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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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モッキンバード宙域戦

モッキンバード宙域戦




 AXEが、ミーマが、ネガが、タッヤが、そしてサディが、艦長席に鎮座するこの船の最高責任者、パンダ船長に注目する。

 synthetic streamに公然と反抗する海賊放送船イービル・トゥルース号の船長は、synthetic stream主力特大宇宙戦艦からの艦砲射撃を受けても微動だにすることもなく、その冷静さには微塵の揺らぎもない。

 全乗組員の視線と期待を一心に背負った、パンダ船長のご英断は!?

「ぱふぉっ!」

 パンダ船長が、いつもとまったくかわらない声色で言ったのは、その一言だけだった。

「……アーク……船長はなんて?」

 サディが目を細めてアークをみつめる。

「……とにかくズラかれ。 船長はそう言った」

 アークが無表情にぶ厚い硬化テクタイト製窓の先をみつめながら、パンダ船長のご英断を翻訳する。

「まじかぁぁぁぁぁっ!」

 サディは絶叫し頭を抱える。

「イービル・トゥルース号、全力逃走! 了解ッ!」

 120%の元気をもって、ネガの返答が艦橋に響く。

「だと思った」

 というサディとネガ以外の乗組員の声がみごとにハモる。

「というわけで、機関長、コタヌーン殿。補助動力で対抗障壁領域を維持、砲撃によって上昇した船体温度を冷却しつつ、本船は全力でモッキンバード宙域から離脱する。銀河の果てまでブッ飛ぶぞ!!」

 アークがヘッドセットに向かって、機関室へとパンダ船長のご意思を伝達。

「あいよぉ。銀河に速度制限はありませんから、存分にブッ飛ばしましょうや」

 やはりどこか気の抜けたコタヌーンの声が艦橋に響き渡る。



「銀河臣民の身を粉にして焼き、甘い汁をたっぷりとかけたパンケーキは実にうまい」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーはガース・ヒーデの華美な装飾の艦長席で、あまりにも高価が過ぎる壺を視線で愛でながら、甘い汁をすするがごとく冥PULめいぷるシロップに沈むパンケーキを食しながら言った。

「これも全て、大自由神民主主義銀河神民統一教会党が、世を平定する権力の頂点であるからこそ!」

 人の名を持たないナンバーズ、スガガスキー4562が直立不動の姿勢でオトスに同調する。

「大自由神民主主義銀河神民統一教会党バンザイ! Space synthesis system森羅万象絶対無謬総裁総理総合枢軸統一元帥総統陛下バンザイ!」

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!」

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!」 

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!」

 純白と鮮烈な赤の二色で彩られ、ドブラックな壺鉤十字が並ぶ壮麗華美な戦闘指揮所に、同志アベガスキー、スガガスキー、キシダイスキー、人の名を持たぬ権畜、ナンバーズ達のときの声が響く。

「機関最大。最大行使速度へ達しつつ、大自由神民主主義銀河神民統一砲への平和力注入を継続。壺への平和力充填率80%」

 System Schutzstaffel SSS主力森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー級弐番艦、ガース・ヒーデ艦首の壺を模したエンブレムに刻まれる5つの輪がひとつずつ色を帯びていく。すべて白かった輪が、青、黄、黒、緑、赤へと染まり、大自由神民主主義銀河神民統一砲へのエネルギー充填率が100%に達したことを示す。

「壺は今、平和力によって満たされた。それでは諸君。あらゆる思想と生命を積極的権力行使をもって平和統一する。積極的平和力行使の祭典を開始しよう!」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーが、ナイフとフォークから持ち替えたジャポン刀を振りかざし、メインモニターに映る逃走する所属不明の宇宙戦艦にその切っ先を向ける。

「大自由神民主主義銀河神民統一教会党バンザイ! Space synthesis system森羅万象絶対無謬総裁総理総合枢軸統一元帥総統陛下バンザイ!」

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!」

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!!」

「ジーク・ダーイ・ジミンッ!!!」

 同志アベガスキー、スガガスキー、キシダイスキー、ナンバリングされし権畜達のときの声。

「我らは圧倒的多数に白紙投票白紙委任されし、過半数の絶対正義ッ!」

アベンシゾー級弐番艦ガース・ヒーデの純白と鮮烈な赤の二色に彩られ、、ドブラックな壺鉤十字が並ぶ壮麗華美な戦闘指揮所に、シンセティック・ストリーム中枢閣を形成する大自由神民主主義銀河神民統一教会党への賛美礼賛の大合唱が響きわたるッ!

