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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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鉄拳制裁とアイアンクロー

鉄拳制裁とアイアンクロー




 キャンディアップルレッドの左腕に仕込まれた、爆薬を爆裂させる雷管を撃針が叩く!

 薬室内で爆薬と酸化剤が急速燃焼し、生み出された爆発力がピストンを強烈な力で押し出す!

 薬室内での爆発を運動エネルギーに変えて爆進するピストンは、モビルアーマーの鉄拳に機械的に直結されて、化学力と工業力が生み出した重金属製の鉄拳を標的へと叩き込む!

 ドッカーーーン! ズッガーンッ!!

 爆薬の爆発音と、悪霊退散と書かれたクソ重たい鉄拳が標的に直撃する轟音が、操縦席に満ちるッ!

「マジうるせぇぇぇぇ!」

 宇宙空間の静寂に慣れきっていたサディは、機体を伝わって操縦席に満ちる騒音に絶叫!

「気ぃ抜くんじゃねえ! 一発で終わると決まってるわけじゃねえ!」

 アークからの通信が、さらにサディの耳に追い打ち!

「わかってるよッ!」

 サディが今ぶん殴ったばかりの、ぶっ飛んでいく標的を追う!

「動かなくなるまで叩きこめ!」

「だからわかってるよ!」

 サディはスラスターを吹かして標的に接近、照準を再びあり得ないようなキモイブツに合わせる!

「ひぃぃぃ」

 さっきは一瞬しか見えなかったからダイジョブだったが、あらためて照準の中にとらえたブツはマジデキモい!!

 ドッカーーーン! ズッガーンッ!!

 悪霊退散鉄拳制裁第二撃命中ッ!

 だがしかし、だがしかし! キモいブツはまだかすかに動いてるッ!

「3発殴ってぇ! 撃破せよぉぉぉ!」

 ドッガーーン! ズッガーーン!

 サディの絶叫とともに、3発の目の悪霊退散鉄拳制裁がマジでキモいブツに直撃するッ!



「タッヤ! いますぐこいッ! とにかくこいッ! 大至急! 大至急!」

 突然がなりはじめた無線に、タッヤがGTZの操縦席でぴくりと震える!

「お宝ですねッ!? お宝なんですねッ!?」

「いいからこいッ! 大至急来いッ!」

「タッヤ! Get The Zenny! いっきまーす!」

「オタカラノ、メイサイショガタノシミダ!」

 タッヤはGTZのスラスターを吹かしに吹かして、アークとサディのもとにジュウゾウを背負って大穴の中へと急行するッ!

 

 

「えええええ……。なんですかぁ〜。これぇぇぇぇ……」

 タッヤはモニタの中にうつるクソグロいブツに震え上がった!

「いいからつかめッ! こいつをGTZのクローでつかめッ!」

 アークが再び搭乗したブルーナイトメアとサディのキャンディアップルレッドが、ワイヤーケーブルでギッチギチにクソグロいブツをぐるぐる巻きにしながら言う。

「いやですよぉ! こんなの触りたくないですよぉ!」

 タッヤは操縦席の中で、全身の羽毛を総毛立たてせて言う。

「GTZだよ! 触るのはGTZ!」

 アークの言っていることは頭ではわかるのだけれど、タッヤの気持ちがどうしてもわかりたくない! いやだいやだと絶叫するッ!

「平気で宇宙戦艦の構成素材に爪痕つけることからして、こいつは桁外れのクソ馬鹿力の持ち主と思われる! このワイヤーケーブルごときじゃ、目を覚ましたらぶっちぎって食われちまうぞッ!」

 アークからの通信に、タッヤはガチな恐怖でガチガチくちばしが鳴る!

