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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第二部・アイアン ボトム サウンドの怪
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ヘヴィメタルマシーン・ヘヴィマシンガン

ヘヴィメタルマシーン・ヘヴィマシンガン




 アークの秘策。悪霊退散鉄拳制裁仕様あくりょうたいさんてっけんせいさいしようの、故人こじんをさらにもう一回殴り殺してやるぜ的な、ヘヴィーで野蛮な重金属製人型機動兵器も、サディの恐怖をやわらげることはできなかった。

「例え重金属製の機動兵器の拳であったとしても、幽霊を触るなんてとんでもない! なんてったってあたしは、マシンガン・サディと呼ばれて銀河中でちやほやされてる、こんな感じの可愛い女の子なんだよ! 最低限の最低限! キュートに心臓をブチ抜く飛び道具じゃないと絶対やだ!」

 というサディの反論に、うーむと考えたアークが持ち出してきたのは、船の格納庫のすみに転がっていた六本の銃身を持つ重機関銃。

「こいつを対幽霊仕様の、もっかいどころか、なんべんでも殺してやるぜ幽霊さん、って感じに仕上げれば文句ないだろう?」

 アークが、どうだ? という表情で重機関銃に手をそえて片眉をあげる。

「また……。銃身に悪霊退散って書くだけなんでしょ……」

 サディが、わかってるんだから、という顔でむーっとむくれる。

「まあ、もちろん銃身に怨霊退散おんりょうたいさんとは書くが、しっかりばっちり俺の育った星の悪霊封じの儀式をほどこしてやるからな。その効果たるや、幽霊さんもイチコロの破壊力であることは確定よ」

 そう言って、ちょっと待ってろと手で示し、アークは格納庫を出ていく。

 ……まったく。アークはいつも適当なんだから、とサディはぷんぷんしていたが、よく見れば、なかなかイイ重機関銃ではないか? ともサディは思う。

 六本束ねた銃身は機械式で回転し、相手を蜂の巣どころかお家なんか消し飛んじまいましたよ状態に追い込む速射連射射殺型そくしゃれんしゃしゃさつがた。使う弾薬は20銀河標準ミリメートルあたりだろうか?

 マシンガン・サディと銀河中でちやほやされているスゴ腕の戦闘員とはいえ、20ミリの重機関銃はさすがに生身で撃てないわけで。

 そんなの撃ったら、あたし体重軽いから銀河の果てまで飛んでっちゃう!

 これを重金属製の人型機動兵器でブッ放すというのは、これはもうワクワクしてくるわけで……。

「アークがしっかり、悪霊封じの儀式をしてくれなら……」

 イイかも。と銀河中でちやほやされるマシンガン・サディは思い始めていた。



 五分ほどして格納庫に戻ってきたアークは、全身真っ白い衣装に身を包み、頭に巻いた白い布に2本の携帯照明を挿していた。

「ふむ。アークの和服姿。イイネ。……でも、白装束って……。この儀式ぎしきは腹でも切るの?」

 ちょっとうっとり。重機関銃をなでなでしながらサディは言った。

「あー、腹切らせたい奴はいるが、それは俺じゃない」

 アークは格納庫の床に白い物体をこすりつけ、五芒星ごぼうせいを描く。

「はいはい。そいつをこいつのど真ん中に置きますよと」

 アークがうっとりと重機関銃をなでるサディのもとから、五芒星のど真ん中に重機関銃の乗った台車を移動させる。さらに格納庫のすみに転がっていた重金属製の人型マシーンの頭を五芒星の前に置き、打音検査用に使っていたハンマーをそえる。

「それでは、これより酷葬儀こくそうぎり行う」

 五芒星のど真ん中に置かれた重機関銃に向かって、アークがおごそかに言う。

「酷葬儀?」

 サディがハテナマークを頭上に浮かべるが、アークはそれを無視して大きく息を吸い込み、朗々と儀式に必要であろう文言を述べはじめた。

「あらゆる銀河が暗部へ堕ち、あらゆるものが腐りて崩れ、あらゆる秩序が崩壊しせんとする。暗部の心臓が鼓動躍動暗躍こどうやくどうあんやくせし時。暗部の心臓の息の根を止めし、創造のための破壊者が、あらゆる秩序を超越し、銀河の風となって現れたまわん。万死に値す、銀河を腐らせし暗部の心臓。万死、億兆京、がいじょじょうこう、かんせいさいごく、ごうがしゃあそうぎ、なゆたふかしぎ、むりょうたいすう! 天文学的幾多の死をもってもつぐなえぬ、その重き重き罪悪を、未来永劫再び繰り返させぬため、永久無限彼方の未来終焉、二度と復活できぬよう、この酷葬儀を持って、その暗部の心臓の魂を、永久に煉獄れんごくの底へと封印するものなりッ!」

 アークは朗々と口上を述べつつ、打音検査用のハンマーで重金属製のマシーンの頭部をポクポクとリズミカルに叩きだす。

 おおおお! これは! 私が素敵なデザインでメロメロの、和という銀河世界の由緒正しい魔法。その名もお経というものではないのかッ!

 これは本格的だ本物だマジモンだ! なんだよアーク。やればできるんじゃん! てきとーとか思ってマジごめん! とサディが心の底から反省する。

「銀河に存在するあまねく賢者。この銀河を暗部へと堕とす、暗部の心臓を封じるために、七大賢者よ! 我に力を貸したまえッ! 我に力を貸したまえッ! 暗部の心臓の悪霊を封じるために! 我にぃぃぃ。ちからぉぉぉ。貸したまえぇぇぇ! チョウモンガイコウ、コスパサイコウ、ヒトリシカコナカッタケレド、セイカハイカホド、シュトコウヘイサ、マチハコンラン、コノクニノミライハダイジュウタイ! この銀河を暗部に堕とす、悪霊の魂を未来永劫滅したまぇぇぇぇ! イサイメイサイイッサイフメイ、セイカノホドハナオフメイ、コスパサイコウドブヘトチョッコウ、ヒドイヒドイヤメテヤメテ、コクソ、クソクソ、コクソウギィィィッ!」

 ポクポクポクポク! リズミカルに打音検査用ハンマーが、重金属製のマシーンの頭部をぶっ叩く!

 す! スゴイ! これが和という銀河のお経! 迫力だ! これがアークの育った星で、悪霊を封じるために行われるという儀式……酷葬儀ッ!

 この儀式を受けたヘヴィマシンガンをブッ放せば! どんな幽霊も未来永劫イチコロよ!

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