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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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大目に見すぎて大目玉焼きクラスター!

大目に見すぎて大目玉焼きクラスター!




「ヘル・オトス・オーバーグルッペンフューラー閣下……。所属不明の宇宙戦艦弐番艦より再び通信でございます……。おつなぎいたしますか? それともただいま会議中とでも……」

 同志アベガスキー3423の声が震える。

 実体弾の反動を利用した180度の急速反転を行い、主砲発射までぶちかました禍々しいドクロを艦首に掲げた宇宙戦艦は、メインモニタの中で不気味な真っ黒いふたつの穴でこちらをみつめている。

「……つなげ。奴らとしても完全に追い詰められたのだろう。話を聞いてやるべきだ」

 苦渋の決断であるかのように言ってしまったことに気がつき、オトスが歯ぎしりする。

「承知いたしました……」

 同志アベガスキー3423が操作盤のボタンを押下する。

 純白と鮮烈な赤の二色で彩られ、ドブラックな壺鉤十字印のガース・ヒーデ戦闘指揮所のメインモニタに、濃密なブルーを背にするふざけたドクロと交差する大腿骨のマークが現れる。

「RADIO EVIL TRUTH NOW ON HOT LINE TO YOU!!」

 と赤い文字が表示される。



 ようようようよう。synthetic streamの無理と権力とご都合主義が通じない、野蛮人の掟が支配するまだ誰のものでもない神もへったくれもない宙域へようこそ。ミスタードデカイ宇宙戦艦殿。

 確かに俺達はあんたらの領域で好き勝手にやりもした。だから、あんたらの領域ではそれなりに申し訳なく、大人しくしていたつもりなんだが……。

 どうやらあんたらは、ちいともお気に召さないようだ。そしてそれは、未開の宇宙からやってきた野蛮人である俺達も同様でな。うるわしき本船の素敵なケツに、あんたらがドッカンドッカンズッコンバッコンぶちかますクソデカい豆鉄砲がハジケルたびに、宇宙空間に生み出され撒き散らされるムカツクゼー粒子のスピン角運動量が生み出すバイブレーションがだ、本船のケツの骨から背骨を伝わってついに頭にまできてしまいましたよというわけだ。

 いかがだったか? 

 さきほどドデカイミスター宇宙戦艦殿に対して敬意を表して行った、本船の挨拶代わりの3発殴って撃破せよ的な一撃は?

 こちらとしても、180度の急速反転後に狙い違わず100発100中の主砲を、意・図・的に外してくれる最高の腕を持った砲手様もがまんの限界でな。

 つ・ぎ・は・あ・て・れ・る・ぞ、と大喜びで飛び跳ねながら、主砲のトリガーをガッチリ握って歯をむきだしながらワクワクドキドキしておられる。そしてついさきほども申し上げたが、ここはsynthetic streamの無理と道理と権力とご都合主義が通じない、野蛮人の掟が支配するまだ誰のものでもない神もへったくれもない宙域だ。

 Space Synthesis Systemとかいう銀河のゴミゴミ都心中枢部みたいな、お上品な場所にいらっしゃる高貴きわまるお方であられるドデカイミスター宇宙戦艦殿は、まだ誰のものでもない野蛮人の宇宙の流儀などはとてもじゃないがご存知ないであろう。

 そういうことをかんがみて、今回は初回だけの大サービスも大サービス。大出血の活き〆ピチピチ、大目に見すぎて大目玉焼きクラスター爆弾級の大惨事的サービスをして差し上げたいと考える。

 よく聞け、ここで引け。

 大事なことだからもう一度言うぞ。ここで引け。

 万が一のもしかして、そういうことに慣れていないかもしれないから言っておくが、ガチでやりあうなら、本当に覚悟しろ。

 万が一のもしかして、俺達を沈められることができたとしても、てめえの艦はボッコボコのスッコスコの大損害のパッパラパーになることは、そのおよろしい頭であれば容易に計算できるはずだ。

 虎の子のドデカイミスター宇宙戦艦を、ボッコボコのスッコスコの大損害のパンパカパーンにするということは、

 す・べ・て・あ・ん・た・の・責・任・で・す。ということになるだろうな。

 これらのことをふまえたうえで、そのおよろしい賢さの頂点をぶっちぎって天まで昇っている頭で考えろ。

 そして大事なことだから三回言うぞ。

 ここで引け。

 カピシ?



 純白と鮮烈な赤の二色で彩られ、ドブラックな壺鉤十字印のガース・ヒーデの壮麗華美な戦闘指揮所に、長すぎる沈黙が流れる。

 想定外過ぎる。予想外過ぎる。意味不明に過ぎる。なんなんだこいつは? まったく理解していない。Space Synthesis System中枢閣が誇るシステム・シュッツシュタッフェルSSS主力森羅万象宇宙戦艦を相手にしていることをまったく理解していない。

 ガース・ヒーデをボッコボコにする?

 万が一のもしかして、そんなことができるとしても、そんなことしたらどうなると思う?

 この銀河の完全なるお尋ね者だぞ。社会的な死どころではない。生物学的にも、天文学的にも完全に死ぬぞ?

 そういうことは、あのアホみたいな行動をとる宇宙戦艦の艦長代行とやらはまったく想像せんし、考えることすらできんのか?

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの思考はめぐり、同志アベガスキー、スガガスキー、キシダイスキーが多数詰める戦闘指揮所は固唾を飲んで答えを待つ。

「念のために言っておくが、こいつはホットラインの通信ということで、銀河中に放送するようなことはしていない。ということで、ドデカイミスター宇宙戦艦殿が、安心してカピスコと言えることは保証しよう」

 なんだ? さっきから言う意味不明のカピシとカピスコというやつは?

「カピシ、カピスコとはいったいなんだ?」

 オトスが発した言葉はそれだけだった。

「カピシは、わかったか? カピスコは、わかりました。だ」

 純白と鮮烈な赤の二色で彩られた、ドブラックな壺鉤十字印のガース・ヒーデの戦闘指揮所に沈黙が流れる。

 ああ、ダメだ。こいつは完全にイカれてる。オトスは気が遠くなっていくのがわかった。

「責任者と話がしたい。そちらの艦長と話せるか?」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの提案に、今度は所属不明の宇宙戦艦弐番艦側に沈黙が流れる。

「うちに艦長はいない」

「さきほどの通信で代行と言っていたが?」

「船長ならいるが……」

「では船長と話したい」

「本気か?」

「責任者と話したい」

「わかった」

 濃密なブルーを背にしたドクロと大腿骨の海賊マークが消え、アイアンブルーとガンメタルグレイを背にした、イカツイ艦長服に身を包んだパンダが画面に現れる。そしてパンダは、まばたきひとつすることのないつぶらな瞳で、ヘル・オトスをぼんやりと見つめて言う。

「ぱふぉっ」

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