イービル・トゥルース号 VS SSF支援迎撃隊
本作品には、未開の宇宙からやってきた野蛮人が多数登場いたします。
そのため、大変に刺激的な野蛮極まる発言が、複数回にわたって多数行われる可能性が考えられます。
あらかじめご了承の上、ご覧くださいますようお願い申し上げます。
イービル・トゥルース号 VS SSF支援迎撃隊
「本船が向かう前方の海洋に、SS艦隊の展開を確認。戦艦2 巡洋艦5 駆逐艦8。さらに遠距離から戦艦2 巡洋艦8 駆逐艦多数が向かっています」
AXEがレーダーをみつめて言った。
「大艦隊だな。そこに突っ込むのは得策じゃない。首都のある陸を背にすれば戦艦の主砲は撃ちずらい。陸を背にしたまま逃げきるぞ」
アークは厚い硬化テクタイト製窓の外を飛ぶ、SS支援要撃隊機をみつめながら言う。
「クソがぁッ!」
アークの右隣でイービル・トゥルース号を操作するネガが叫ぶ。
「海上まで2分」
ミーマがモニターをみつめて告げる。
「サディ。準備はいいか?」
アークが左隣のサディに視線をうつす。
「いつでもぶっ放す準備はできている」
サディはつまらなそうに武器管制操作盤をみつめて言った。そして、今度は視線をあげて言う。
「いつものじゃないのを、いまここで撃っちゃだめ?」
アークはサディの目を見つめて言う。
「船長の命令は、とにかくずらかれだ」
「はーい」
サディはため息をついてからそう言った。
ツゲルの眼下に広大な青い海が広がる。
今どき漫画の中でも見かけない、やたらレトロな懐かしい未来感がただようデザインのふざけきった所属不明の宇宙戦艦が、ついに陸上を離れた。
ツゲルは考える。あんな時代遅れの未来感が漂うポンコツ宇宙戦艦。簡単に落とせるのではないか?
System Self-Defense Force SSFが誇る超絶未来感が漂う主力艦達の威容を思えば、あんなむかーしむかしの科学考証激あまアニメにでも出てくる、宇宙戦艦のくせに艦橋付きなどという意味不明な非合理的作りの戦艦などカスみたいなものだろう。
俺はSystem Self-Defense Force SSFに、この星を守るために入ったではなかったか?
しかも、俺が率いるのは、System Self-Defense Force SSF支援要撃隊。この星を守る使命がある。
大気圏重力下でここまで航空機に接近されたら、反重力装置の力で大気圏内を無理やり航行できるとは言え、宇宙戦艦などは鈍重に過ぎる。
あのふざけ切ったマヂキチド腐れ外道の時代錯誤のバカタレポンコツレトロ宇宙戦艦。ビッグウエスト・セブンフリートが相手することもなく、この俺が落としてもいいのでは?
ツゲルはさきほどのやらかしもあり、挽回が必要であることも考え、ションボリするようなダメージを負った通信機を操作する。
「所属不明の宇宙戦艦と本隊は、すでに市街地に影響のない海域に到達している。SSF司令。積極的平和力行使の許可を求む。積極的平和力行使の許可を求む。大気圏内かつこの近距離であれば、宇宙戦艦に対する航空平和力の圧倒的優位さはゆるがない。航空平和力による所属不明艦の平定許可を求む」
SSF司令はしばし沈黙。
司令の思考の流れをツゲルは想像する。いかに相手が首都上空に侵入してきた宇宙戦艦とは言え、ド昔のドアニメに出てくるようなド冗談みたいなドポンコツ宇宙戦艦。ビッグウエスト・セブンフリートを出すまでもない。そう判断することは予想できた。
「こちらSSFモッキンバード司令。市街地への影響なき海域への進入を確認、貴殿支援要撃隊に所属不明艦への積極的平和力行使と平定を許可する。繰り返す。所属不明艦への積極的平和力行使と平定を許可する。これは訓練ではないが、戦争ではない。徹底的に平定せよ。繰り返す。これは訓練ではないが、戦争ではない。徹底的に平定せよ」
「司令部より積極的平和力の行使許可。全機行動準備。司令部より積極的平和力行使許可。全機行動準備」
ツゲルは支援要撃機の武装から安全装置を解除しつつ、ニヤリと笑う。
「重力と大気の中では、宇宙戦艦などただの鈍重な的であることを教えてやる。貴様の命を積極的平和力の行使で徹底的に平定してやるぞ。アーク・マーカイザックとか言うマジキチのド腐れ外道のクソバカ野郎」
艦橋前面、硬化テクタイト製窓にSS戦闘機がまっすぐに向かってくる!
「攻撃くるぞ! 誘導妨害全開! 面舵いっぱい! 衝撃備えろ!」
アークが叫ぶ。
「クソがぁっ!」
ネガが操縦桿を倒し、船体が急激に進行方向右へとロールを開始する。
急速接近するSS戦闘機が、対艦ミサイルを発射!
「対艦ミサイル誘導妨害開始!」
AXEがレーダー波を撹乱する、電波を乱反射させる特殊な煙幕を船から放出。
「クソがぁっ!」
ネガはさらに操縦桿を倒し、艦橋までもが右方向へと傾いて行く。
高速で接近する対艦ミサイルは、電磁波を乱反射させる煙幕により誘導を撹乱され、艦橋をそれて硬化テクタイト製窓から消え、艦橋の後方へと飛んでいく。
「サディ!」
アークの呼びかけにサディがうなづき、武器管制操作盤上の銃をもした操作桿の引き金を引き絞る。その直後、船体後方からの強い衝撃と閃光!
