破壊戦線異状あり
破壊戦線異状あり
ドログチャに破壊された死の回廊。備え付けの照明などない闇を切り裂く、イービル・トゥルース号の探照灯の青白い光。
火を吹く7.62mm六銃身収束回転式機関銃✕六機の異形重機関銃。
大量破壊された量産型装甲人形駆動兵器の残骸が、かしこに散乱するスクラップ置き場。
死の回廊をビシャビシャに濡らして、奈落の底にむかって降り注ぐのは、破壊された量産小型自動駆動兵器から流れ出すオイルでできた赤い雨。
イービル・トゥルース号からのびるメタル大蛇は、暴力の素を吐き出しまくる。
オーバードライヴしている殺戮の炉心は、オーバーキルを順調に続けている。
押し寄せる量産型装甲人形駆動兵器から、イービル・トゥルース号を守るために掃射を続ける、ビッグメタルボディ野郎の望遠カメラ・アイが、戦場の異変をとらえる。
「センキョウニ、イヘンアリッ!」
追加メタルボディに身を包み、重機動兵器と化したイクト・ハジメからの報告が通信機に入る。
「カジョウザイコガ、ツキタカ」
カメラアイにとらえた映像に、エイタは言った。
エイタの言葉は、異次元級の異様に巨大な移動要塞が搭載している、量産装甲人形駆動兵器が尽きたことを意味していた。
「あっはっはっはっは! 役立たずのクソキモ野郎がぶらぶらさせてる、汚ねぇフクロの中身がカラッケツ! アーク! あたしたちの勝ちだよっ! このまま殺って殺って殺りまくり、たどりついた明後日には、あたしとあんたでもっときもちーいことやりまくれるぞォォォッ!」
真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳をギラギラさせて、通常の三倍以上を通り越した大宇宙の脅威級に危険な女はそう言って、明後日にはふたりはベッドのうえでひとつになって、大勝利を盛大にお祝いすることが確定したのだと宣言する。
あたしとあんたの対機動兵器用の20mmヘヴィマシンガンと、7.62mm✕6✕6の異形重機関銃での殺りまくりが、ついに装甲人形駆動兵器の大量在庫をカラッケツにした!
ここから先は、中枢に向かって凸して殺って! 明後日にはひとつのベッドに一緒にダイヴ♡
今も迫りくる装甲人形駆動兵器をオーバードライヴ状態で処理し続ける、破壊の女王をやっているサディ様の中枢神経細胞に、一気に桃色の世界が広がりだす!
「殺りまくりで大興奮中なのはわかりますけど……。もう少し、節度を持って」
とAXEが冷静に言った。
「一緒にパフェを食う約束しか、俺はしていないんだがな……」
ブルーナイトメアの操縦席で、アークは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「オジョウサン……、ジュウデンマエノ……、マンジュウデンケイサンダ」
イクト・ハジメの冷たいメタルボイスが、野蛮生命体勢のラブコメ状態通信に割り込んでくる。
「どういうこと?」
ほっぺをリンゴみたいに赤くして、明後日のラブラブ桃色ナイトを夢想しつつ、ザコキャラを無双しているサディの表情が、厳しいものに戻る。
「アラテノ、ブタイダ……」
イクト・エイタの冷たいメタルボイスが、残酷な現実を告げる。
「ついに重機動兵器が出てきたのか?!」
アークの言葉に、サディの表情が厳しいものに変わる。
「シンセティック・ストリームの重機動兵器って言ったって、どうせ、ピンピンハネハネ中身ヌキヌキですっからかん! みてくれだけでフニャンフニャンのハリボテだろうが! ガチでバチバチにハードなブルーナイトメアとキャンディ・アップルレッドの前じゃあ、カスみたいなもんだよッ!」
牙みたいに尖った犬歯をむく、ブッ殺すほどに着飾った破壊の女王サディ様。
「イヤ……、ソレガ……」
カメラ・アイにとらえた映像に、困惑しているメタル野郎、イクト・ハジメのメタルボイスが動揺している。
「アレハ……」
イクト・エイタのメタルボイスも、メタル野郎とは思えない冷静ならざる雰囲気を感じさせる。
「いったいなんだってのさ!?」
とにかく今は、目の前に押し寄せる装甲人形駆動兵器を処理し続けているサディは、新手の部隊にカメラを向けられない。
「前線で殺りまくり中のバカップルに、今現在の状況判断を報告するよ……」
野蛮生命体勢の通信に、アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋から、ミーマ・センクターお姉様のお声が!
「装甲人形駆動兵器の無限湧きが終了したよ……。でも、それは、向こうの戦力が枯渇したって意味じゃない……」
ミーマ・センクターからの通信に、アークの片眉がぐいっとあがる。
「ああ? これだけぶっ壊しまくって、阿呆駄郎の戦力が枯渇したわけじゃないだとぉ?」
「はああああ?! で? だから? 重機動兵器だったら、数で押す勝負はもうできないんだ! こっちの勝ちって決まってんだよ!」
牙みたいに尖った犬歯をむいて、サディが吠える。
「急襲突撃中枢破壊死隊(きゅうしゅうとつげきちゅうすうはかいしたい)が相手にしている、装甲人形駆動兵器の背後から迫っているのは、重機動兵器なんかじゃない……」
ミーマ・センクターが告げた内容は、驚愕驚異の状況だった!




