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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪

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ナニカ?

ナニカ?




「モビルトルーパーで行けるはここまでだな」

 極大威力のエネルギー兵器があけた大穴の最深部で、アークが言う。

「えええ……」

 艦内にいるであろう死体に怯えるのではなく、艦内にまったく死体がないことに怯えてはじめていたタッヤの声が震える。

「マジですか? アーク。マジデ降りてこの先に行くんですか?」

 タッヤはぶるぶる体を震わせてアークに問う。

「幽霊より、財務的な破綻のほうが怖いんじゃなかったのか?」

「いえ、まあ、そうだったんですけど……。この艦、やっぱり変ですよ。死体はひとつもいないし、なんだか……」

「なんだか?」

「ナニカ最近までいたような感じが……」

「ナニカ最近までいたような感じ?」

「みてくださいよ、そこの壁というか……。ビーム兵器で溶けた後に、冷えて固まった部分だと思うんですけど……」

「ふむ?」

 タッヤのGTZがクローで示す場所に、アークが探照灯を向ける。

 そこには、溶けた金属が固まってできる異様なまでに有機的な形態の壁に、ナニカ手のような物でつけられたとおぼしき引っかき傷がついている。

「引っかき傷がついてます……」

 無線からタッヤの怯えきった声が響く。

「いや、こんだけしっちゃかめっちゃかなら、漂っている破片でこういう傷くらい、あとからつくんじゃないのか?」

 アークが冷静に言う。

「では、アーク。あっちの壁もみてみてください」

 タッヤが再びGTZのクローで、別の場所を示す。

「ふむ?」

 アークが再びクローの先に探照灯を向ける。

「みてください。まったく同じ引っかき傷です。偶然とかでまったく同じ引っかき傷が違う場所に、漂流物でつくとは思えません」

 タッヤの言葉に、アークは操縦席でフムムムと考える。

「前にこの艦にきた、俺たちみたいなお宝見つけ隊のものでは?」

「だとしたら、私達は完全に出遅れです。お宝はもう見つけられちゃってますよぉ」

 タッヤの悲しそうな声。

「サディとジュウゾウに聞いて……。いや、どうかな……。サディがビビっちまうかな?」

「いや、話してください。正直、みんなでビビって、船長のご命令のようにケツまくってバックレたいです」

 タッヤの声に、アークはムムムとサディへの通信をONにする。



「え? なに? 壁を調べろ?」

 サディはアークからの通信に、小首をかしげる。

「この壁にナニカ価値でも? え? 爪痕みたいなやつがないか?」

 サディはアークからの通信にこたえて、探照灯をカオスな大穴の奥から周囲の壁にむけてみる。

「え? なにこれ?」

 言われてみると……。ビーム兵器やエンジンの爆発で溶けた後に固まった有機的なフォルムの金属塊に、爪痕のような痕跡がいくつかある。

「あるよ。アーク。爪痕みたいなやつが複数」



「タッヤと非武装のジュウゾウは、ここで待機。なにかあったら全力でイービル・トゥルース号に逃走だ」

 アークからの無線が冷静に告げる。

 これはガチで危険かもしれない。とタッヤが強く主張し、お宝が眠っているんじゃないかと思われる宇宙戦艦から一旦全員で離れたのだが、アークがやっぱり大穴の中を探ると言い出したのだ。

「マジですか。本気ですか。本当に行くんですか。いったいどんなことが起きるかまったくわからないんですよ」

 再度大穴に突入しようとするアークに、タッヤが言う。

「まったくわからないからこそ、俺は行きたくなる」

 アークは本当に意味がわからないことを言うと、タッヤは気が遠くなりつつも思う。

「ナニカあったらどうするんです?」

「ナニカあったら、次の海賊放送のネタにもなるしな」

「次の海賊放送ができなくなるかもしれないじゃないですかぁ」

「ダイジョブだ」

「何がダイジョブなんですかぁ」

 タッヤの悲壮な声に、サディからの通信が割り込んでくる。

「爪痕がある。ということは、少なくとも幽霊じゃない。幽霊じゃないということは、物理攻撃がバチバチに通じる。物理攻撃が通じるのなら、アークの近接戦闘特化型のブルーナイトメアと、ヘヴィマシンガン装備のこのキャンディアップルレッドが組めば、宇宙の墓場を根城にするモンスターも簡単にハンティングよ」

「サディさんは、さっきまで結構ビビってたじゃないですかぁ。なんで強気になっているんですかぁ」

「弾が当たるのならば、どうということはない。ということよ」

「そんなぁぁぁ……。また意味不明なことをぉぉぉ」



 結局。バックアップとしてタッヤとジュウゾウは宇宙戦艦の死骸の外に待機。

 アークとサディは、より爪痕の多かった艦尾のカオス極まる大穴から、再突入にむかっていた。

「コウキシンガキドウヘイキヲ、ブッコワサナイトイインダガ」

 タッヤの駆るGTZの背面大型キャリアーに乗った、イクト・ジュウゾウの不吉な言葉が宇宙の墓場に響く。



「さあて、どうする? アーク?」 

 サディが艦尾のめっちゃくちゃに破壊された、カオス極まる大穴を前に言う。

「俺は好奇心旺盛で野蛮極まる戦争屋みてえなもんだが、常に相手をなめてかかる無能というわけじゃない。まずは音から調べよう」

 そう言ってアークが宇宙戦艦の死骸にとりつく。

 宇宙空間は真空のため、音が伝わらない。だからアークは機体を宇宙戦艦に接触させ、モビルトルーパーの稼働を停止させた状態で、宇宙戦艦の死骸全体の音を聞いてみることにした。

「ブルーナイトメアの稼働を一時停止する。ナニカあったら、ブッ放して俺を助けてくれ」

「承知」

 アークからの通信に、キャンディアップルレッドの悪霊退散と書かれた鉄拳の親指を立ててサディが返す。

「念の為に言っておくが……。ヘヴィマシンガンで俺ごと撃つなよ。その弾、間違いなく操縦席の俺まで届くからな」

「もち承知」

 うわっ。ヤバ。マジカ。ナニカ現れたら面倒くさいから、アークの機体ごと撃っちゃえと思ってた。

 そんなことはちらりとも見せず、サディは冷静に応答。

 アークの駆るブルーナイトメアが宇宙戦艦にはりついたまま稼働を停止する。

 無音になった操縦席の中で、アークは耳をすませる。

 沈黙の時間が流れる。

 サディはヘヴィマシンガンをかまえて、ナニカ現れたら蜂の巣に、かつアークは蜂の巣にしないように心をしずめる。

「こいつは……ナニカいるな」

 しばらくして、アークからの無線が驚愕の事実を伝える。

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