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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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乗組員の大事な命をオールイン!

乗組員の大事な命をオールイン!




 どん詰まりの行き止まりで、アークがおっぱじめた海賊放送は、めっちゃくっちゃに強気だった。それこそ、乗組員全員の意識がブッ飛ぶくらいに!

 この船の主砲をブッ放し、この要塞をブッ壊して、てめえらを全員ブッ殺し、皆殺しにして差しあげた後に、俺達だけはピンピン生きてこの世に残る。そしてやってきた明後日に俺は、素敵な喫茶店で危険なほどいかした女とパフェ食べて、その流れで夜になったら、パフェより甘い行為を日付変更線を超えて明々後日しあさってにまでまたがって、バンバンにヤリまくるんだというようなことを、アーク・マーカイザックは言ったに等しかったのだから。

「ちょっとおぉぉぉ〜?! アークはナニ言っているんですかぁぁぁああ?」

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋の循環空気を、タッヤの悲痛な悲鳴が震わせる。

「まじかぁ?」

 ミーマ・センクターお姉様も大驚愕だいきょうがく! 情報分析状況判断士一種特級の公的資格持ちも、ポカーンとお口を開けたまま、状況判断すらできない!


 だって……

 異次元異様要塞カルト・スターの内部構造解析が終わった後、エニグマ・メインフレームをフル回転させて、主砲発射のシミュレーションを走らせたんだよ。

 その結果は……

「主砲を撃ったらサヨウナラ」

 この事実は、対物チェーンソーで血みどろ祭りの真っ最中だったアークに、ちゃんと伝えてある。

 なのに……、この海賊放送は……


「く、そが? あぁぁあ、あ、あ……?!」

 ここまできても逃げないし、結局、まだまだ殺りまくるつもりなのだし、俺にはデートの約束まであるのだとマウントまでかますのかと、銀河イチ逃げ足の速い操縦士は、ガスマスクの中でポカーンとあけたおアゴが外れそう。

「アークぅぅぅん♡」

 ただいまイービル・トゥルース号の艦橋に向かって爆走中のサディが、場違いなあッまーいヴォイスでアークの名を呼んでいるのが、乗組員専用通信に流れだし、ゾッとするような激しい狂気を感じさせてくる。

「生きている奴は皆殺し、こいつはハナから生きていない機械達にとっては、夢の実現ってやつだぜぇ」

 サディの狂気の先を行く、冷たい殺戮機械キラーマシンイチバチのハードなセリフ。

「あああー。ついに笑えないくらいに、おかしくなっちゃったのかなぁ〜……」

 コタヌーン機関長の声が、ついにヤヴァイ感じになってきた!

「モウイッカイ、ケイサンスルカ?」

 エニグマ・メインフレームをフル回転させて、全員漏れなく死ぬと結論された、主砲発射シミュレーションをもう一回走らせてみるかと、イクト・ジュウゾウが言った。

「新しく入力する数値がないのなら、シミュレーションの結果は変わりません。それなら私に、エニグマ・メインフレームのリソースを貸してくれてもいいのかもしれません」

 機関室直結の通信機に久しぶりに響いたオクタヌーン機関副長の声は、一度結論が出た主砲発射シミュレーションを同じ数値でもう一回してみても、全員死亡の結論は変わることはないと言っていた。

「タッヤさん。主砲をブッ放したらサヨウナラ。この結論を出したシミュレーションに漏れている、重要な何かがあるのでは?」

 絶対の冷静をほこるAXEが、艦橋に向かいながらも疑問をていす声が、通信機から流れてきた。

「確かに、シミュレーションの結論は、主砲を撃ったらサヨウナラだった。だけど、もしも……。私達がまだ気がついていない要素を、アークがつかんでいるのなら……」

 臨時暫定指揮官りんじざんていしきかんしめす、頭上の猫耳がピクピクと動くタッヤ。

 アークのあまりに強気過ぎる海賊放送は、臨時暫定指揮官としてタッヤがくだした苦渋くじゅうの決断を、根底こんていからくつがえすものだった。

 どいつもこいつも皆殺す主砲をブッ放しても、イービル・トゥルース号は生き残る。

 そんな未来があり得るのだろうか?

 アーク・マーカイザックの超絶特盛り大ドンブリ勘定かんじょうは時に、超絶倫量子ちょうぜつりんりょうしコンピューターでもはじき出せない、驚愕驚異きょうがくきょういの答えを叩き出すことが確かにある。

 まるで嘘みたいだけれど、実在するのであれば、それは邪悪なほどの真実だ。

 エニグマ・メインフレームでさえも、まだみちびき出していない、未知の答えが実在する可能性?

 私達にみえていない、嘘みたいだけど本当にやってくる未来があるのだろうか?

