わからされてしまう僕様
わからされてしまう僕様
血まみれの青い鬼が、対物チェーンソーを横薙ぎに振るう!
僕様の前にいる隊列が、高速回転する刃に次々にとらえられる!
流血があふれかえり、肉片が撒き散らされ、骨が砕けて散って逝く。
生きている肉体が損壊していく恐ろしい音と絶叫が、送気マスクの内部を満たして、僕様の聴覚器官にガンガン響く。
奈落の底に向かって落ちていく大量の血と生命の残骸達が、真っ赤な血肉とクソのミックスジュースとなって、僕様の愛国平隊アベンジャーズのカッコいい平隊服を汚していく。
僕様が手にしているのは、死の壁へと大行進する途中で拾った、血糊でガビガビの突撃平和杖。
引き金を引いて積極的に平和力を行使しようとするけど、突撃平和杖はピクリともしなかった。
異次元の大増税でもって積極的平和費を拡大し、United Skinheads of All (略称・USA)からバカ買いしてきた平和力は、突撃平和杖からただの一発も飛び出していきはしない。
だめだ……、やっぱり故障しているんだ……
血みどろになったあげくに水分が蒸発して、固着してしまった突撃平和杖が、積極的に平和力を行使できるわけがないんだ……
だいたい、故障していなくても、突撃平和杖ごときが行使する5.56mm平和力が、4銀河標準メートルもある金属巨人に通じるわけがない。
死の回廊を震わせて僕様に直接届いて骨身で感じる、青い金属巨人の駆動音と対物チェーンソーの刃が高速回転する不快な振動。
あとずさりしようとするけれど、後続する愛国平隊アベンジャーズの大群が、僕様の後退を絶対に許さない。
4銀河標準メートルの青い鬼が、ズタズタになった権畜がからみついたままの巨大なチェーンソーをふりかぶる。
次にやってくる横薙ぎのひとふりは、間違いなく僕様のいる隊列をとらえるだろう。
真っ赤な血みどろと漏れ出したクソが混ぜ合わされて、いちじるしく損壊したドログチャの残骸になって、奈落の底に落ちていきながら、僕様はなにもかもからさようなら。
言葉にするのは簡単だけど、現実の僕様は簡単には死ねない。
死亡確定演出が生み出す超絶スローな時間の中で、文字通り死の苦しみをえんえんと味わいながら、僕様は死ぬ……
僕様はぎゅっと目をつぶる。
二度と目を開けるものかと、僕様はかたく決意する。
いちじるしく損壊させられる肉体が生む痛みを、否認することは絶対できない。でも、自分の肉体が生きながら損壊されていく光景を、目さえ閉じていれば僕様は直視しなくてすむからだ。
腹から臓器が引きずり出されようがぶちまかれようが、僕様がみなければそれはまだ観測されていないのだから、確定していないのだ。
僕様は目をぎゅっと閉じながら、青い鬼がふるう残虐行為が肉体をとらえるのを待つ。
イチ銀河標準秒が、10銀河標準秒のように感じられる。
イチ秒、二秒、そして三秒?
気の遠くなるようなゆっくりとした時間がドロドロ進む。
ああ、死亡確定をこれでもかと演出する、無意味な行為はやめてほしい。だって……、時間がゆっくり流れれば流れるほど、僕様の肉体がいちじるしく損壊していく時の苦痛を長く感じてしまうじゃないか……
でも、その時はまだやってこない。
青い鬼がふるう巨大なチェーンソーは、まだ僕様をとらえていない。
その時、送気マスクと一体となった通信機に、あまりにも場違いな快活な笑い声が満ちる。
はっはっはっは! わかったぞ!
おまえらの親玉。大宇宙のクソの素が、ちぢこまっている壺のありかがわかったぞ!
ガンガンにブチこんで、地獄の底にむかってグバァッとブチ開けた、この大穴の行き止まりから、ほんのちょっとのところじゃないか!
絶対に勝てない戦いにおまえらが大群組んで、総員、右向け右で前にならって雁首並べて大行列作って大行進してきた理由がよーーくわかったよ!
異次元級に異様な巨大要塞の中枢まで、後たった2つの防御区画!
ガチでバチバチなマジモンの戦争を殺る武装を満載している俺達にとって、簡単にブチ抜ける儚い膜に過ぎねえよ!
押し込み道具でガバァッと開いて、ガンガンにぶちこめばアッという間だ!
こんな危機的状況となれば、どんなことをしてでも死守してこいって、お偉い様は言うよなあ!
だが、俺達を止められる戦力は、もうおまえらにない!
おまえらもわかってるんだろう? これは邪悪なほどの真実だ。
どうせ死ぬのなら、さっさと死んで楽になろう……
マジモンの戦争屋さん、どうぞ楽に殺してくださいって、おまえら総員、右向け右で前にならって雁首並べて出てきたんだろう?
はっはっはっは!
残念だったな! みての通り、楽な殺しは絶対にして殺らねえ!!
地獄の底で何度も思い出してしまうような笑い声で、巨大なチェーンソーをふりかぶったまま、青い巨人がはっはっはと笑う。
ふりあげた巨大チェーンソーには、下半身をミンチにされたけど、まだ生きている権畜がぶら下がって、すさまじい苦痛に白目をむいて口をずっとパクパクとさせている。
恐ろしく野蛮な男の暴力的な大音声はまだ続く。
大宇宙のクソの素をしまった壺。中枢閣大本営がどこにあるかわかったら、おまえたちはもうおしまいだ!
