アイアンブルーとガンメタルグレイ
アイアンブルーとガンメタルグレイ
逃げていくぷりんぷりんなケツをアークが追いかけ、ようやくたどり着いた格納庫で、ハードでヘヴィなメタルマシンにもぐりこんでいた頃……
アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋では……
「超音波アクティブソナー。レーザー走査。電磁気力測定。振動検知。その他もろもろを含めて、カルト・スターの内部構造及び、保有する戦力を精査中。エニグマ・メインフレームのオーバークロックよる解析は順調に進んでいますが、まだまだ時間がかかります」
イービル・トゥルース号搭載の様々なセンサーを総動員させて、内部構造の把握にAXEがつとめている。
現時点まで解析中の内容をまとめたAXEからのデータと、現在の戦況が情報表示盤に流れるように表示されていく。ミーマ・センクターお姉様の金と銀の瞳が、あらゆるデートを中枢神経細胞に取り込んで、状況判断を開始する。
本船が今おかれている状況を整理するよぉ!
巨大航宙ホテル船に隠れての接近で、異次元異様要塞カルトスターの全力一斉射を見事に回避!
超至近距離からの実体弾攻撃で、表層に存在するシールド・ジェネレーターを破壊!
異次元異様要塞カルト・スターの大事な防御膜にできた脆弱面に、一点集中全力ガシマンイケの形で主砲斉射をガンガンにぶち込んだ!
その結果開いた、クっソでかいユルガバ大穴のおナカに、太くて長くてマジでヤヴァイ宇宙戦艦ごと突っ込んだ!
本船がいまいるのは、主砲をガンガンぶっこんでグバァッと開けた、破滅のユルガバ大穴のど真ん中!
カルトスターの主砲を完全無力化する、絶対安地なゲームバランス崩壊ゾーンにたどり着いたけど……
こちらも主砲をブッ放したら、要塞核付近に搭載されていると思われるメインリアクターをブチ抜いて、一緒にドッカン!
ふたりで一緒にイッテしまう!
ラッブラブな状況だったら最高だけど、synthetic streamと同じベッドに入るなんて、震えあがっちまうキモ状況だからねえ!
ここから先は、synthetic streamを先に逝かすことだけに全力集中!
ガシガシでガンガンに殺りまくる気がまんまん!
マジでヤッヴァくてハードな白兵戦が始まるよ!
要塞の核に存在するはずの、synthetic streamの中枢に押し込んで、カルト・システムの総裁様をブッ殺す!
これからはじまるマジモンのカチコミにブッ込む、機動兵器を確認するよぉ!
ブルーナイトメア、キャンディ・アップルレッド、GTZ、A2 (AXE-AXE)、カラミティ・ヒア、BTTB (Back to the Back)、パワード・ヌーンが二機! そして、ロボット乗組員をハードでヘヴィな機動兵器に変える、追加ボディが4体!
総勢12体のヘヴィメタルマシーンがあるけれど……
実質前線に出て戦えるのは、実質六機。
豊富な戦争体験と実績を持つパイロットが、たったふたりしかこの船にはいないからねぇ……
野蛮生命体勢がドライヴさせる、ブルーナイトメアとキャンディ・アップルレッド。そして、メタル野郎勢のイクト・ハジメにエイタとイゴウにツーツーが、実質的に出撃できる最大戦力。
だけどね。
たった六機の機動兵器と言っても、この大宇宙でふたつとして同じ物が存在しない、イカれきったスペシャルチューンのオリジナルマシーンばかりだよ!
しかもパイロットは、大宇宙の驚異級にバイオレンス・タイプな女のコと、いかにもオールドボーイ・タイプな暴力の権化みたいな残酷で残虐な暴虐あふれる暴威。ふたりの背に続くのは、ギンギラメタルボディの野郎ども!
対する相手は……
遥か彼方の昔に大ヒットした映画、星星戦争に出てくる最終兵器死の星みたいに異次元級に異様な巨大要塞。
小惑星級にクソデカイ、ドクッソ怪しい壺の内部構造はどうなっているのか?
