを告げる。

 アークは自席にようやく座ると、通常航行用の簡易シートベルトをゆったりとつけた。

「System Schutzstaffel巡洋戦艦。加速接近中。本船を追跡に入りました」

 AXEがレーダー盤から敵艦の動きを告げる。

「現在位置、アイアンボトムサウンド銀河公宙域、ポイントセブンナインエイトフォーシックス。イービル・トゥルース号はこれより、全力逃走行動に入ります。艦内重力制御は基本安定ですが、敵艦は完全交戦状態と判断します。各員、対戦闘態勢。各員、対戦闘態勢」

 ミーマの状況分析に、アークは

「あらま」

 と言った顔をして、サディと同様のイカツイ戦闘用ハーネスをガチガチと接続する。

「バックレるなら、いつものヤツをブッ放すよ! アーク!」

 サディが返事も待たず、リボルバーカノンのトリガーを引き絞る!

 ズッガーーーーーーーン!!!

 今どき宇宙空間戦闘ではあり得ない、爆薬式の主砲が火を吹く轟音が艦橋中に鳴り響く!

 轟音と共に橙色だいだいいろの閃光に染まるブ厚い硬化テクタイト!

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 アークは叫び、お手々にしっかりコーヒーカップを握りしめる!

 艦首、艦尾、それぞれの主砲が反対方向に発射する強烈な反動が生み出す回転力で、イービル・トゥルース号は大回転!

「くそがぁぁぁぁっ!」

 主砲発射の生み出した回転力にあらがうために、全力で反対方向に操縦桿を倒しながらネガが叫ぶ!

 ブ厚い硬化テクタイト製窓の外は、すべての光が流れる大流星群ッ!

「うぉぉぉぉぉぉ」

 アークはコーヒーカップを握りしめたまま、まるで遊園地のコーヒーカップに乗っているかのように叫ぶ!

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