「左舷後方で対艦ミサイル爆発!」
衝撃に緑の髪を揺らしながらミーマが叫ぶ。
「さらに対艦ミサイル多数きます!」
レーダーをみつめるAXEが告げる。
「サディ!」
「全弾叩き落とすよ!」
サディがうなづき、深紅の和服の袖を振り乱して対空砲の操作桿を握り引き金を引く。艦橋周辺及び船体各所に設置された、連装パルスレーザー砲が青い光線を連続発射し、接近するミサイルを次々に撃ち落とす!
激しい爆発音と閃光が艦橋を満たし、船体付近で爆発する爆炎に包まれ、艦橋前面の硬化テクタイト製窓からの視界が完全に塞がれる。
「右舷後方で対艦ミサイル爆発! メインエンジン機関部付近!」
ミーマが告げる二発目の爆発。
アークがヘッドセットを操作して言う。
「機関長、コタヌーン殿。まだ生きているか?」
「こちら機関長、コタヌーン。もちろん生きてますがな」
「メインエンジン付近で対艦ミサイルが爆発した。エンジンの出力を落とせ」
「この船が沈むくらいにしぼればいいですかい?」
「ああ、そうだ。よろしくたのむ」
「あいよ」
アークはヘッドセットを操作して通信を切ると、煙幕と爆煙が混じり合い何も見えなくなった硬化テクタイト製窓をみつめて言う。
「ネガ! 取舵いっぱい! ジグザグに動く!」
「クソがぁっ!」
ネガがまた叫び、操縦桿を進行方向左にめいいっぱい倒す。
艦橋が水平に戻り、左方向にロールを開始した時、レーダーをみつめるAXEが告げる。
「対艦ミサイル第二波来ます!」
「宇宙では最強の宇宙戦艦も、重力と大気のある場所でここまで航空機に接近されれば、ただの鈍重な的よ!」
次々と炸裂する爆炎と煙に包まれ、メインエンジンはすでに停止し、反重力装置の力のみで空中に浮遊している所属不明のポンコツレトロデザインの宇宙戦艦をみつめながら、ツゲルがゲラゲラと笑う。
「撹乱煙幕、平和力の積極行使による爆煙に包まれ目視不明瞭ですが、大三波行動、平和力行使完遂8確実! 被撃墜数ゼロ!」
通信に入る報告にツゲルはさらに笑う。
「第四波行動準備。次で完全に平定する! Space synthesis systemの恐ろしさを教えてやれ!」
「了解。第四波行動準備」
ツゲルが部下の応答に満足してうなづく。
「各機、急降下から急上昇。所属不明艦の下っ腹に残存平和力の全てを積極的に行使せよ! 容赦はせん。この第四波行動で完全に平定する! 我に続け!」
「了解!」
ツゲルは操縦桿を倒し、爆煙に包まれた所属不明艦の下に広がる海へと急降下と急加速。海面スレスレで機首を起こし、急上昇を開始する。
視界は一面黒い爆煙。その中にまぎれた所属不明の宇宙戦艦をレーダーが捕らえ、標的を補足したことをツゲルに告げる。
「全機! 全ての平和力を積極的に行使せよッ!」
ツゲルの通信と共に、SSF支援迎撃隊各機から対艦ミサイルが放たれる。
無数の対艦ミサイルは黒い爆煙の中に吸い込まれ、黒煙の中で閃光と爆音を撒き散らす。
SSF支援迎撃隊は黒煙を避けると、周囲を飛んで最後の瞬間を待つ。
黒煙の中から炎に包まれた、所属不明のやたらレトロなデザインのポンコツ宇宙戦艦が現れ、ゆっくりと海に向かって落下していく。
「推定、平和力行使完遂20確実! 被撃墜数ゼロ! 当方に損害なし!」
その報告に満足げにうなづきながら、ツゲルは炎上し海へと落下していく、爆煙に包まれた今どきありえないようなレトロなデザインをした、所属不明の宇宙戦艦を満足げに見つめる。
「どこの田舎者か知らないが、この宇宙を統べるSpace Synthesis Systemに逆らったのが運の尽きだ」
まだ反重力装置が生きているのだろう、所属不明の宇宙戦艦はゆっくりと海面に接触すると、被弾数の多い艦尾から海中へと沈み始め、急激に傾きだした。禍々しいドクロが描かれた艦首が空に向かって持ち上がり、やがてすでに半分が海中に没した艦全体が垂直になり、恨むように上空を飛ぶツゲルの攻撃機をドクロが見上げる。
「お前は自分の発言の責任をとった。そういうことだ」
ツゲルがそう告げた時、垂直になった艦と共に天をさしていた三連装主砲塔が一斉に火を吹いた。
すさまじい爆音と閃光が天へとのぼる。しかし、断末魔の一斉射が向かうその先にあるのは、空に浮かぶ太陽だけだ。
「お前は太陽を撃ち落とそうとした。だが、太陽は絶対に撃ち落とせない。Space Synthesis Systemという名の、この宇宙の中心に存在する太陽はな」
ツゲルは断末魔の一斉射に語りかけ、ドクロが描かれた艦首が海中に完全に飲み込まれるのを確認すると、全機へ帰投命令を告げた。