いったいどれだけの白兵戦力を抱えているのか? その詳細は現在不明。
以上のことから、勝算はあるものともないものとも状況判断不能なんだよ!
とは言ってもさ!
我は森羅万象を司ると豪語する大宇宙のクソの素は、ただのボンクラで戦い方なんかわかりゃしない!
どうせ、自分で何も決められなくて、お答えを差し控えて部下に忖度させてるだけさ!
こっちにしてみりゃお相手は、権力ばっかで前線に出たこともない、フニャンフニャンのザコ珍砲どもだよ!
だからこのラスト・ドンパチは、勝てるって思って間違いない!
生きて帰ってもう一度、愛しいお相手とベッドにはいってファックしたけりゃ! もう殺るしかないよねぇ!
ボンキュッボン! の素敵なラインを描く身長2銀河標準メートルの褐色ボディに、ガッチバチのベルトとバックルだらけの軍隊仕様のバトルスーツに身を包んだ黒髪ロングのセンクターお姉様が、金色と銀色の瞳をギッラギラに光らせ吠えた!
「ジギョウケイカクショヲ、ダシテオケッ!」
ミーマ・センクターお姉様に続いてハードに吠えたのは、イクト・ジュウゾウ。
「地獄に続く一本道みたいな場所じゃあ、攻めてくるのは前と後ろしかないからなぁ。ケツから機関室が攻められちゃうかもしれないなぁ。となるとこちらにも、応援が欲しいなぁ」
と言ったのは、機関室につめているコタヌーン。
「増援要請了解です。ところで、さきほどから奥様は?」
AXEは情報を精査しつつ問う。
「それがさぁ、シミュレーションに夢中で、全然相手してくれないんだよなぁ」
AXEの冷静な表情に、一瞬疑問の色が浮かぶ。
「この最終局面で、オクタヌーン機関副長が、夢中でシミュレーションをしている?」
とミーマ・センクターお姉様が考え込む。
「この最終局面でやることではないのでは?」
AXEの冷静な問いに、タッヤが反応。
「この最終局面に、明日か明後日にでも解けばいいシュミレーションに、オクタヌーン機関副長がかじりつくとは思えません。理由を話している余裕のない、重大な問題があるのかもしれません。早急に機関室に応援を出しましょう」
タッヤが臨時暫定指揮官を示す猫耳をピクピクさせて素早く判断。
「俺が殺りにいってもいいんだぜ?」
イクト・イチバチのカメラ・アイに、危険な殺意をはらんだ炎が灯る。
「イチバチさん。ロボット三原則に縛られず、知的生命体をバンバン撃ってBANできるあなたしか、この船の武装はブッ放せないんですよ」
猫耳揺らすタッヤの言葉に、イクト・イチバチはうなづき、戦闘隊長席であるサディ席に視線をうつす。
「ジュウゾウさん。機関室にメタル野郎の応援をたのみます」
「チョウカキンムテアテヲ、ダシヤガレッ!」
タッヤに応答したイクト・ジュウゾウが、船体管制盤を素早く叩く。
格納庫でオーバードライヴ状態で稼働しているジゴロクに、イクト・イゴウとツーツーに追加ボディを装着して、船尾機関室へ応援にむかえと指示。
そして、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋を、メタルボディのキラーマシンが歩く冷たい音が、循環空気を震わせる。
大宇宙の科学技術が生み出した叡智を集めた密着バトルスーツ姿の女の子の真逆に位置する、マッパ剥き出しメタルボディでイクト・イチバチが戦闘隊長席に歩いていく。
「人の類は皆殺しの時間ってやつさ」
ガチでバチバチに冷たいメタル製の殺戮機械、イクト・イチバチが再びサディの席につく。
銀河イチ逃げ足の速い操縦士の横に、空席ひとつはさんで座るメタルマシンから、冷たくハードでヘヴィな暴力の匂いがたちのぼる。
「く、く、くそがぁぁ……」
グバァッと開いたユルガバ大穴の深淵に船を進めつつ、イービル・トゥルース号を繊細にあやつるネガは静かに毒づいた。




