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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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片翼すら持たない、ハードでヘヴィなオールド・ボーイ

片翼すら持たない、ハードでヘヴィなオールド・ボーイ




 異次元異様要塞いじげんいようようさいカルト・スターの中心で、イカれたアークがブチかました海賊放送のメッセージは明確めいかくだった。

「synthetic streamの中心で毒ん毒んしている暗部の心臓、大宇宙のクソの素アベンシゾーを、俺のとこに連れてこい!」

 これは、つまり……

「ウーバー大宇宙のクソの素ぉぉぉ?!!」

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋の循環空気を震わせる、乗組員達のビックリヴォイス!

「くッそガッ?!」

 銀河イチ逃げ足の速い操縦士も驚愕きょうがく

「これはさすがに、思いつかなかったなぁ〜」

 コタヌーン機関長の声に、いつもの感じが戻ってきた!

 ガッチバチのベルトとバックルだらけの軍隊仕様のバトルスーツに身を包んだボディを、自らの両腕で抱きながら、黒髪ロングのセンクターお姉様がブルブルと震えながら、状況判断を開始する。


 synthetic streamには、イービル・トゥルース号に関する詳細なデータはない……

 つまり、イービル・トゥルース号の重装甲に関しても、正確なことはなにひとつわからない……

 どいつもこいつも皆殺して俺達は生き残るという、嘘みたいな話が本当かどうか?

 超絶倫量子ちょうぜつりんりょうしコンピューターが一晩に8回戦、ガンガンにバンバンやりまくってバチボコに計算しても、正確な答えというベイビーは飛び出てこない……

 万がイチのもしかしてではあるけれど……

 synthetic stream側にしてみれば、イービル・トゥルース号が要塞の大爆発を生き残る可能性は存在し続ける。

 すでに発狂しているとしか思えない残虐王が、全員漏れなくブッ殺す皆殺しを実行する可能性を、完全に否定することはできない……

 てめえら全員、お生の暴力をブチこまれて、おナカのオクにあるものまで全部ドバドバお外に出されて死にてえか?

 完全に発狂しているようにしかみえない、血みどろまみれの残虐王にすごまれたら……

 確かにビビッちまう要素はあるにはあった。

 だけど、ただの大ブラフってだけじゃない……

 俺達が中枢閣大本営まで凸できないのなら、大宇宙のクソの素アベンシゾーを、俺のとこに連れてこい!

 大宇宙のクソの素より、synthetic streamの権畜の方が数が多いんだ。

 おまえらが大好きな、圧倒的多数が絶対正義!

 だったら、アベンシゾーたった1個体を差し出せば、アベンシゾー明けましたね! 後はおまえら全員ハッピー!

 畜生から知的生命体へ、一気に格上げ! 

 大宇宙知的生命体道義条約が保証する、人権が返ってきて世界は一気にGo To まとも!

 こんな夢みたいな未来を、synthetic streamのボンクラ坊や達に、大盤振おおばんぶる舞いで目の前にブラブラさせて提示ていじするなんてねぇ……


「これは……、もしももしもの万がイチの可能性が……、ほんの少しかもしれないですけど……」

 艦橋に向かっているAXEも、絶対の冷静さが崩れてきているほどの衝撃的な海賊放送。

「勝った! 勝った! これは勝ったよ! こーんなあっまーい約束を目の前でブラブラされたら、我慢なんてもうできなぁぁぁぁい♡!」

 あいも変わらず、一人だけ別の世界線を生きているサディのあっまいヴォィスが、通信機からガンガンに流れてくる。

「生きている奴を、皆殺しにしないのか……」

 サディの甘い声とは別方向の酷く沈んだ声で、ただひとりうつむいているのは、冷たい殺戮機械のイクト・イチバチ。

「アベンシゾーハ、マチガイナク、ゴクショウスウ!」

 どんな馬鹿も阿呆も思考停止でよくわかる圧倒的多数は絶対正義が、コイツは叩いてもいいんだよと名指しされた一人に対して流れ込み、よってたかって袋叩いてドログチャにする。目をおおいたくなるような大惨劇だいさんげきがやってくることを、イクト・ジュウゾウの言葉が冷たく明確めいかくしめしていた。