「それならGTZのクローでもダメなんじゃないですかぁ」

 ガチガチガチガチ。

「ダイジョブだ! GTZのクローは資源採掘用重機のクローを流用して使ってる! そいつで挟めば、どんな奴だって身動きとれねえよッ!」



「いやだ! いやだ!! いやだ!!!」

 と珍しくだだをこねるタッヤに

「こいつはクソ珍しい宇宙の神秘だ! 奇跡だ! 激レアだ! これを売っぱらえば、アホみたいにゼニーが入るぞ!!」

 とアークがなだめてすかして、騙し込んで丸め込み、ついにタッヤは……

「ひぃぃぃぃぃ」

 と言いながら、クソグロいブツをなんとかGTZの資源採掘用重機からの流用クローで捕獲した。

「これ、金属食べませんよね? ダイジョブですよね!? クローを食べて、腕食べて、操縦席まで食べないですよねッ!?」

「多分ダイジョブだ! 仮に食うとしても、ガッチリ身動きとれないように、クローでつかんでりゃダイジョブだ!」

「それ、ホントにダイジョブなんですかぁぁ?!」

「ダイジョブだ! タッヤ、考えても見ろ! クソデカいドーナツの穴にすっぽりズッポリ足の先から胸あたりまでハメられて、身動きとれなくなったら、ドーナツ食って脱出しようにも、ドーナツまで口が届かなきゃどうにもならねえだろ!?」

「まってくださいよ〜。このクソグロいブツにとっては、GTZのクローはドーナツみたいなものなんですかぁ?!」

「ものの例えだ! とにかく、コイツが目を覚ますまえに、もっと強烈にふん縛る必要があることにはかわりねえ!」

 珍しく完全に取り乱すタッヤをアークに任せ、サディは悪霊退散鉄拳制裁の照準をクソグロいブツにあわせつつ、ぴくりともしようものなら、バッコンバッコン悪霊退散鉄拳制裁で再び動かなくなるまで殴る気満々。

 アークはタッヤを必死でなだめてすかしてだましながら、近接戦闘特化のクソゴツいブツをクソグロいブツにしっかりむけている。

 クソグロいブツをクローで掴むGTZから、サディのキャンディアップルレッドの背中に移動したジュウゾウが

「ダイシキュウ! カイブンショヲトリニコイ!」

 とイービル・トゥルース号に通信を送っている。



「絶対に反対です」

 艦橋前面、ぶ厚い硬化テクタイト製窓の外に浮かぶ、あらゆるブツでガチガチに拘束されたクソグロいブツをちらりと見てAXEが言う。

「あれはヤヴァイですよぉ〜」

 ミーマが同じく窓の外をちらりと見て言う。

「あー、こういうの、持ち帰ろうとすると、ろくなことにならないのが定番だからなぁ」

 コタヌーンが、これはいかんなぁ、という表情で硬化テクタイトの先をみつめる。

「データを取って判断したいですが、あれのデータを取りたくもないです。なので反対」

 オクタヌーンが、苦笑いしながら言う。

「可愛い女の子としては、あんなキモいものを船に持ち込むのはねぇ」

 さきほどガンガンにぶん殴ったブツを、目を細めてみつめてサディが言う。

「クソが」

 ネガは硬化テクタイトの先に浮かぶ、クソグロいブツを見もしないで断ずる。

「私はあれに触ったんですよ! ここまできたら、あれを売っぱらってゼニーに変えないと気がすみません!」

 珍しくぷんぷんに怒ったタッヤが主張する。

 うーん……。

 という空気が一瞬流れるが……

「あれはヤヴァイでしょ」

 という空気が再びアイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋に戻ってくる。

 腕を組んでぶ厚い硬化テクタイト製窓の先に浮かぶ、クソグロいブツをみつめていたアークが静かに話し出す。

「俺はタッヤに賛成だ。仮にだ、コイツを主砲ブッ放してぶっ飛ばしてぶっ殺したたところで、コイツが最後の一匹だとはなんの保証もない。これだけは言っておく。俺はもう、あの艦に入るのはごめんだぞ。しかし、この船のお財布がいまだからっけつであることは変わりがない。つまり、まだまだお宝探しは続けないといけないということだ。俺以外の奴が、あの通路の先に行くしかないってことになるが、よろしいか?」

 アークの言葉に、全員の表情が変わる。

 それは……。

 無理……。

 機関動かす仕事だしなぁ。

 機関のデータを調査するのが本分だし。

 可愛い女の子が入る場所じゃないし。

 とっとと売っぱらっちゃいましょう!

 ケイヤクショヲダシヤガレ!

 くそが!

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