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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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Fooled Equation

Fooled Equation




 いつかの昔に、3時のおやつをとりながら乗組員食堂で語られた、イービル・トゥルース号の重装甲についての、嘘みたいな本当の話。

 あり得ないような重装甲の話から脱線だっせんし、戦争始めた奴は皆殺しへと飛躍ひやくしていくアークのクッソ長い話を断ち切って、タッヤの思考が今現在へと帰還きかんする。

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋で、頭上に猫耳揺らすタッヤがぽかーんとクチバシ開けている今現在。

 イービル・トゥルース号臨時暫定指揮官を示す、タッヤの頭上に載った猫耳は、ぷるぷると小刻みに震え続けている。猫耳のせた頭部のなかでは、タッヤの中枢神経細胞がフル回転!

 

 あの時、アークが話したことは、本当に嘘みたいだった。だから、私は、45口径46銀河標準センチメートル砲弾が持つ破壊力に、イービル・トゥルース号の装甲が耐えられるのか? 自分でバンソロ弾いて計算したのだ。

 その結果は……

 45口径46銀河標準センチメートル砲弾を、主砲塔直上から叩き込まれても、イービル・トゥルース号は本当にもちこたえる。

「戦艦というものは、自分自身の砲で自分自身を撃ったとしても、どうということはない」

 パンダ船長の蔵書ぞうしょにあった、遥か彼方昔の戦記に書いてある危険な流儀りゅうぎで、イービル・トゥルース号はつくられている。

 アークが話した嘘みたいな話は、信じがたいが確かに真実だったという実績じっせきがある。

 だけど、だけど、だけど……

 いつかの昔のおやつ時にまでさかのぼって思い出し、精査せいさしたアークの話には……

 私が気がついていない新要素は、なにひとつ存在しなかった。

 いつかの昔のおやつ時に語られた話まで探してみても、主砲発射シミュレーションに漏れている要素はなかったのだ。

 だとしたら……

 主砲発射シミュレーションの前提ぜんていとなる思考自体に、何か重大な見落としや間違いがあるのだろうか?

 もう一度、最初から考え直してみよう。

 異次元異様要塞いじげんいようようさいカルト・スターの中枢をブチ抜けば、メインリアクターが大爆発する可能性が99.89%以上ある。これは、過去の大宇宙戦争時代から続く統計とうけいが、しっかりと裏付けている事実だ。(アークがよく、エビデヤンスと言うやつだ)

 通常の二倍以上に常軌じょうきいっした男なのだから、0.01%以下の可能性を一発で引けるはず!

 なんてことは、いくらなんでも起こり得ない。

 もしもここが、大人気過ぎて終わることが許されない、アニメの中にある世界であったとしても……

 ラスト・ドンパチの最終局面で、全員の大事な生命オールインの掛け捨てで世界を救う! 悲壮ひそうな決意をかためたけれど、実際にやってみたら都合よく大爆発が起きなくて、みんな助かりましたでハッピーエンド! そんなヌルイことは、視聴者様が許さないだろう……

 なによりここは、アニメの中にある世界ではないのだし……

 間違いなく、カルト・スターのメインリアクターが大爆発することが大確定……

 異次元異様要塞カルト・スターの中心部にある、超絶倫高出力ちょうぜつりんこうしゅつりょくなメイン・リアクターが爆発したら、それはもう小惑星が大爆発したと言っていい。

 いくら、たった一隻でsynthetic streamに対抗し得る、驚愕驚異きょうがくきょういの宇宙戦艦なのだとしても……

 大宇宙広しといえど、正気だったら設計することすら考えない、あり得ないような破壊力の主砲を持ち、さらにその主砲にすら耐えられる重装甲設計なのだとしても……

 小惑星級の大爆発の直撃を、無傷で生き残れるほど現実は甘くない。

 もしも、もしもの万がイチ、エニグマ・メインフレームに重大なバグが起きている?

 念の為に頭の中で、超絶雑ちょうぜつざつ概算がいさんを、バンソロ弾き直してみたけれど……

 重大な問題が、エニグマ・メインフレームに発生しているような感じは一切ない……

 主砲ブッ放して要塞中枢をブチ抜いてブッ壊したら、メインリアクターがブッ飛んでドーンッして全員BAN!

 この結論けつろんは変わらない。

 どんな重装甲があったとしても、イービル・トゥルース号は幽霊船よりも酷いことになってしまう。

 最初の爆発では死なないかもしれないという可能性は、ごくごくわずかだけど、確かにあるのかもしれない。

「すべての砲が沈黙しちまったスクラップとなれ果てようとも、沈むことなく浮き続ける」

 いつかの昔、アーク・マーカイザックが言ったセリフの通り、今はもうイービル・トゥルース号ではなくなってしまったスクラップに、私達は乗ったまま星の海に浮かんでいられる可能性は、0.01%よりは多くあるのだろう。

 もしもここが、たった一機のプロトタイプ・リアルロボットが大暴れして、一年間も続いている戦争を終わらせてしまうような世界だったなら……

 大自民公国の宇宙要塞に主砲ブッ放してブッ壊して総統陛下をブッ殺したら、スクラップになってしまったイービル・トゥルース号で、アークとサディさんが抱き合ってハッピーエンド。