 全乗組員の中枢神経細胞に上映される、もうじきやってくるかもしれない明るい未来。


 手錠てじょうかけられ小突こづかれながら、死の回廊に引き出されてくる大宇宙のクソの素、アベンシゾーのクソ情けない姿。

 最期の最期の瞬間まで

「私が責任を取ればいいというものではない」

 と言いながら、死の回廊に立ちはだかる死の壁の前で、無様にひざまづく大宇宙のクソの素。

 数え切れないほどの知的生命体の血でドログチャになった対物チェーンソーが、死の回廊の天を突くかのごとく振りあげられて

「巨悪あり! 法はこれを裁けず! ならば野蛮行為で、大宇宙の公衆衛生回復! 正義執行! 殺処分!」

 残虐王の高らかな宣言とともに振り下ろされる、狂気に満ちた凶悪な凶器!

 高速回転するチェーンソーの刃に、皮膚を裂かれ肉を切られ骨のずいまでブッタ切られて、首を落とされる大宇宙のクソの素、アベンシゾー。

 ゴロゴロと転がるアベンシゾーの首が、

「私が責任を取ればいいものではない!」

 と、死してなお自らの罪を否認ひにんし続ける中。

 両手をあげて、もう何もかもがお手あげですをしている、すでに降伏しているボンクラ坊や達が、今日から知的生命体として生きれるのだという未来を手にして

「Happy New System! アベンジー明けましたね!」

 と歓声かんせいあげて抱き合う感動シーン。


 さっきまで、確かに完全敗北しかみえていなかった未来に、ほんのひとすじどころではない希望が、いまたしかにみえてきていた。

 ここはどん詰まりの行き止まりで、俺達の敗北が200%確定している絶望の真っ只中では断じて無い!

 ウーバー大宇宙のクソの素でアベンシゾーを、俺のとこまでデリバリーして殺処分!

 そしたらアベンシゾー明けましたね! デ、みんなでパーティ!

 なんという未来感あふれる、ブッ飛んだ発想!

 アーク・マーカイザックがブチかました海賊放送は、確かに未来をみせていた!

「45口径46銀河標準センチメートル砲で、どいつもこいつも殺してヒャッハー! そういうシノギをこの船はやってない」

 アーク・マーカイザックの言葉が、乗組員達の頭のおナカでガンガン響く。

「イービル・トゥルース号は、宇宙戦艦などでは断じて無い。イービル・トゥルース号は海賊放送船なんだ」 

 無免許もぐりの航海士にして、無免許御免の海賊放送屋というすさまじい肩書を持つ、大宇宙をどこまでも翔け続ける驚愕驚異きょうがくきょういの男は、絶体絶命の危機にあっても、いつも通りの男だったのだ!

「アークぅぅぅうんン♡」

 明後日にやってくるピンク色の世界に意識が飛んでいるサディ様の、めっちゃレアなあまあまヴォィスが、いい加減にかんべんして欲しい感じでスピーカーをガンガン鳴らす!

「さて、エニグマ・メインフレームもお暇になったことですし、私にエニグマ・メインフレームのリソースをさいてもらってもいいのかもしれません」

 循環空気を一気に正常モードに戻す、オクタヌーン機関副長の声に、イクト・ジュウゾウは無言で情報表示盤を叩き、エニグマ・メインフレームの操作権限をオクタヌーンに移譲する。

 さっきまで、synthetic streamの中心で、親族参加が絶対不可能なお葬式が大確定でお通夜状態だった、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋の循環空気は、明日も吸える感じで満たされている。

 そして……

 ブ厚い硬化テクタイト製窓のむこうでは、着実に船に迫ってきていた自民愚の前進が停止していた。

 200%の勝利が大確定はまだしていないけれど……

 行き止まりのどん詰まりでアークがぶちかました大ブラフが、自民愚ジミングの歩みを止まるほどにsynthetic streamを動揺させたのだということを、明確に示していた。

 行き止まりのどんづまり、明日など見えない地獄の真っ只中で、通常の二倍以上に常軌を逸した男がグバァッとこじ開けた、まさかまさかの活路かつろ

 ウーバー大宇宙のクソの素で、ここにいながらアベンシゾーを殺処分して遺影イエイッ!