 臨時暫定指揮官であるタッヤの思考が、今再び巡りだす。


 私の決断を根底こんていからくつがえす可能性……

 ……………………

 可能性1・主砲発射シミュレーションの前提ぜんていとなる、入力データの数値に重大な誤りがある。

 可能性2・私達がまだ気がついていない、重要な要素が主砲発射シミュレーションに欠けている。

 

「ジュウゾウさん! 主砲発射シミュレーションに入力した数値を全数、大至急で再確認をお願いします!」

 タッヤ臨時暫定指揮官の声に、メタルハンドで情報制御盤を叩きだすジュウゾウ。

「ハードナ、タシカメザンヲ、ヤリヤガレッ!」

 エニグマ・メインフレームが、シミュレーションの前提となる全数値の再確認を開始する。

 可能性1に関して、イービル・トゥルース号は全力で動き出した。

 残るは可能性に、タッヤの思考がぐるぐると巡りだす。


 イービル・トゥルース号の主砲でカルト・スターを撃っても、私達は生き残ることができる?

 理屈りくつの話だけで言うのなら、そういう未来も確かに有りえはする。

 カルト・スターの中枢を撃ち抜いても、メインリアクターが大爆発しない可能性も、ごくごくわずかだが、あると言えば確かにある。

 確率で言えば、1%にも満たない。そんなごくごくわずかの可能性……

 だけど……

 そんなごくわずかな可能性に、全乗組員の大事な生命タマをオールイン!!?

 いくらなんでも、通常の二倍以上に常軌を逸したアークだとしてもやらない、マジモンの大穴に賭け狂ってる大博打に過ぎる。

 ひとたび戦争となれば、対物チェーンソーでドログチャ血みどろの皆殺し祭りを始めるほどに、あの男は残虐だけど……

 身内を守ることだけは、絶対に忘れない。

 かつて、絶体絶命の危機から私達を脱出させるために、とことん徹底的にハメまくり、意識失うとこまでヤッてから、岩にくるんで宇宙にポイした実績じっせきまでもがある。

 私はケツのお穴に、指一本挿れられたわけではないけれど……

 アークに見事にハメられたあの時でさえ……

 アークにはちゃんと策があった。絶体絶命の危機をくぐり抜ける策が、アークにはあったのだ。

 突撃刺突衝角とつげきしとつしょうかくで敵旗艦を串刺しにし、イービル・トゥルース号と敵旗艦を運命共同体にすることで、大艦隊の砲撃を完全に封じる。

 通常の二倍以上に常軌を逸した男だからこそ思いつく、正気の沙汰さたでは考えられない驚愕驚異きょうがくきょうい生存戦略せいぞんせんりゃく

 だけどあの時、みんなの大事な生命タマを、この大博打にオールイン! そんなことを、アーク・マーカイザックはしなかった。

 残酷で残虐な暴虐あふれる暴威は、身内にだけは絶対安全安心な、安全装置が付いている究極理想の暴力装置。

 そんな男が、乗組員全員引き連れて、ほぼ確実に死が確定している地獄への道を選択することは、絶対に有り得ない。

 どこまでも広がる大宇宙に絶対はないと、アークはよく言うけれど……

 アークが集団自決のような選択を絶対しないと、私は間違いなく言い切れる。

 だとしたら……

 カルト・スターのメインリアクターが大爆発しても、99.89%以上の確率で生き残れる可能性を、アークはつかんでいるはずだなのだ。

 確かにイービル・トゥルース号は、今どきあり得ない古きヤヴァき時代の実体弾を、バンバン撃たれてガンガンブチ込まれ、バチボコにヤラれることを前提ぜんていとした、クッソハードでヘヴィなメタル装甲を持っている。それは邪悪なほどの真実だ。

 かつてアークが語った、イービル・トゥルース号の装甲に関する嘘みたいな話を、私が今でも覚えているくらいに、この船は常識はずれのタフさをもっている。

 イービル・トゥルース号という驚愕驚異の存在が、いったいどんなものなのか?

 私がまだ新入乗組員で、イービル・トゥルース号というものを良く知らなかった頃、アークがしてくれた嘘みたいな話。

 こういう絶体絶命の危機には、嘘みたいだけど本当だという話が、何もかもを解決する鍵になるのかもしれない……

 主砲発射シミュレーションへの入力が漏れている、未知の重大要素が存在する可能性。

 いつかの昔に、この船の装甲についてアークがしてくれた嘘みたいな話を、私は思い出す必要がある。アークがしてくれた話に、重大な要素が隠されている可能性が思考を支配し、過去という時間へと私を連れて行く。

 私がイービル・トゥルース号に乗り込んだばかりの頃。

 サディさんがまだまだロリな感じを、たっぷりと残していた頃。

 イービル・トゥルース号に、パンダ船長とアークとサディさん、そして私しかいなかった頃。

 アークが乗組員食堂のキッチンで、パンダ船長の焼印入りの特製ホットケーキを焼いてくれた日のことだ。

 お茶の時間だと言うのに、パンダ船長はあいかわらず艦橋詰めで、乗組員食堂に行って三人で食べた三時のおやつ。

 とにかくブ厚く、三時だからということで三段重ねの、パンダ船長の焼印入りのあっつあつのホットケーキを、三人で食べたあの日。

 パンダマークの入ったマグカップにいれた真っ黒いコーヒーを、アーク・マーカイザックがガブガブと飲みながら、語ってくれた嘘みたいな話が、私の中枢神経細胞の中を駆け巡る……

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