必ず正解が存在する問題を丸暗記していい点とって、高い学歴つらつら書いた履歴書出して、私は頭が良いんですよと、これまた丸暗記の模範解答を面接でスラスラ言って、synthetic streamの権力畜生に任命された、自称頭のいい知的生命体様なんだろう?
だからそれくらいわかるよな?
高学歴と高偏差値がご自慢で、巨大な権力側に所属していることで態度のおデカい、高度に知性がおよろしいてめえらに、野蛮生命体である俺から提案がある。
これから言うことは大事なことだ。だから、公開通信チャンネルにわざわざ流してやってる俺の言葉をよーく聞け。そして、自分の頭でよーく考えろ。
俺達に道を開けろ。
どうだ? よくみえるだろう? 対艦押し込み用の破壊兵器に、生きたままドログチャにされて逝くご同僚の姿ってやつが。
道をあけなかったら、おまえらはこうなるんだ。
ふりかぶった巨大な対物チェーンソーの先で、虚空に円を描く青い鬼。
すでにミンチになった下半身の成れの果てが巨大チェーンソーからふりほどかれて、血肉と臓器とクソのミックスとなって僕様に横殴りに降り注ぐ。血と肉とクソのミックスジュースがくれるぬくもりを、愛国平隊アベンジャーズのカッコいい平和服を通して、これでもかと僕様は感じてしまう。
巨大対物チェーンソーにとらえられ、上半身だけになってもまだ死ねないでいる権畜の悲鳴が、通信機からガンガン響くなか、公開通信チャンネルの音声が話しを続ける。
どうだ? 俺は残酷だろう?
この残虐行為を生み出す暴力を、好きなだけ振るわれている現実をみたらわかるだろう?
もう、戦いの決着はついた。
大宇宙のクソの素を詰め込んだクソ怪しい壺、中枢閣大本営を守りきることは、絶対にできない。
いまここにいる生身の生命体が、どれだけよってたかっても、俺を止めることは絶対にできない。
不必要なまでに残虐な、血肉をクソとミックスにしてさしあげますよ大サービスを、無償提供で受けることになるだけだ。
銃砲で撃たれ、痛みを感じる間もなくサヨウナラ。そういう楽な死とはまったく違う、マジモンの地獄を、ゆっくりたっぷりじっくりと味わわせてやる。
そんな死に方は嫌だろう? 楽に死ねると思って突撃してきたんだろう?
おまえ達を待っていたリアルな戦争は、パンと撃たれてハイ終わり、そんな甘いもんじゃないぞ!
synthetic streamがいくら変態天国って言ってもよ、こんな激痛悶絶大サービスを喜んで受けれるほどのド変態はいないはずだよなぁぁ!?
だったら、道をあけて俺達を通せ。
俺達は、あと2つの防御区画を簡単に突破して、中枢閣大本営を制圧できる。
この戦争をおっぱじめた、積極的平和主義の頂点に立つ大宇宙のクソの素は、徹底的にこの戦争責任を追求されて、すみやかに殺処分される。
大宇宙のクソの素が討たれれば、大宇宙をたったひとつに束ねようとするクソ渦は停止するんだ。
我は森羅万象を司ると豪語するクソ野郎がいなくなれば、Space Synthesis Systemはもう存在しないと同義だ。
この戦争は終わる。
いま殺っているドログチャの戦争が終わるんだ。
もう、これ以上、無駄に死ぬことはない。これ以上、無駄な苦痛を味わう必要はない。
だから、俺達の道をあけろ。
おまえらが道を開ければ、こんな残虐行為をする意味が、なにひとつ俺にはない。
俺達がブッ殺すのは、大宇宙のクソの素への道をはばむ者だけだ。
どうだ? 俺はやさしいだろう?
だから、もう無意味な突撃をやめて、俺達の道を開けろ!
カピシ?
これだけ言っても、まだ俺達の道を開けないなら……
こうだ!
いまや最前線の最前列にいる僕様の眼の前で、うなりをあげる巨大対物チェーンソー!
上半身だけになってもまだ死ねないでいた権畜が、巨大なチェーンソーの回転する刃に捕らえられたまま、チェーンソーの根本にのみこまれて、真っ赤なジュースを吹き出しながら、肉片骨片となって撒き散らされる!
もしも降伏しないのなら、おまえはこうなる!
ふりあげられた巨大対物チェーンソーが、眼の前でみせつける特級残虐行為!
あまりに常軌を逸した特級残虐行為を、最前列の僕様はおナマで突きつけられて……
こんなに巨大でうなりをあげる対物チェーンソーに、絶対に勝てるわけがないのだと、どこまでも徹底的に僕様はわからされてしまう。
この先、どんなことをしても、セントラル・ドツボへの暴力挿入は必ず成される……
つまり、何もかもがお終いを意味する、セカンド・政権交代が起きることは、すでに確定事項なのだ……
積極的平和主義がたどり着いた最前線に立っていることが、もう何の意味もないことを、徹底的にわからされてしまった僕様は……