 もしも、もしも、万がイチのもしかして! そういう可能性を、アーク・マーカイザックという海賊放送屋は、確かに切り開いたのだ!

「なんという……ことを……」 

 臨時暫定指揮官を示す、頭上にのせた猫耳のピクつきが止まらないタッヤがうなる。


 ダメだ……

 私は指揮官に全然むいていない……

 急襲突撃中枢破壊死隊が中枢まで凸できないのなら、俺の前にアベンシゾーを連れてこい!

 ピンチはチャンス! 発想をぐるんぐるんにぎゅんぎゅん回して900°大回転させれば、新しい道が開けるのだと言われても、私にはこんなことを、絶対に思いつけない自信がある……

 もしも、もしもの万がイチ、そういう発想ぐるぐる大回転を私ができたとしても……

 アベンシゾーイチ個体を差し出せば、アベンシゾー明けましたで、synthetic stream構成員まで全員ハッピー!

 明後日の夜にはどいつもこいつも、双方の合意ができた相手と、バンバンに好きなだけ自由に愛をガンガンに確かめあって、ドロドロになりやがれ!

 カルト宗教に口を出されることのない、マジモンの愛を君に知ってほしい。

 synthetic streamに巣食すく諸悪しょあくはいして、キレイな社会を作ろうぜ!

 この戦争が終わったら、みんなで祝杯あげて素敵なパーティだ!

 こんな……、敵に塩を送るどころか……

 生クリームにいちごまでのってるあまあまケーキを差し出して、俺と一緒にロウソクの火を吹き消して、ド派手なパーティを始めようぜと不敵に笑うようなことを、私は絶対にできやしない……

 権力様が求める義務を果たした畜生だけが生きる権利を持つ、synthetic streamという正真正銘しょうしんしょうめいの生き地獄に降りてきた、ハードでヘヴィなメタル・チェーンみたいなブッ太い希望。

 血の池地獄にさしだされた一本のネギや蜘蛛の糸みたいな、クソの役にも立たないショッボイ偽りの救いが、ケツの穴が小さい神の精一杯。

 そんな役勃やくたたずのフニャ珍砲みたいな神の救済とは段違い! ビッグでハードなギンギン状態の希望がギラギラしている、まぶし過ぎる未来がドバドバという大盤振おおばんぶる舞い!

 想像することすら難しく、つかみ取ろうと思うことすら誰もしない、嘘みたいにまぶし過ぎる未来を夢見るだけではなく、本当につかみとろうとする通常の二倍以上に常軌を逸した男。

 残酷で残虐な暴虐あふれる暴威と呼ばれるにふさわしい暴力男。採算度外視のイカれマシーンを設計製作し続ける、マッドマックス・エンジニア。あらゆる銀河の様々な料理のレシピをごちゃまぜにして、細かいことはよくわからんがうまい料理をバンバン作り出すとにかく大盛りが過ぎる野蛮なイカれコック。そして、死の回廊に君臨くんりんする、マジモンの残虐王。

 もしも天使が実在したとしても飛べやしない、遥か彼方という上空を自由気ままに飛んでいる、マジモンのぶっ飛び野郎。

 なのに、アーク・マーカイザックの背中には、片翼の羽すらないし、裸にむいてケツのわれめをかき分けて穴まで探してみても、羽毛一本生えちゃいない……

 鋼鉄芯入こうてつしんいりのクッソ重たいブーツを重力にとらわれた、いかにもオールド・ボーイタイプな二足歩行式の野蛮生命体。濃紺のミリタリージャケットを身に着けた、ガチでバチバチなマジモンの戦争屋という、悪魔みたいな男。

 おまけにアークは、鉄くれみたいにハードな頑固者。最後の最後まで、俺はクッソ怪しい海賊放送屋という想いを絶対に捨てやしない。

 無免許御免の海賊放送屋であるーアーク・マーカイザックは、鉄くれみたいに荒々しくハードでヘヴィ。石頭を通り越した、アイアンヘッドの頑固者なのに、空を飛べる私が絶対に届かない遥か彼方の領域を、アークの思考は自由気ままに飛んでいく。

 どんな立派な翼があろうと決して届かない、ブッ飛び過ぎた世界をあの男は……

 はっはっはっはと笑いながら、自由にどこまでもどこまでも飛んでいくのだ……

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