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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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海賊放送船、本気を出す

海賊放送船、本気をだす





 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーは、霧散した爆煙の中から現れた、敵宇宙戦艦の艦首に存在する禍々しいドクロにみつめられ呆然とする。

 ???!

 いつの間に反転したッ?!

 さっきの発砲は回頭の時間を稼ぐための煙幕? 

 いや……。煙幕だったとしても、これだけの短時間での進行方向真逆への180度急速回頭などというバカげた高速姿勢制御は不可能なはず……

 オトスの脳が高速回転する。

 煙幕ではない?

 それぞれ反対の方向に発射する実体弾……?

 脳裏にさきほどメインモニタに映った光景が再生される。

 それぞれ反対の方向を向いた2基の主砲塔は、艦首に一番近い砲塔と艦尾に一番近い砲塔だった……

 つまり……

 艦首と艦尾の主砲をそれぞれ反対方向に実体弾を発射することで、実体弾の持つ発射時の反動を利用して、艦全体を回転させただとッ!?

 からくりは読めた。だが、それでは艦はぐるぐると回転するだけで止まらない。

 実体弾……。そうだ。実体弾だ。宇宙空間で実体弾を発射するためには、発射する実体弾が生み出す反動及び反作用に対抗する力が必要になる。

 であるならば、あの艦は、発射する実体弾の反動及び反作用に対抗する推力を、当然備えていることになる。

 ……それを使えば、理論上できないことではない……のか?

 艦首艦尾の主砲をそれぞれ別の方向に向けて実体弾を発射。実体弾発射時に生まれる反動によって艦全体を回転させる力が生まれる。艦の回転開始と同時に、主砲塔の反動を打ち消すための推力を使い、艦の回転を180度で停止させることで高速反転を行う……。

 できないことではない……。できないことではないが……。

 ありえないッ! ありえないぞッ!! そんなことはありえないッ!!!

「馬鹿げているッ! 馬鹿げているぞッ! ここは科学考証激アマの、やたら懐かしい未来感が漂うアニメの世界ではないのだぞッ!」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの叫びが戦闘指揮所を満たす。

 それを無視して、禍々しいドクロを艦首に据える、宇宙を航行するくせに艦橋を持つなどという、不合理極まるやたらレトロな未来デザインの宇宙戦艦の主砲塔が1基、明確にガース・ヒーデを狙って射線を合わせはじめる。

「時代遅れどころではない、宇宙戦争においてはもはや化石級の実体弾を使った曲芸はたしかに面白かった。そして、アンチ・エネルギー・シールドは、実体弾に対して無力だよ。紙切れ一枚分の防御力にすらならん。だがッ! それがなんだというんだッ! 貴様が実体弾をいくら打とうが、この広大な宇宙空間では極大威力のビーム兵器に、全て着弾前に迎撃されるわッ! ただの一発も、この艦には届かぬよ!」

 


「ブッ飛びな! ドデカイミスター宇宙戦艦ッ! あたしはこいつをブッ放したかったのさ!」

 照準の中に浮かぶ特大宇宙戦艦をサディが赤い瞳で睨みつけ、巨大なリヴォルバーカノンを模した主砲操作桿の引き金を絞る。

 イービル・トゥルース号の艦橋にもっとも近い、上甲板二番砲塔が45口径46銀河標準センチメートルの砲三連装から、重厚長大を飛び越してもはや意味不明なまでの破滅的な力を秘める暴力と破壊の収束体を、SSS主力宇宙戦艦に向かって発射する!

 


 戦闘指揮所のメインモニターに、青い閃光が満ちる!

 ずっがーぁぁぁぁぁぁん! どっがぁぁぁーーーんッ!

 電磁的衝撃波に艦全体が揺れ、直近に落雷したかのような轟音が戦闘指揮所を震わせる!

「実体弾ではありませんッ!」

 同志アベガスキー1123の絶叫!

 純白と鮮烈な赤の二色で彩られた、ドブラックな壺鉤十字のガース・ヒーデ戦闘指揮所がどよめきに揺れる!

「所属不明の宇宙戦艦二番艦! 主砲三連装砲1基が発砲! 発射された3発の光弾は本艦アンチエネルギーシールドの直上をかすめました!」

 同志スガガスキー2237が報告するッ!

「ありえないッ!」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの叫びが戦闘指揮所を揺らす!