「大自由神民主主義銀河神民統一砲、第三次斉射! 積極的平和力行使による思想平和統一の義を述べよッ!」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラーの声に、純白に金モールで華美な装飾の科学戦隊めいた軍服に身を包んだイチ権畜、同志アベガスキー2214が立ち上がる!

 かつーん! と踵を打ち鳴らして合わせ、まるで定規を突っ込んだように背筋はまっすぐ! 右手を選手宣誓のようにドブラックな壺鉤十字へとまっすぐタカくタカくのばし、声高くジーク・ダーイ・ジミンシップを宣誓をするために朗々と発言を開始する。

「先制ッ! 我々は森羅万象絶対無謬総合総理枢軸統一元帥総統陛下の絶対無謬の判断と、現実すらそのお気持ちをおしはかり隷属させる神域へと達しましまするそのお言葉にのっとり、正々堂々と積極的権力と積極的平和力を行使し、あらゆる思想と生命を平和統一し宇宙をひとつの家族がごとく家庭連合させ、総統陛下を家父長とする絶対の安全安心な統制された平和をなすことを、ここに先制いたしますッ!」

「大宇宙のデブリと消えよッ! 大自由神民主主義銀河神民統一砲ッ!! 発射ァァァァッ!!!」

 艦首に大自由・神民主主義・自助・自己責任・信狂の自由を意味し象徴する、五輪を描いた壺の紋章を掲げる森羅万象宇宙戦艦、アベンシゾー級弐番艦ガース・ヒーデ。銀河を平定する超巨大な宇宙戦艦に搭載された、大自由神民主主義銀河神民統一砲四連装八基三十二門が一斉にその力を解き放ツ!

 Space synthesis system中枢閣によって、全宇宙絶対無敵最強無比の圧倒的抑止力を持つ平和力と閣議決定された、大自由神民主主義銀河神民統一砲四連装八基三十二門から放たれた32の光弾が、全力で宇宙を逃げるイービル・トゥルース号へと、秒速29万9792銀河標準キロメートルの速度で宇宙空間を駆け抜け、平和力の牙をむいて襲いかかる!

 

 

 ズッガーン! どっがーーん!

 対抗障壁によって相殺される、極大威力のエネルギーが生み出す余剰電磁波が船体に干渉し発生する、遠い雷鳴のような轟音に艦橋が揺れる。 

「第三斉射、対抗障壁領域後方部に直撃」

 ミーマが冷静に状況報告。

「対抗障壁領域健在。船体温度わずかに上昇。補助動力冷却継続、問題ありません」

 タッヤが冷静に計器を読む。

「SSS宇宙戦艦、だいぶ遅れ気味ですが、本船に追従してきます。しつこいですね」

 AXEがレーダーに映るSSS宇宙戦艦の光点をみつめて、つまらなそうに言う。

「クソが」

 ネガは毒づき、イービル・トゥルース号を全速力でトンズラさせる。

「ねえ! アーク! またまた当ててきたよ! ねえ、撃ち返していいよねッ!? これ、撃ち返していいやつだよねッ!?」

 サディが目を見開き歯ぎしりして、リボルバーカノンを模した主砲操作桿の発射トリガーにがっつり指をかける。

「いや、サディ。ここはまだモッキンバード星の領宙だ」

 イービル・トゥルース号が目指す逃走先、モッキンバード領宙外の、まだ誰のものでもない宇宙をみつめながら、アークが言う。

「じゃあ、まだまだ撃たれるがままだって言うのかいッ!!」

 サディが再び、深紅と漆黒に彩られる着物の袖をひるがえして吠える。

「サディ、俺達は45口径48銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門をたずさえて、首都上空に急襲降下するマジモンの戦争屋だ。その点については、システム・シュッツシュタッフェルSSSと大差ねえ。だがな、俺達の戦争に対する考え方はこうだ。俺達は消極的戦争主義者なのさ」

まだ誰のものでもない宇宙を目指し、硬化テクタイト製窓の先を見つめるアークは、サディに対してそう言った。

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