 そういうシーンで物語は終わるのかもしれない。

 アークのモビル・トルーパーが大暴れしているけれど……

 残念なことにここは、宇宙空間戦闘の王たる宇宙戦艦が主役の世界であって、リアルロボットが主役のアニメ世界では断じてない。

 主砲ブッ放して要塞中枢をブチ抜いてブッ壊したら、メインリアクターがブッ飛んでドーンッ! スクラップ状態になっても星の海に浮かび続けるイービル・トゥルース号で、アークとサディさんが抱き合ってチューしても……

 ハッピーエンドで時の流れが終わってなどくれない。

 感動的なラストシーンの先にも、私達の日々は続いていく。

 要塞内部に存在している超絶倫高出力リアクターが大暴走し、大爆発した時に放つ大放射線が、すさまじい量でこの船に降り注ぐことを忘れてはいけない。

 要塞の物理的な大爆発を重装甲で耐え、なんとか船が持ちこたえたとしても、船体の各所にかなりの破損はそんが発生していることは間違いない。

 船体外殻せんたいがいかく破損はそんした状態では、超絶倫高出力ちょうぜつりんこうしゅつりょくリアクターが大爆発時に放つ、大量の大放射線を完全に遮断しゃだんできない。

 船体外殻がボロボロになったところから、致死量をガンガンにブッちぎった大放射線が、イービル・トゥルース号の内部にドッバドバと注がれることになる……

 そうなったら……

 スクラップと化したイービル・トゥルース号に乗った私達は、死ぬ。

 間違いなく、全員死ぬ。

 不可視ふかしのダークマターまで、分解されるところまで逝かされないにしても……

 致死量を遥かに突破した大放射線を浴びた私達は、数日後には絶対死ぬことになる……

 致死量を突破した放射線を浴びた生命体の末路まつろ悲惨ひさんだ。

 全身の細胞が持つDNAを、ドバドバ状態の大放射線でバチボコに破壊され、メッチャクチャにされてしまう……

 DNAを完全破壊され、二度と正常な細胞分裂ができなくなった生命体の末路は、あらゆる臓器がガンガンに癌になり果て、すぐに多臓器不全におちいる。

 全身のあらゆる細胞が次々に死んで逝くのに、DNAを完全に破壊されてしまっているのだから、もう新しい細胞が生まれてくることはない……

 全身のあらゆる細胞達が、みずからの形すら保つことができなくなり、中身を吐き出して死んでゆく……

 私自慢の羽毛うもうが全て抜け落ち、つぶらな瞳がチャームポイントの目玉は溶けて流れ出し、残った眼窩がんかからは溶けた中枢神経細胞がダラダラと漏れていく……

 私のまあるいお腹の中では、あらゆる臓器がガン細胞化し、やがて腐り溶けて崩れ落ち、腐敗した臓器と体液にクソを混ぜ合わせた見るに耐えないスペシャル汚物カクテルを、ケツの穴からダラダラと漏らしだす……

 刻一刻と私達の生命はちていき……

 最後は……

 かつてはアイアンブルーとガンメタルグレイで構成された世界だった、スクラップの中にまきちらされた、誰も彼もがいっしょくたになったドログチャ体液まみれの肉塊にくかいになるしかない……

 全身の羽毛がゾッと逆立つ。

 ありとあらゆる銀河と星星が、多種多様な文明と想いが、互いの領域を侵すことなく存在できるほどに広い大宇宙を、どこまでも翔けようと果てしない航海に出た船が、そんな最期で冒険を終わらせていいはずがないのに……

 ダメだ……

 いつかの昔話までさかのぼり、考え直してみたけれど……

 大自民統一教会党の象徴しょうちょう、カルト・スターをブチ抜いたら、私達が死ぬという結末を変える新要素は、なにひとつありはしなかった。

 可能性2・私達がまだ気がついていない、重要な要素がシミュレーションにかけている。

 結論、可能性2はない。

 残るは……

 主砲発射シミュレーションの前提となる、入力した数値に重大な間違いが……


「タシカメザンノ、ケッカハ、オールオーケーダ」

 循環空気を震わせたジュウゾウのメタルボイスは、主砲発射シミュレーションには何の問題もなかったのだと、冷たい現実を告げていた。

 タッヤの全身の羽毛がザワザワとふくらみ、頭上に載せた猫耳はピックピックと小刻みに痙攣けいれん


 可能性1・シミュレーションの前提となる数値に、重大な誤りがある。

 結論、可能性1もない。

 エニグマ・メインフレームをフル回転させて行った、主砲発射シミュレーションに入力した数値に誤りはない。もう一度、エニグマ・メインフレームに主砲発射のシミュレーションを走らせたところで

「200%以上の大確定で、おまえら全員あの世逝き」

 冷たい方程式が弾き出した結論がもう一回、ゴロリと転がり出てくるだけなのだ……

 つまり……、アークは……


 臨時暫定指揮官を示す猫耳ついた頭を抱えて、タッヤがうなる。

「ぐうううぅ……」

 タッヤの絶望が押し殺した低い声となって、艦橋をぐるぐる巡る循環空気を無情むじょうに震わせた。

 タッヤは結論にたどりついてしまった。

 アークが海賊放送で言っていることは、純粋混じゅんすいまじりっけ一切無いっさいなしの、正真正銘しょうしんしょうめいに発狂しているイカれ野郎の妄言もうげんなのだということに。

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