 Space Synthesis System中枢閣によって、全宇宙絶対無敵最強無比の圧倒的抑止力を持つ平和力と閣議決定された、大自由神民主主義銀河神民統一砲四連装八基三十二門を私はこれでもかこれでもかと撃ったではないか! それは威圧的かつ圧倒的で制圧的な積極的平和力先制行使による絶対の平和行動であった! 

 なのになのになのになのになのに!

 撃ってきた! あいつら撃ってきたぞ!! 時代遅れどころか、化石級の実体弾なんかじゃなく、本当に我々を殺す可能性のある極大威力のビーム兵器を撃ってきた! 

 なんという野蛮人だ! なんという積極的戦争主義者だ! なんという平和に対する反抗だ! おそろしいまでの平和に対する冒涜だ! 我々が大自由神民主主義銀河神民統一砲四連装八基三十二門をドッカンドッカンブッ放し、お互い平和的に解決しましょうよと手を差し伸べ平和を提案しているのにだ! あの野蛮人どもは野蛮の極みの蛮行でもって! 我々の平和に挑戦してきやがった! やつらは戦争をおっぱじめやがったのだ!

 こんなの想定外だ! 銀河をその圧倒的な権力と平和力で思想までもを平定平和統一するSSS主力宇宙戦艦に、歯向かい反撃してくる大馬鹿野郎が実在するだと!? ありえないありえないありえないありえない!! こんなことは想定外だッ!!!

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの思考は揺れた。

 Space synthesis system中枢閣によって、全宇宙絶対無敵最強無比の抑止力を持つ平和力と閣議決定された、大自由神民主主義銀河神民統一砲を、四連装八基三十二門も搭載する、System Schutzstaffel SSS主力森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー。その同型弐番艦であるガース・ヒーデのもたらす平和を乱そうとするドアホが、まさか本当に実在するなどとは、この銀河の誰ひとりとして考えないではないかッ!

 大自由神民主主義銀河神民統一砲四連装八基三十二門の、強大なる平和力を積極的に先制行使して、徹底的に平定平和統一する! つまりは一方的に奴らをなぶり殺す想定なのだ! それが平和というものだろうがぁ! 

 だがしかし! だがしかし! だぁぁぁがぁぁぁしかぁぁしぃぃっ! 奴らは撃ち返してきた! 撃ち返してきたのだッ! これは、まったくの想定外なのだ!

 思考が混乱する。思考の中に、極大威力のエネルギー兵器発砲による実戦という、冷たい現実の恐怖が混入し、思考がどんどん混濁していく。

 想定外だッ! まったくの想定外だッ! さっきの実体弾による曲芸に続いて、まったく予想外の想定外だッ!

 思考が回る。ぐるぐる回る。しかしその思考は、想定外の事態と恐怖を予想外にぐるぐる回すだけで、一向に定まらない。

 マジカマジカマジカマジカマジカ。マジなのかよ。

 こわいこわいこわいこわいこわい。マジデこわい。

 母上様母上様母上様母上様母上様。助けて母上様。

 まずいまずいまずいまずいまずい。これはまずい。

 いかんいかんいかんいかんいかん。これはいかん。

 冷静に冷静に冷静に冷静に冷静に。まずは冷静に。

 そうだそうだそうだそうだそうだ。冷静に考えろ。

 直撃はしていない。直撃はしていないだろう。そうだ、直撃されたわけじゃない。直撃はしていないのだ。いったん深呼吸して落ち着こう。

 スーハー、スーハー。ヒッヒッフー。スーハー、スーハー。ヒッヒッフー。

 よしよしよしよし、深呼吸のおかげで少し冷静になってきた。このまま冷静に考えろ。

 極大威力のビーム兵器は、秒速29万9792銀河標準キローメートルの速度で宇宙空間を飛ぶ。この速度は宇宙空間において、絶対超えられぬ最高速度だ。つまりは細かいことをはぶいてものすごくおおざっぱに言えば、相手に存在を捕捉されたということは、その瞬間に、宇宙最速の回避不能な極大威力のビーム兵器がこちらに着弾することがほぼ確定ということを意味する。

 それゆえに、宇宙空間における極大威力のビーム兵器による艦砲射撃戦は、理論上ほぼ100発100中の主砲の持つ破壊力と、主砲の回避をもとより不可能であることを前提にした、アンチ・エネルギー・シールドの持つ莫大な耐久能力の性能勝負へと収束していく。

