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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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モッキンバードタウンの上空で

モッキンバードタウンの上空で



「すべては暴力のはずなのに、どうしてこんなにも綺麗なの?」

 モッキンバードツリーの頂上から、夜空を見つめる彼女の口から思わず言葉が漏れる。

 眼下に広がるにぎやかな夜景と、空中に爆裂するあまたの光が描く花の中を宇宙にむかって上昇していく、禍々しいドクロが艦首に映える巨大な宇宙戦艦。その傍若無人無法の限りを尽くす行いのすべてまでもをひっくるめて、この夜空に輝く光がはじけて満ちる光景は、ため息が出るほど意味不明なのに、心が震えるくらい美しい。

 ありとあらゆる常識をぶっちぎって飛ぶ、今どき漫画の中でもみかけない、悪い冗談みたいなレトロなデザインの宇宙戦艦。それは嘘みたいな本当で……



 英雄にしてやろう?

 それは一体どいう言う意味だ? とツゲルは疑念にかられながら、残存平和力零の支援迎撃機の操縦席から、首都上空に炸裂するマ(以下略)艦の暴虐のかぎりを無念にみつめていた。

 その時、凄まじい閃光が広大な海から夜空に走り、ツゲルと支援迎撃機を一瞬で飲み込み消滅させ、モッキンバードタウンの夜空は真昼よりも明るい真っ白い光へと満たされる。

 


 艦橋前面、ブ厚い硬化テクタイト製窓が閃光に満たされる。

 電磁的衝撃が船体に干渉して発生する、遠い雷鳴のような轟音が艦橋全体を震わせる。閃光のもたらす熱が、アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋の温度を急速に上昇させる!

「SS艦隊ッ! 艦砲射撃ッ!」

 AXEの絶叫が艦橋全体に響く!

 レーダー盤に複数走る、極大威力のエネルギー兵器が生み出す電磁的衝撃波(electromagnetic shock wave)の光跡!

「艦橋直上を一斉射撃が通過!! 被弾なし! 被弾なし! 船体への被弾なし!」

 ミーマが船への着弾の有無を確認。

「ですが、極大威力のビーム砲複数による一斉射が直近直上を通過したため、強力な電磁的衝撃場(electromagnetic shock field)が本船上空に発生中! 航行に影響ありッ! 船首が沈み船体傾斜しています!」

 タッヤが計器類を読み、イービル・トゥルース号の船体が揺らいでいることを告げる。

「このままだと、モッキンバードツリーにぶつかっちゃう!」

 サディの目の前には、極大威力のビーム砲によってプラズマ化した大気の生み出す七色の光の中に、モッキンバードツリーの明かりが迫る。

「クソがァァァッ!!」

 傾斜した船体を全力で立て直して衝突から逃走するために、ネガが毒づきスロットルを床まで踏みしめ、操縦桿を引き上げる!

「コタヌーン! 船のケツを宇宙にむかって蹴っ飛ばす! レッドゾーンをブッちぎってエンジン回せ!」

 アークがヘッドセットに叫ぶ!

「あたぼうよッ!」

 機関室ではコタヌーンとオクタヌーンが、大気圏内ではありえないオーバードライヴ領域まで、メインエンジンをぶん回す!

「船体傾斜水平まで回復! 反重力装置出力オーバードライヴ!」

 タッヤが計器を読みあげる。

「近く第二斉射を予想します!」

 ミーマが斉射からの経過時間を計測して予測。

「synthetic streamは当てる気なんてねえよ! このまま宇宙まであげちまえ!」

 アークが叫び、イービル・トゥルース号はエニグマエンジンの業火を燃え上がらせ、禍々しい船首のドクロを、再び宇宙へと向ける。



 凄まじい閃光が走り、モッキンバードツリーがゆっくりと揺れた。窓辺にもたれていた彼氏と彼女は、一緒に窓の外に落ちてしまうんじゃないかと、互いの身体をしっかりと抱きしめあう。

 窓の外に存在するのは、実在するのが信じられない光景だった。

 夜空を幾筋もの光線が走り、消えゆく光跡から流れ落ちるオーロラが地上へとのびて揺れる。様々な色と光が交差する世界を、レトロなデザインに禍々しいドクロを艦首に掲げた巨大な宇宙戦艦が、ロケットエンジンの業火が生み出す轟音をあげながら夜の果てへと飛んでいく。

 それはあまりにも常軌を逸した美しさで、なのにすべてがあまりにも超越的な暴力と暴虐と暴挙の入り混じった、あらがうことのできない破壊の力を感じさせる、世界の終わりのような壮絶な光景だった。

 これがふたりが出会い、ともに生きている世界。これが世界の本当の姿なの?

 彼氏と彼女は、モッキンバードツリーの頂上特別室で、ただ抱きしめ合うことしかできない。

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