 このことからみちびかれるのは、さっきの一撃を、やつらは、わ・ざ・と・当てなかった。ということだ。

 奴らは100%の命中率で、ガース・ヒーデに当てることができたのに、そうはしなかったということだ。

 まだ希望はある。これは希望がある。いまだ想定外の事態にまで突入していない事実がある。つまりは、まだ威嚇射撃の段階で、本艦はマジでガチなバチバチの戦闘状態には、まだまだまったく突入してはいないということだ。

 奴らの一撃は威嚇射撃。威嚇射撃に過ぎない。

 よしよしよしよし。だとすれば、だとすれば、これはまだ実戦ではなく、奴らに反撃能力を行使されたのだと考えなければ、これはまだまだ本艦が戦闘状態に突入していないことになり、つまりはまだまだ想定の範囲内にとどまっていると判断することができる。そして、これが想定外の事態ではなく、想定の範囲内にある状態とすれば、心もだいぶ落ち着いてくる。

 当ててはこない。奴らは当ててこない。それに、こちらはもう何発もの大自由神民主主義銀河神民統一砲を奴らに叩き込んでいる。奴らのアンチ・エネルギー・シールドは、もう耐久限界のはずだ。おそらく次の斉射で奴らを沈められる。はずだ。はずなのだ。

 次の斉射にはもう耐えられない、ギリギリまで追い込まれた奴らが、苦し紛れに威嚇射撃をしてきた。

 そうだそうだそうだそうだ。これはつまり、まったく想定外の事態ではない。こちらは圧倒的な平和力でもって、あいつらを事実制圧しきっている。圧倒的じゃないか、ガース・ヒーデは。奴等はあえて言えば、カスであると言える状況だ。そうだそうだそうだ。いままでと何も変わらない。圧倒的な平和力において、相手を威圧し抑圧し制圧し先制的に平定平和統一する。これはつまり戦闘ではない。つまりはこれは戦争ではない。これはつまり実戦ではない。そしてつまり、安全ということだ。

 だから、安心しろ安心しろ安心しろ安心しろ。

 強大なる平和力を積極的に先制行使して、安全安心どっかり余裕をもってあぐらをかいて、奴らを徹底的に平定平和統一するのだ! 

 Space synthesis system中枢閣によって、全宇宙絶対無敵最強無比の抑止力である平和力と閣議決定された、大自由神民主主義銀河神民統一砲を、四連装八基三十二門も搭載する、System Schutzstaffel SSS主力森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーと同型艦。このガース・ヒーデはいま奴らに対して圧倒的優位にある! あるはずだッ! で、あるならば、ガース・ヒーデが大宇宙に誇る、強大なる平和力を積極的に先制行使して、奴らを徹底的に平定平和統一するだけでいい! つまりは一方的に奴らをなぶり殺すことに、いまだ一切の変わりはないッ!

 ガース・ヒーデ司令艦長、ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの思考が安定。

「奴ら、とうとう追い詰められたか」

 オトスの言葉が満足げに口にされたその時、戦闘指揮所に同志キシダイスキー5643の報告が!

「アンチ・エネルギーシールド使用率3%……。艦体温度いちじるしく上昇……。補助動力機関、現在冷却中……」

 想定外の事態の発生に動揺し、瞬時に思考回路を想定外の速度でぐるぐる回し、急速回転360度の回頭で停止を成功させた結果、いまは安定状態にいたったオトスの思考がまた揺れるッ!

 3%? 3%だと? かすめたただけで使用率3%?! ありえないだろ?! そんなの! だって当たっていないのだ! 

 直撃だったら、いったいいくつ持っていった?

 10? 20? いや、そんなものでは済まないだろう。50? 60? いや、かすめたただけで3%だぞ。直撃だったらいきなり100……ということもありえるッ!? いや、そんなバカなことはありえないッ! ありえるわけがないだろうがぁぁ!

 この意味不明な破壊力はなんだ!? おめーの艦は、バカスカ斉射を叩き込まれて、あっちっちーのぱんぱかぱーん状態のアンチ・エネルギー・シールドを、全身全霊全力で全人生費やして冷やすのにヒィヒィいってて、主砲にまわしているエネルギーなんかスッカスカのぷ〜でまるっきしねぇはずだろうがぁッ!

 どうしてこんな極大威力も極大威力の、それこそこの宇宙戦艦がブッ飛ぶような一撃を撃てるのだッ!?

「貴様の艦はぁッ! いったいどうゆう科学考証をしていやがるんだぁぁぁっ!」

 再び深呼吸が必要になったヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの怒声が、ドブラックな壺鉤十字印の戦闘指揮所を大きく揺るがす。

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